AMOKの庵

2009/03/12(木)13:08

【コラム】医師の絶対数が少ないわけではない

Varia(265)

昨日の話で准医師というのが話題になっていた。 医師不足を補うのに准医師を設ければよいという話です。 しかし、実際は医師が不足しているのではなくて、僻地や地方、および産婦人科医、小児科医、救急医が不足しているというのが実情です。 この問題に対して、医師を増やそうとか、准医師を設けようという意見は 医師を増やせば、その一部がそういう部分を埋めるはずだというかなり乱暴な根拠でいっているわけですが、今の研修制度では無理でしょう。歯科みたいに都会で夜の12時まで開いているみたいな開業医が増えるだけです。 問題はいくつかあります。 そういう誰も行きたがらないポジションが今まで埋まっていたのは医局制度のおかげです。 各人の適性に合わせて半場強引に人事を割り振っていくことでそういう部分を埋めていたのです。例えば、留学したいなら一度地方に行けとか、楽だけどつまらないところには少しできない子を送るとか、大学院に行きたいなら一度地方へ行けとか。 また、産科などきつい科に関しては、6年生の時に勧誘をガンガンします。入局前の学生は教授の次に偉いといった扱いですからそれは気持ちの良いものです。しかし、一度入ったら今度は一番下っ端としてこき使うのです。でも、これって部活と一緒です。こき使うといっても愛ある指導です。その間、見よう見まねで先輩の技術や知識を身につけ、さらに学会などで地域の同じ科のネットワークに組み込まれ、次第次第にヒトとヒトのつながりが産婦人科や小児科であっても、ヒトをつなぎ止めていました。 厚労省はこの医局の人事権を官僚の管理下に置きたくて新しい研修制度を始めたわけですが、入局するかどうか分からない研修医はしょせんお客様であり、本当に大事な仕事やリスクは任せません。つまり、来月からテニス部に入るやつが1ヶ月サッカー部に入ってきたところで丁寧に教えるわけがありませんし、テニス部に入ろうと思っていたけど、ちょっと体験入部してみたら練習がきつかったのでやめるとか、ゴルフ部に体験入部してみたら面白いし楽なのでそっちに気が変わるといったことが起こり、まさに市場原理で専門分野が選ばれていくわけです。結果的にきついところ、リスクの高い科は避けられていきます。先輩との切るに切れないコネクションもありませんから去るのは簡単です。 診療報酬を上げればよいという話もありますが、先に書いたように医師は別にお金のために働いているわけでないので少し上がった程度ではほとんど効果ないでしょう。かなり大幅にあげれば、私立のヒトが沢山参入するとは思いますが、総医療費はさらにあがるわけで非現実的です。 よって、研修期間を2年から1年に変えても無駄であり、むしろ、最初の2年は医局に属するようにして、その後1,2年他科で研修するのを開業の条件とした方が効率が良くなると思います。ただそれだと医局制度はやはり残ってしまいます。ちなみに東大の内科は昔から卒後3年目で入局という形式でした。変な研修制度ができたのはこれがモデルですかね? あとは産業医科大のように、産科や救急医にしかなれない特設の医科大を作ったり(今ある単科大学をそういう大学に変えてしまえばよいわけです。但し、産科や救急だけを習うのではなくて授業は普通の医学部と同じです。ただ産科や救急医にならなかった場合、私立と同様数千万払う必要があるという産業医科大と同じ仕組み)、地方や僻地での勤務歴を開業の条件とするといったことが少ない予算でできることでしょう。 もう一つ案がありますが、上記の医師不足を改善する方法ではないので次に書きます。

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