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カテゴリ:掌編
コイン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あの子はボクを見て、いつも意気地なしって言うんだ。 でも、ボクらだけの時はカッコイイって言ってくれる。 時々だけどね。 今日は、そんな日だった。 「なぁ、そこどけよ」 隣のクラスの、結構ガラが悪い人だ。 「いやだ」 「ハァ?ケンカうってんの?お前」 「お前こそ、ボクが来る前に何してたんだよ」 キッと睨みつける。 「見てわかんなかった?お前の後ろにいる子を説教してたんだよ」 「何言ってんの!アンタが悪いんじゃないっ!!」 ボクの後ろにいるのは、例のあの子。実はボクの幼馴染みだったりする。 「アンタがぶつかって来たんでしょっ!?」 「そっちがどかないから駄目なんだろ。あぁ?」 放課後の、ちょっと暗くなってきた廊下。二人の声が五月蝿く響く。 「アンタねぇっ!!」 そんなさなえちゃんを制し、 「で、殴ったんだ」 ボクが話に割り込む。 「説教しただけだろ?」 さなえちゃんの頬は赤くなっていて、目には涙を溜めている。 けど、涙を流してはいなかった。 「やめろよ」 「どうして?楽しいのに」 「かぶらきが痛がってるだろ!?」 かぶらきとは、さなえちゃんの苗字だ。 学校ではいつも苗字で呼ぶことにしていた。 「やめろってば」 「ほら、足震えてるぞ?どけば何にもしないからさ、お前には」 「・・・いやだ」 「そこ、どけよ」 「いやだ」 「どけ」 「いやだっ!」 「どけっつってんだろっ!!」 ボクの左頬に激痛がはしった。 無理やり右に向かされ、そのままの勢いで廊下の壁にぶつかる。 「ゆうとっ」 さなえちゃんの声が響いた。 頭がガンガンする。 「バカだろ、こいつ。じゃ、続きしよっか」 「・・・謝りなさいよ」 「ハァ?だから何言ってんだよ。悪いのはお前だろ?」 「謝りなさいっ!!」 その声が耳にはっきりと届く。 「黙れっ!!」 それと同時に右拳を振り上げ、 さなえちゃんに向かって勢いよく振り下ろされた。 ボクは咄嗟にその腕を――― ・・ ・・・・ 「うっ・・あ?・」 おでこに何かのってる。 その重さに目を開ける 「バカだよ、ホント」 ボクは寝かされていて、目の前にはさなえちゃんの泣きそうな顔があった。 そしておでこには、温かな右手が添えられていた。 「・・・バカっ」 目はぎゅっと閉じられていて、 まだ、ボクが起きたことに気づいてないようだった。。 「・・・」 泣いているけれど、頬は幾分マシになっていて、 それ以外はどこも怪我してないようで。 「よかっ・・た、ね」 口の中が、なんか血生ぐさい。 「・・・っ!!」 さなえちゃんはボクに気づいて、 口元をゆがませた。 「ねえ、なん・・であん、なこっ、と」 目に溜まっていた涙は、 いよいよ大粒の涙となってあふれた。 「あんなこと?」 「私を、かばっ、て」 必死に思い出す。 けど、何もかもがぼやけていて、思い出せなかった。 「勝て、たから・・よか、たけっど」 「・・・そっか」 何だか分からないけど、僕はアイツに勝ったらしい。 「こんなに、なってま、でぇ」 体のあちこちが痛い。 けど、さなえちゃんを見ているだけで、痛みがひくようだった。 「ごめんね」 ボクは謝った。 「許、さないんだからねっ」 「ごめん」 「だけど。とってもかっこよかったよ」 その声が耳に心地よくて・・・ボクはまた、ゆっくりと目を閉じた。 ・・ ・・・・それから何日かたって、ボクの傷が綺麗になった頃。 「こンの意気地なしっ!!」 「えぇ!?」 いつもどおりの日々が送られていた。 あの時、カッコイイって言ってくれたのは夢だったのかな、なんて思う時がある。 けれど、夢だとは思えなくて。 カッコイイって言ってくれる事もあるけど、 やっぱり意気地なしって言われてるし。 どっちなんだろ、ホントは。 「そういえば、ほら、この間借りたお金。返すわ」 「ん?あ、うん」 そういって渡された120円。 手のひらのお金をまじまじと見てしまう。 「・・・コインなら、はっきりしてるのにな」 「何が?」 「表と、裏が」 「何言ってんの、ゆうと。頭悪くなった?」 「・・」 「な、何よ黙っちゃって・・・だだ、大丈夫?」 ・・・クスっ 「あ~っ?!今、笑ったでしょ!?ねぇ、笑ったでしょ!??」 「いや、笑ってないって」 「ウソつきっ!」 そう言いながらも、さなえちゃんは笑っていた。 なんだか、急にどうでも良くなってきた。 表でも裏でも。 キミが笑っていてくれるなら――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ≪コメント≫ 表と裏。 人の表と裏を伝えたくて。 でも、そんなのはとても出来そうに無かったので、 コインという物を使いました。 コインってはっきりしてるでしょ? だから。ですよ(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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