【コラム】金儲けする医者、アメリカの医者
ここで医療の問題で盛り上がっているが、つらつらと思い立ったことを書いていく。昨日の話の続きではないが、日本の優秀な医師は金のために仕事をしているわけではない。そのため、収入的にはおおざっぱに言って下記のような感じ。売れている形成外科医>売れている開業医>外科系の一部の教授>売れていない開業医>勤務医(大学含む)医師の実力的には下記のような感じだろう。大学の講師教授、基幹病院の部長>大学勤務の中堅、一般病院の部長、開業医>研修医同じカテゴリーではないので少しわかりにくいが、実力のある医師が公立病院という一番少ない収入のカテゴリーで働いているのが現状である。これは高度医療には高額な機器や設備、人員が必要であり、個人の開業でそれらを揃えるのは不可能であること。医学的科学的興味を満たすためにも、大学に勤務していた方がそういう患者に会える確率が遙かに高いからである。また、研究ができるのが主に大学だけというのもある。この実力のあるヒトが低収入、そうでない開業医の方が高収入という逆転現象は、経済学的にはアンバランスに見えるかもしれないが、中のヒトは意外と心地よいと感じている。売れている開業医は大抵私立の出身とかであり、旧七帝出身で売れているヒトは本当に実力があって人柄にも魅力がある一部のヒトであるが、そんなヒトは稀である。私立のヒトは大学を卒業するのに初期投資として5000-6000万使っていますから、当然それらを回収しないといけない。逆に言うと、回収するすべが絶対必要。そのため人当たりの良い医療を実践するインセンティブが働きますし、収入の逆ヒエラルキーは必須のシステムです。一方、国立のヒトは大学に残るためには研究することが必要です。もし、高度医療を実践する医師の方が高収入だったら、研究ではなく、収入目当てで大学に残ろうとする医師が増えて、医療は下手だが研究熱心な医師が大学から追い出されることになってしまいます。実は学位を持った研究熱心な医師の方が将来的には実力が上になるのですが、若い頃は臨床経験が少ないですからひたすら臨床ばかりしてきた医師には負けてしまうのです。これが少し前のアメリカの状態。一般開業医はどちらかというドロップアウト組でかなり早い段階で開業します。実力も低めで、収入も1000万を少し越えるくらいと低めです。一方、大学でばりばり臨床をしているヒトは保険請求額が高額な分収入も多いです。結果、医師が臨床指向になりすぎて研究を全くしなくなったためアメリカが取った方策は、医学部の学生の時に学位を同時に取らせるM.D, Ph.Dの制度です。これは医学部2,3年の時に一度基礎に研究に行かせます。そこで4年ほどかけて大学院を卒業し学位を取ります。その後、3,4年かけて医学部を卒業するというわけです。しかも、学費どころか、給与も出る制度となっています。結果的に卒業して臨床研修を積むときに研究で培った知識が最初から役立ちますから医師としても、M.D.オンリーのヒトにも負けないという寸法です。(つづく)