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2005年01月03日
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カテゴリ:今日にちなむ
中里介山『日本武術神妙記』
ある年正月三日の夜、肥後熊本細川家花畑の邸で、謡初があって、人々が集まったが、武蔵もやって来た、規式はまだ始まらない前に、大組頭の志水伯耆という人が、上座から武蔵を見かけて言葉をかけ、
「貴殿が先年佐々木と勝負ありし時、小次郎が先きに貴方を打ったのだとの風説がござるが、その実否如何でござる」
 とたずねた。武蔵は何とも返答をせず、席に立てた燭台を取り伯耆の膝下ちかく、つかつかと進み坐り直して、
「我等幼少の時、蓮根という腫物が出来、その痕がある為に月代がなりがたく、今に総髪にてござるが、小次郎と勝負の時は、彼は真剣、我は木刀でござった、真剣で先に打たれたならば、我等が額に疵痕があるでござろう、能く能く御覧下され」
 と、左の手で燭台を取り、右の手にて髪を掻き分けて我が頭を伯者の顔に突き当てた処が、伯耆後ろへ反って、
「いやく一向に疵は見え申さぬよ」
 という、武蔵猶もおし寄り、
「篤と御覧候え」
 という、伯耆、
「いかにも篤と見届け候」
 といったので初めて立て燭台を直し、元の座につき、髪掻き撫でて自若たるものであったが、その時には一座の諸士いずれも手に汗を握って、鼻息するものもなかった。これ伯耆一生の麁忽なりと、その頃の評判であったそうな。





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最終更新日  2005年02月17日 20時51分40秒
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