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2011.09.25
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「♪魂の人間讃歌  ジャズと人生と仏法を語る」

第13回 アメリカの理想を詠う (下)

前進こそ勝利 前進する人が勝者!!


 ショーター氏 向上のチャンスは常に「今この時」
 ハンコック氏 艱難を乗り越えてこそ道は開く

池田: 「9・11」事件は、アメリカ創価大学(SUA)の第1回入学式から、わずか18日後の出来事でした。その中で、誉れの第1期生は、SUAのモットーの一つ「平和連帯の世界市民たれ!」の意義を真剣に思索(しさく)し、自分たちの使命を確かめ合いながら、力強く歩み出してくれました。
 SUAでは、あのテロで大好きな父を亡くした姉弟も学んできました。断じて負けないで、お母様を守りながら、懸命に学び抜いて卒業し、今、学究また教育の分野で大活躍しています。強く明るく生き抜くご一家の勝利の晴れ姿が、私は本当に嬉しい。
 ショーターさんとハンコックさんのお二人も、幾度となくSUAを訪問し、学生たちを励ましてくださいましたね。

ショーター: 私たちこそ、アメリカ創価大学やアメリカSGIの青年たちに、いつも「希望の光」を送ってくださる池田先生に感謝申し上げます。
 アメリカには、青年への激励が必要だと感じます。なぜならアメリカの未来は、青年の手中にあるからです。
 そしてまたアメリカは、今後ますます、世界の舞台で、とても青年らしい役割を果たしていくと思います。建国200年を過ぎたばかりの最も若い大国の一つなのですから!

池田: 私も、そう信じます。アメリカSGIメンバーは、青年を中心に「平和の文化の建設」展や「ビクトリー・オーバー・バイオレンス(VOV=暴力に打ち勝つ)」運動を展開し、全米に生命尊厳と人間革命の哲学の潮流を起こしました。VOV教材を使った「非暴力教育」は、地域の公立校でも採用されました。
 試練があればあるほど、生き生きと活力を漲らせ、一人一人が新たな可能性を開きながら、雄々しき挑戦の連帯を広げていく。私は、そこにアメリカの偉大な精神を感じます。そうした気風を心から尊敬し、愛する一人です。
 それはまた、仏法の精神にも通じます。
 妙とは「開く義」「具足(ぐそく)・円満(えんまん)の義」そして「蘇生(そせい)の義」と明かされている通りです。

ショーター: アメリカは、合衆国憲法の精神とその意図していることを守らなければなりません。合衆国憲法には、さまざまな解釈が可能で、意見の不一致を生むような内容が含まれています。それらは憲法発布の当初から現在に至るまで政治的論議の中心的な問題となってきました。
 これらの問題は、私たちが自分たちで考える必要があり、一種の対話のきっかけとなるものです。合衆国憲法のこの特徴は、ジェファーソンをはじめ建国の父たちが意図的に盛り込んだものです。それをアメリカの若者たちは理解しなければなりません。
 私は、そうした対話についての発想は、「意見の相違があるとゲームで解決した」というアメリカの先住民の知恵からも学ぶことができると、ある本で読んだことがあります。しかし、それは本で読む以前に、池田先生に教えていただいたことです。

池田: アメリカは「青年の国」です。「永遠の完成」に向けて、決然と歩みゆく「未完成」──そこに、私は開拓の生命の躍動を感じます。
 人々は青年の魂を愛するように、その伸びゆく息吹に魅了されてきました。建国の父たちの発想に、先住民の知恵が合流していたことも、本来、青年らしい「学ぶ心」と無縁ではないでしょう。

ハンコック: アメリカ、そしてアメリカの同志に対する先生の温かいまなざしと慈愛に感謝します。
 アメリカ合衆国は、希望に輝く世界である反面、移民の国としての建国の歴史の中で、不名誉な過去をもっています。先住民の大虐殺(だいぎゃくさつ)を犯し、奴隷(どれい)を連れてきて、奴隷制度も用いました。それは、大変に汚れた過去なのです。
 にもかかわらず、今のアメリカの姿を見ると、長年にわたるこれら「過去」の行為の負の影響をしのぐ事業を、さまざまな形で開始しました。そこから新たな文化の形が現れました。
 例えば、アメリカの文化の形成は、音楽や言語やファッションに関して言えば、明白にアフリカ系アメリカ人社会のトレンドから直接、影響を受けており、これらの貢献は、アメリカ人の生活の中に深く取り込まれています。
 文化に対して開かれたこの態度は、アメリカの偉大さを表しています。下層階級の地位の低かった人々が、アメリカ文化を形成する上で、そのリーダーになったことは、まさに、アメリカの偉大さを示す一例です。
 今や、アフリカ人を父に持つ大統領も誕生していますが、それは終着点ではなく、アメリカがその偉大な未来性を今なお維持していることを示す、世界への明確なメッセージです。
        
池田: アメリカの若々しい創造力は尽きません。そのみずみずしい文化が育んだ象徴的な詩人が、私も青春時代から親しんできたホイットマンです。
 ホイットマンの詠うアメリカとは、理想の社会、未来の来るべき社会としての“アメリカ”です。
 「“人の自主”をわたしは歌う、素朴な、個の人間を、
 が、それにもかかわらず口にする、“民主的”という言葉を、“大衆と一緒に”という言葉を」
 「わたしたちはここにぐずぐずしてはいられないのだ、
 愛する人々よ、わたしたちは進軍しなければならない、わたしたちは危険な矢面に立って耐えきらなければならない」(ホイットマン著『草の葉』富田砕花訳、第三文明社)

 個人の確立と民主主義を基盤とした人間の連帯。そして、そこに向けての誇り高き不断の前進と不屈(ふくつ)の闘争(とうそう)──アメリカの理想と使命をホイットマンは誰にでも分かる言葉で詠い、呼びかけました。
 そうした“理想のアメリカ”と“現実の合衆国”のはざまで、貴国は揺れ動いてきました。
「9・11」という歴史的な試練にも遭い、今も多くの課題があるかもしれません。しかし、アメリカは必ず、ホイットマンが詠ったごとく、理想に向かって進み続けるでしょう。

ハンコック: 本年、池田先生はホイットマン生家協会から「ウォルド・ホイットマン文学の英雄賞」を受けられましたね。あらためてお祝い申し上げます。
 アメリカで生まれたジャズも、一曲一曲は未完成といえます。演奏のたびごとに、完成へと向かっていく不断の挑戦です。
 だからこそ人々を引きつけてやまないのです。

ショーター: 理想的なアメリカを思うと、これまで失われたり、あるいは疎かにされたり、見落とされてきた事柄があります。
 詩歌等の活字、および音楽や演劇を通しての文化交流は重要な役割を担っています。これらの文化的な表現手段を通して、お互いを理解し合い、私たちの理想的なアメリカの姿を思い描くことができるのです。アメリカ社会の現実生活の中に、理想的なアメリカが映し出されるべきです。
 果たして「アメリカの現実」と「理想のアメリカ像」は、合致しているのでしょうか。残念ながら、「ノー」と言わざるを得ません。現実のアメリカは、私たちが望むアメリカの姿を反映してはいません。だから、私たちは自分たちの思い描くアメリカを創りあげなければならないのです。
 私たちの目の前にあるアメリカは、実は、私たちの内なる生命、内面の思考・言葉・行動の表れです。アメリカ人は、長年の傾向として、内面的な思考や内省から逃避(とうひ)しがちです。また、人々はいつも「私の内面的世界は、あまりにも私的なものだ」と言います。しかし、それは、大いなる「心の財」を他の人々と共有しないことの弁解に過ぎないのです。

池田: 大事な指摘です。
 仏法では「心の一法より国土世間(こくどせけん)も出来(しゅったい)する事なり」(御書563ページ)と説かれています。人間の「心の一法」のあり方で、国土も社会も大きく変えていくことができる。ショーターさんが言われるように、大いなる「心の財(たから)」を皆で共有する祈りと行動にこそ、この現実の社会に、人間共和の理想郷を一歩また一歩、築き広げていく道があるのです。

 詩や芸術も「心の財」の共有です。ホイットマン研究の第一人者であるエド・フォサム博士は、ホイットマンが考えていた「詩の本質」について、こう語られていました。
 「詩は、時代を超え、文化を超え、人々に開かれた“対話への心”を啓発する力を持っている」
 またホイットマンは、長い将来にわたり、合衆国にとって必要にして不可欠な問題として、「芸術を愛する国家へ変革していくこと」(ホイットマン著『民主主義の展望』佐渡谷重信訳、講談社)を挙げています。
 芸術は、内面との葛藤から生まれ、それを勝ち越えゆく力です。そこから“理想のアメリカ”を、さらに“理想の人類社会”を実現する生命の力が漲っていくにちがいありません。
        
ショーター: 私もそう念願しております。
 そしてアメリカは、今こそチャンスと捉えて、直面する困難な課題に取り組み、私たちの共通の未来に対する各々の役割を自ら進んで担っていく、そうした力を備えていると思います。それが、今、私の目に映っているアメリカの姿です。

池田: 「理想への前進」とは「間断なき連続闘争」のことです。
 私が、青年たちに何度も贈ったホイットマンの詩に、こうあります。
 「さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて!
 決められた決勝点は取り消すことができないのだ」(前掲『草の葉』)

 宇宙は、森羅万象(しんらばんしょう)すべてが前進しています。私たちも前進するしかありません。座していては後退です。朗らかな前進こそ勝利です。生き生きと前進する人が勝者です。その意味で、毎日が出発なのです。

 ホイットマンを敬愛し、黒人の桂冠詩人と呼ばれたラングストン・ヒューズは「アメリカを再びアメリカにしよう。今までありつづけた夢にしよう」(『詩・民謡・民話 黒人文学全集12』早川書房)と詠いました。
 いかなる苦難があろうと、遠大な夢をあきらめず、挑み続け、ついに実現する。ここに、アメリカの底流に脈打ってきた、不屈の青年の魂があります。人類は、この希望の光を、今再び、若々しく生命の最も奥深くから輝かせていく時を迎えています。アメリカをはじめ、世界の創価の青年たちが、その先頭に颯爽(さっそう)と躍(おど)り出ていくことを私は祈っています。

ハンコック: 池田先生が、アメリカ創価大学に贈ってくださった歌「希望の光」には、次のような一節がありますね。

♪艱難に勝る教育なし
 いかなる闇も打ち破らんと
 我らはただベストを尽くすのみ……

 私の最新のアルバム「イマジン・プロジェクト」も、その完成まで、さまざまな困難を乗り越えなければなりませんでした。「もうダメか」と思うことも、何度もありました。
 しかしそのつど、唱題を重ね、御書を拝し、池田先生の指導に勇気をいただいて、不可能を可能にしたのです。
 そうして「艱難」を乗り越えて完成した作品が、私に音楽のみならず、さまざまな平和貢献の道を大きく開いてくれました。
 私たちはこの「希望の光」の歌を、師の信頼の励ましとして、命に響かせて前進していきます。

♪社会に打って出る
 我らの心は
 建設の絆で結ばれている
 我らは誓う
 正義の理想に向かって
 今日も対話の橋を架けようと!

(2011年9月16日付聖教新聞)






最終更新日  2011.10.30 14:06:33
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