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2006年02月05日
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食物の味
 詩人の蒲原有明《かんぱらありあけ》氏は、どんな好《よ》い景色を見ても、そこで何か喰《た》べねば印象が薄いといつて、異《かは》つた土地へ往《ゆ》く度《たんび》に、土地《ところ》の名物をぱくづきながら景色を見る事にしてゐる。
 「僕は景色を見るぱかりでは満足出来ない、その上に気色を喰べるんでなくつちや……」
とは氏が例《いつ》もよく言ふ事だ。
 野口|米次郎《よねじらう》氏は「墓《かへる》を食ベるのは、その唄をも食べるといふ事だ。七面烏を頬張るのは、その夢をも頬張るといふ事だ。」といつて、よく唄やら夢やらを頬張つてゐる。
 つまりこの人達は物を食べる時は、想像をも一緒に嚥《の》み下《くだ》してゐるのだ。
 西川一草亭氏はこれとは反対《あべこべ》に、物を食べる時には、その値段から切り離して持前の味のみを味はひ度《た》いと言つてゐる。甘藷《さつまいも》は廉《やす》いからとか、七面烏の肉は高価《たか》いからとかいふ、その値段の観念に煩《わづら》はされないで、味自身を味はひ度いといふのだ。
 女房と朝飯《あさめし》とー双方《どちら》が人世《じんせい》に関係する所が大きいだらうと疑つた者がある。
 「なに朝飯さへ甘《うま》く食べさせて呉れるなら、女房のする事は大抵見遁《たいていみのが》してやるさ。」
と言つたものがある。






最終更新日  2006年03月03日 10時25分25秒
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