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カテゴリ:ジャズと人生と仏法を語る(全15回・完)
「♪魂の人間讃歌 ジャズと人生と仏法を語る」
最終回 勇気の調べを 青年と共に〈中〉 新しい人材の誕生を世界が熱望 若い世代は“本番”で鍛えられる 池田SGI会長: 音楽に限らず、いかなる分野でも一人一人が勇気を持って、互いに切磋琢磨していく挑戦の中でこそ、いまだかつてない創造は成し遂げられていくものです。 仏法では、人を幸福にする地涌の菩薩の力の譬喩として、「火は焼照(やきてらす)を以て行と為し・水は垢穢(くえ)を浄(きよむ)るを以て行と為し・風は塵埃を払ふを以て行と為し・又人畜草木の為に魂となるを以て行と為し・大地は草木を生ずるを以て行と為し・天は潤(うるお)すを以て行と為す」(御書1338ページ)と説かれます。 この大自然の働きの如く、わが生命に本然的に具わっている勇気と慈悲と智慧の力を発揮して、他者のために尽くしていくのが、菩薩の行動です。 しかも、自分一人だけではない。それを、後に続く人々と共有し、新たな道を開いてこそ、真の菩薩です。 ハービー・ハンコック: よく分かります。 ですから、私たちは、青年たちを前に押し出して、指導的な立場に立たせていかなければなりません。 一般的に、人々は指導者が自分たちの前に立って道を示してくれることにあまりにも慣れてしまっています。自分たちでその道を発見する力を持っているとは考えられないからです。人々は自分自身の人生のために、そのような責任を担うことに慣れていません。誰かがやってくれるのを待っているのです。あるいは、多くの場合、誰か別の人が責任を取ったり、非難を引き受けてくれるのを待っています。 池田: そうですね。 ガンジー記念館元館長のラダクリシュナン博士は、先日、来日したインド創価学会の首脳に伝言を託してくださいました。 ──マハトマ・ガンジーは、晩年、記念式典などには出席せず、ネルー首相など、あえて後継のリーダーたちを前面に立てて、次への流れをつくっていました。だからこそ、インドの盤石な基盤ができました。 その意味において、SGIが「青年学会」を掲げ、若い力をどんどん伸ばしていることは、本当に見事であるし、理想的です──と。 世界の知性は、よく見抜いておられます。 ハンコック: 本当です。驚きました。池田先生が、実践の中で、若い世代に責任を持たせ、薫陶されていることは、永遠性への軌道ですね。 日蓮大聖人の仏法が説いていることは、一次元から言えば「一切の責任を担い立つ」ということではないでしょうか。自分自身の振る舞いや、個人的な役割のみならず、社会やそこで起こっていること全てに対しての責任です。これは本当に素晴らしいと思います。 この仏法の実践の偉大な功徳の一つは、その責務をもっと意欲的に受け入れる勇気が、自分の生命の中から湧き上がってくることを感じて、こうした責任を担うことをあまり恐れなくなることです。それは凄いことです。 池田: その通りです。 日蓮大聖人は「一切衆生の異の苦を受くるは悉く是れ日蓮一人の苦なるべし」(同758ページ)とまで仰せになられています。 「一人立つ精神」こそ、創価の伝統です。牧口先生は「羊千匹より獅子一匹」と叫ばれました。 「青年学会」の意義とは、いずこにあっても、この創価の師弟の心を受け継ぐ青年が、一人、責任を持って立ち上がることです。 その一人の青年に続いて、「二人・三人・百人と」(同1360ページ)、必ず立ち上がり、勢いを増して前進していくのです。 そのために、私は手を打っています。青年が応えてくれています。 だから、断じて行き詰まることがありません。 心の継承と言えば、ショーターさんは本年六月、ブラジルを訪問された折の講演でも、ご自身を育てたジャズの先達でドラマーのアート・ブレイキーさんから学んだ信条等を、とりわけ大事に語っておられたと伺いました。 ウェイン・ショーター: はい。アート・ブレイキーは言いました。 「君たちは、楽器の陰に隠れることもできる。やろうと思えば簡単にできるが、僕は、ドラムの陰に隠れたりはしない。もし君たちが演奏して何も表現できないなら、それは勉強が足りないからだ。自分が接した世界で目にし、理解したことを演奏しようとしていないんだ。何も真剣に心に掛けていないんだ。だから、技術ばかり立派になろうとして、楽器の陰に隠れているんだ」と。 私も、招かれてスピーチする時や、向上心のある音楽家だちと話す時は、音楽についてではなく、人生について語るようにしています。 池田: 味わい深いお話です。真に人間として偉大な音楽家を育てようとされたのですね。 ともあれ、一人一人が日々、価値創造しながら、社会のため、人々のために助け合い、支え合って、より良き共同体を築いていく──その主体者は何か特別な、特定の人ではない。本来、全員が主体者なのです。 そして、何より青年を育てる以上の社会貢献はありません。今、世界はさまざまな難問に直面しています。政治も経済も環境問題も、今までの古い考え方の延長では解決できない。新しい創造を生むための、新しい発想を持った、新しい世界市民の誕生を、世界が熱望しているのではないでしょうか。 「平和の文化」の創出や「対話の文明」の構築といっても、その鍵を握っているのは「青年の育成」である。──私か世界の指導者や知性と語り合ってきた結論も、この一点でした。 ハンコック: 「世界市民の育成」や「平和の文化の促進」という考えは未来のための土台であり、それは実に、創価教育の父である牧口初代会長の「個人への尊敬」とその視点の促進というビジョンにまで遡ることができます。 アメリカ創価大学や創価一貫教育は、未来の教育のモデルです。世界中の多数の教育機関が、このビジョンの影響を受けるだろうと思います。 それは二十一世紀にとって極めて必要なものであるという意味で、時宜にかなっています。池田先生は、不思議にも、必要な手を全て打ってくださいました。 基盤は、できあがっています。私たちがなすべきことは、言ってみれば、先生が打ち込んでくださった点に沿って、それらを結んでいくことです。 しかし、それは、たやすいことではありません。本当に、大きな勇気と慈悲と智慧を要するのです。私たちはこの挑戦に立ち向かわなければなりません。未来は私たちにかかっているのですから! (2011年12月3日付 聖教新聞)
最終更新日
2011.12.12 16:21:43
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