家をいつも通りに出てきた彼
スーツを着て、いつものかばんも持って
その姿が好きだけれど・・・
心が痛む
今日は○○でお仕事ですかぁ?
そうや~
おうちをそうやって出てきて・・・
だって、一緒にいたかったから
でも・・・よくないよ・・・
僕がそうしたかった
涙が・・・
見せまいと思って、彼の首に手を回して抱きついた
あのね・・・
いつもいい匂いがするの
ん?
シャツもちゃんとアイロンがかかってて・・・
俺だけ見てればいい
もう涙は止まらなかった
なのに、嘘をついておうちを出てきてくれる
それが・・・つらいの・・・
俺だけ見てればいい
他の物は見なくていい
何度も何度も首を横に振って
泣きじゃくる私を
彼はつかまえて離さなかった
涙が止まらない
好きで好きで、とっても大切で・・・
だから、心が苦しい
「つらい」と言ってしまった自分の言葉を
もうひとりの私が聞いていた
25年も前の気持ちを一瞬で思い出した
同じことをしようとしていると・・・
もう・・・失くすのはいやだし
泣きたくない
自分からこの手を離してしまっては
また・・・
あの20年をたどることになる
そう思ったら
もっともっと涙が出て
止まらなくて・・・
アイロンがきちっとかかった・・・
彼の「シャツ」をぬらしてしまった・・・