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カテゴリ:明治世相百話(リンクのない新着テキスト)
日本一の愛猫家物語
子猫の嫁入り先が四十六軒? 明治の文士で廓《くるわ》通の片山友彦君、五丁庵通里と称して通人肌の好人物であったが、見かけによらぬ奇行家、かつて東海道の名物の袋や商標を集めて貼込帳を作った。五十三次たいていそろったが、保土ヶ谷だけが、名物もなにもないのでわざわざ用もないに保土ヶ谷へ出かけ、一晩泊って宿屋の受取を持ち帰り「これでようやく大そろいだ」と涼しい顔。 一家そろって大の猫好き、おばあさん猫を始め、娘猫、孫猫と母子三代がみな丈夫でお産をする。子猫はたいてい所望者がついて片づくが、それでも自宅には常に十何匹が鼻づらをそろえて玄関の次の間にずらり。見知らぬ客がうっかり入ると、大小一度に背中を丸くしてフーッと来る。さながら怪猫屋敷、有馬様でもこれほどではあるまいと気の弱い客はぞっとする。 さすがの猫好きも少々気の毒になって、今度は二階に追い上げる。子猫でも好い気になって、天井の鼠公以上に荒れまわり、襖を破るやら掛物を引き裂くやら大変な騒ぎ、それでも主人公平気で玉よ駒よと、本当の猫撫で声、さすがは日本一の愛猫家と友人どももあきれ返った。見よ、茶の間の障子の腰板から五寸ばかり上の方が一直線に泥の痕、聞けば親猫が外からお帰りの節、開けてくれとたたくのだとは、いよいよもって無気味の至り。 十数年のながの年月、同家で生れた子猫の数はおびただしく、随って嫁入り先も少なからず、おせっかいの友人が、嫁入り先を調べたら驚くなかれ四十六軒。一つそのもらい主を集めて大懇親会を開いたらどうだというと、一人が「惜しいことをした、そんなにあったら三味線屋へ売っても大したもの」に主人公苦い顔。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年10月08日 09時42分58秒
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