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〈スタートライン〉タレント 副島淳さん 君のコンプレックスは“武器”になる
小学3年生までは、自分の外見が人と違うことを意識したことはありませんでした。4年生で引っ越した先の学校で、「まっくろくろすけ」「髪の毛がたわしみたい」といじめられるようになって、初めて「なんで僕だけ肌が黒いんだろう」と思うようになったのです。 いじめはだんだんエスカレートし、「副島に触ったら、ばい菌がうつる」と避けられたり、サッカーゴールの前に立たされて、みんなが蹴るボールの的にされたり。6年生までの3年間は地獄のような日々でした。 学校では周囲に心を閉ざし、家では母に「無責任に産んでんじゃねえよ!」「学校に行きたくない。引きこもらせてくれ!」と感情をぶつけていました。ですが、母は肝っ玉の据わった人で「お前がスペシャルな存在だから、みんなそう言うんだ。いつかお前にとっていい時代が必ず来るよ」と笑い飛ばしていました。その時は受け入れられませんでしたが、今の僕にとって、母の言葉は生きる指針になっています。
中学校でバスケットボール部に入ったことで、状況が変わりました。身長が伸びたこともあって、部活で周りから頼られるようになったのです。だんだん人と話すのが怖くなくなり、「肌黒いな」と容姿をいじられても「日焼けサロンで寝過ぎちゃった」と、ユーモアで返せるようになりました。2年生の時に顧問になった先生が非常に熱心で、さらにバスケットボールにのめり込むように。エースと呼ばれるまでに上達し、自分に自信がつきました。 しかし今度は、次第に自己中心的になり、試合で失敗したチームメートに「お前、いらないよ」と吐き捨てるように。いじめられていた僕が、いつしか「いじめる側」になりかけていたのです。人間とは愚かな生き物ですね。 そんな僕を見ていた先生から「お前が成長しないとチームは強くならない」「みんなを支えて引っ張っていく存在になれ」と厳しく言われて軌道修正ができたのです。先生のおかげで傲慢さに気付き、人間的に成長させてもらいました。 また、祖母にも救われました。母は、僕が小学2年生の時に日本人男性と一緒になり、妹も生まれましたが、その後、離婚。僕たち家族3人が路頭に迷いかけていたのを見かねて、離婚した男性の母である祖母が家に引き取ってくれたのです。三味線と琴の師範代をしていたので、言葉遣いや箸の持ち方など礼儀作法に厳しく、当時は苦手でしたが(笑い)、今では本当に感謝しています。
大学生の時、知人の紹介で映画に出演する機会があり、そこで知り合った方に芸能界に誘われ、事務所を紹介してもらいました。ですが、この世界に入って再び、外見のコンプレックスにぶつかりました。 オーディションに行くと、「英語は話せる?」「歌やダンスはできないの?」とステレオタイプな「黒人」の能力を求められました。英語はできませんし、歌もダンスも下手ですから、全然、仕事をもらえません。「この世界、キツいな」と思いましたね。 自信を喪失し、このまま芸能界をやめようかと思っていた時、舞台の仕事に出合えたことがターニングポイントになりました。自分でも嫌っていた髪の毛や肌の色、遠くからでも目立つ身長や声の大きさを、演出家の方が生かしてくださったのです。「副島の、この見た目があるからこそ通じる表現があるし、人の心を打つ芝居もできるんだよ」と。僕のコンプレックスが全て“武器”になると気付かせてくれたのです。その発想の転換ができた時、“ここは自分を生かせる場所だな”と思え、表現することが面白くなったのです。 自分が芝居をするなんて考えもしませんでしたが、舞台が大好きになり、経験を重ねる中で、テレビの仕事もいただき、芸能界の道が広がっていきました。
人との「違い」は自分にとって「プラス」だと捉えてほしい。僕もそう思えるまでに時間がかかりましたが、臆病になったり、気持ちにふたをしたりせず、堂々とアピールするぐらいでいいです。 もし、いじめられて苦しんでいる人がいたら、つらければ逃げてもいいと僕は思っています。今、立ち向かうことだけがベストの選択肢とは限らない。外に出たくなければ家でできることでもいいので、何か夢中になれることを見つけてほしい。それに夢中になる自分のことが、きっと好きになります。 ただ、死ぬという選択肢だけは絶対に選ばないでください。“絶対に”です。今は想像できないと思いますが、生きていれば必ず明るい未来が待っています。僕の場合、いじめていた小学校の同級生が自分を人間的に成長させてくれたと思えるようになって、今では友達になっています。当時は死にたいと思って団地の屋上まで上がったこともありましたが、そこで飛び降りていたら今の自分はいません。人知れず悩んでいる人には、どうか生き抜いてほしいと伝えたいです。
最終更新日
2020.11.29 10:43:25
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