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小説 『新・人間革命』第30巻

2017/02/28
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大山 48

 山本伸一が聖教新聞社を出て、自宅に向かったのは、午後10時前のことであった。
 空は雲に覆(おお)われ、月も星も隠れていた。
 これで人生ドラマの第一幕は終わったと思うと、深い感慨(かんがい)が胸に込み上げてくる。
 すべては、広布と学会の未来を、僧俗和合(そうぞくわごう)を、愛するわが同志のことを考えて、自分で決断したことであった。彼は思った。
 “これからも、学会の前途には、幾(いく)たびとなく怒濤(どとう)が押し寄せ、それを乗り越えて進んでいかなくてはならないであろう。私が一身に責任を負(お)って辞任することで、いったんは収(おさ)まるかもしれないが、問題は、宗門僧らの理不尽(りふじん)な圧力は、過去にもあったし、今後も繰り返されるであろうということだ。それは広宣流布を進めるうえで、学会の最重要の懸案(けんあん)となっていくにちがいない。
 学会の支配を企(くわだ)てる僧の動きや、退転・反逆の徒(やから)の暗躍(あんやく)は、広宣流布を破壊(はかい)する第六天の魔王の所為(しゃさ)であり、悪鬼入其身(あっきにゅうごしん)の姿である。信心の眼(まなこ)で、その本質を見破(みやぶ)り、尊(とうと)き仏子には指一本差させぬという炎(ほうお)のような闘魂(とうこん)をたぎらせて戦う勇者がいなければ、学会を守ることなど、とてもできない。広宣流布の道も、全く閉(と)ざされてしまうにちがいない”
 未来を見つめる伸一の、憂慮(ゆうりょ)は深かった。

 玄関で、妻の峯子が微笑みながら待っていた。家に入ると、彼女はお茶をついだ。
 「これで会長は終わったよ」
 伸一の言葉に、にっこりと頷(うなず)いた。
 「長い間、ご苦労様でした。体を壊(こわ)さず、健康でよかったです。これからは、より大勢の会員の方に会えますね。世界中の同志の皆さんのところへも行けます。自由が来ましたね。本当のあなたの仕事ができますね」
 心に光が差した思いがした。妻は、会長就任の日を「山本家の葬式」と思い定(さだ)め、この19年間、懸命(けんめい)に支え、共に戦ってくれた。いよいよ「一閻浮提広宣流布(いちえんぶだいこうせんるふ)」への平和旅を開始しようと決意した伸一の心も、よく知っていた。彼は、深い感謝の心をもって、「戦友」という言葉を嚙(か)み締(し)めた。
(2017年 2月28日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/28 01:32:29 PM
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2017/02/27
大山 47

 山本伸一は、記者団の質問に答えて、今後の自身の行動について語っていった。
 「学会としては、世界の平和をめざし、仏法を基調(きちょう)として、さらに幅広い平和運動、教育・文化運動等を展開していきます。私は、その活動に時間をあて、行動していきたいと考えています」
 伸一への質問は続いた。
 「会長交代によって、今後、学会と公明党の関係は変わりますか」
 記者たちの最大関心事は学会と政治との関係にあったようだ。伸一は微笑(ほほえ)みながら、「それは、新会長に聞いてもらわないと。でも、これまでと同じでしょ?」と言って、隣の十条潔の顔をのぞき込んだ。
 十条は大きく頷いた。
 「やっぱり、同じですって」
 また、笑いが広がった。
 「これまで同様、学会が公明党の支援団体であることに変わりはないということです。公明党には、いちばん国民のために貢献(こうけん)していると言われる党に、さらに成長していっていただきたいというのが、私の願いです」
 彼は、すべての質問に、率直に答えた。

 午後8時前、記者会見は終わった。
 受付の女子職員が、心配そうな顔で伸一を見ていた。彼は、微笑を浮かべて言った。
 「大丈夫! 私は何も変わらないよ!」
 それから別室に移り、青年部幹部らと懇談(こんだん)した。彼は魂(たましい)を注ぎ込む思いで訴えた。
 「私が、どんな状況に追い込まれようが、青年が本気になれば、未来は開かれていく。
 弟子が本当に勝負すべきは、日々、師匠に指導を受けながら戦っている時ではない。それは、いわば訓練期間だ。師が、直接、指揮を執(と)らなくなった時こそが勝負だ。
 しかし、師が身を引くと、それをいいことに、わがまま放題になり、学会精神を忘れ去る人もいる。戸田先生が理事長を辞められた時もそうだった。君たちは、断じてそうなってはならない。私に代わって、さっそうと立ち上がるんだ! 皆が“伸一”になるんだ!」
(2017年 2月27日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/27 01:43:20 PM
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2017/02/25
大山 46

 十条潔は、緊張(きんちょう)した面持ちで新会長としての抱負(ほうふ)を語った。
 「山本第三代会長の後を受けまして、新しい制度による出発となりました。これまでに山本会長は、学会の運営は皆で行っていけるように、十分に指導してくださいました。これからも、学会の進み方に変わりはありません。誠(まこと)に大任ですが、決意を新たにし、この任を全うしていきたいと考えております。
 今後は21世紀をめざし、5年単位の展望で前進してまいります。特に最初の5年は人材の育成に力を注いでいく所存(しょぞん)です。そして、二度と戦争を起こさせない、社会の安定した平和勢力に、学会を育てていきたいと思っております」

 そこに、山本伸一が到着した。
 彼は、記者たちに笑顔を向け、「大変にお疲れさまです」と言って礼をし、十条にも会釈して隣(となり)に座った。
 すぐに、「現在の心境と会長勇退の理由をお聞かせください」との質問が飛んだ。
 「大きな荷物を下ろしてホッとした気持ちです。ただし、新しい会長中心の体制、これからの前進を見守るという意味では、また新しい荷物を背負ったような気持ちもいたします。ゆっくり休ませてくれないんですよ」
 彼の言葉に、どっと笑いが起こった。どことなく重たかった空気が一変し、十条の顔にも笑みが広がった。伸一は、新体制の出発を明るいものにしたかったのである。
 ユーモアは暗雲(あんうん)を吹(ふ)き払う。
 彼は、話を続けた。
 「既に説明もあったと思いますが、会長を辞任しようと思った最大の理由は、足かけ20年という歳月を、一人で最高責任者をしていることは長すぎると判断したことです。以前から、後進に道を譲(ゆず)ることで、新しい活気に満ちた創造もなされると考えてきました。
 また、疲(つか)れもたまっています。しかし、私は51歳であり、今ならば、まだ皆を見守りながら、応援していくことができます」
 人生は、闘争(とうそう)の連続であるといえよう。
(2017年 2月25日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/25 10:52:14 PM
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2017/02/24
大山 45

 県長会等のあとも、山本伸一は新宿文化会館にとどまり、彼の辞任にいちばん衝撃(しょうげき)を受けている婦人部の代表と懇談(こんだん)して励ました。また、来客の予定があり、その応対にも時間を費やした。
 夜には、創価学会として記者会見を行うことになっていたが、既に新聞各紙は夕刊で、伸一が会長を勇退(ゆうたい)し、十条潔が新会長に就任(しゅうにん)することになると、大々的に報じた。
 それらの報道では、この日の「聖教新聞」に、伸一の所感「『七つの鐘』終了に当たって」が掲載されたことに触れ、それが「辞意」の表明であるなどとしていた。
  
 記者会見の会場である聖教新聞社には、夕刻から、次々と新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミ関係者が訪れ、午後6時過ぎには数10人の記者らでごった返していた。
 午後7時、新会長の十条(じゅうじょう)と新理事長の森川一正(もりかわかずまさ)、副会長の秋月英介(あきづきえいいすけ)・山道尚弥(やまみちひさや)らが姿を現すと、いっせいにフラッシュが光り、カメラのシャッター音が響いた。
 伸一は、30分ほど遅れて、会場に行くことにしていた。新会長の十条を前面に立てなければとの思いからであった。

 記者会見では、秋月が、本日の総務会で会長・山本伸一の勇退(ゆうたい)の意向が受理されて辞任し、名誉会長となったと報告。そして、理事長であった十条が会長に、副会長の森川が理事長に就任したことが発表された。
 また、伸一の会長勇退については、「七つの鐘」の終了という学会にとって大きな歴史の区切りを迎え、新しい制度、機構も整い、人材もそろったので、会長職を辞(じ)して、平和・文化・教育の活動に力を注(そそ)ぎたいとの希望が出されたことなどが伝えられた。
 マスコミ関係者の多くは、辞任の情報は耳にしていた。しかし、昨日まで、まだ先のことではないかと思っていたようだ。
 学会が未曾有(みぞう)の大発展を遂げたのは、常に未来を見すえて、先手、先手と、素早(すばや)く手を打って前進してきたことにこそある。
(2017年 2月24日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/25 10:53:36 PM
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2017/02/23
大山 44

 24日の総務会で制定された「創価学会会則」は、学会が宗教団体として、どのように宗教活動をしていくのか、また、どのように会員を教化育成していくのか、さらに、そのために組織をどのように運営していくのかなど、原則的な事項を定めたものである。つまり、学会が宗教団体として活動を進めていくうえでの基本的な
 それまで学会は「創価学会規則」のほか、総務会規定、人事委員会規定など個別の事項について定(さだ)めた規定、さらに創立以来培われてきた慣例等が運営の基本となってきた。
 この「会則」は、学会の飛躍的、重層的な発展と、「七つの鐘」終了にともなう新時代への前進に対応するため、それらを整理し、成文化してまとめたものである。
 「会則」は15章からなり、会長及び理事長については、総務のなかから総務会が選出することが明記され、任期は5年と定められていた。(その後、改定=編集部注)
 なお、この日の総務会には、副会長の鮫島源治からも役職辞任の申し出があり、受理されている。

 県長会が終了し、正午ごろになると、「創価学会の山本伸一会長が辞任へ」とのニュースがテレビ、ラジオで流れた。報道では、宗門の法華講総講頭も辞め、新会長には十条潔が就任し、伸一は名誉会長となる見込みであることなどが伝えられた。既に情報が流されていたのである。
 全国の学会員にとっては、まさに寝耳に水であった。“そんなことがあるわけがない。とんでもない誤報(ごほう)だ”と思う人もいれば、“本当なのだろうか”と、首をひねる人もいた。また、“なんで先生が会長を辞めなければならないのか!”と憤る人もいた。
 学会本部には、問い合わせや憤慨(ふんがい)の電話が殺到(さっとう)した。電話口で泣きだす人もいた。交換台は、大わらわであった。
 海を進む船は、荒波にも揉(も)まれる。疾風怒濤(しっぷうどとう)を越えてこそ、新天地へと至る。伸一は、ただ一人、船首に立って風に向かった。
(2017年 2月23日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/25 10:54:20 PM
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2017/02/22
大山 43

 会場の中央にいた男性が立ち上がった。まだ30代の東北方面の県長である。彼
は、県長会の参加者に怒(いか)りをぶつけるかのように、声を張(は)り上げて訴(うった)えた。
 「皆さんは、先生が辞任されるということを前提に話をしている。私は、おかしいと思う。そのこと自体が、納得できません!」
 沈黙(ちんもく)が流れた。
 伸一の声が響(ひび)いた。
 「辞任が大前提でいいじゃないか。私は、そう決めたんだ。これで新しい流れができ、学会員が守られるならば、いいじゃないか。
 声を荒らげるのではなく、学会は和気あいあいと、穏やかに、団結して進んでいくことだよ。私と同じ心であるならば、今こそ、同志を抱きかかえるようにして励まし、元気づけていくんだ。みんなが立ち上がり、みんなが私の分身として指揮を執るんだ!

 初代会長の牧口先生が獄死されても、戸田先生がその遺志を受け継いで一人立たれた。そして、会員75万世帯を達成し、学会は大飛躍した。その戸田先生が逝去(せいきょ)された時、私は、日本の広宣流布を盤石(ばんじゃく)にし、必ずや世界広布の流れを開こうと心に誓(ちか)った。そうして今、大聖人の仏法は世界に広がった。
 物事には、必ず区切りがあり、終わりがある。一つの終わりは、新しい始まりだ。
その新出発に必要なのは、断固たる決意だ。誓いの真っ赤な炎(ほのお)だ。立つんだよ。皆が後継の師子(しし)として立つんだ。いいね。頼(たの)んだよ」

 県長会は、涙のなかで幕を閉じた。
 何があろうと、皆の心に峻厳(しゅんげん)な創価の師弟の精神が脈動(みゃくどう)している限り、新しき道が開かれ、広宣流布は伸展していくのだ。
 引き続き、午後には総務会が開かれた。
 この席上、伸一の会長辞任の意向が伝えられ、受理された。さらに総務会では、懸案(けんあん)であった「創価学会会則」の制定を審議し、採択(さいたく)。これに基(もと)づき、新会長に十条潔(じゅうじょうきよし)が、新理事長に森川一正(もろかわかずまさ)が選任され、伸一は名誉会長に就任した。それは、伸一にとって、壮大な人生ドラマの新章節の開幕であった。
(2017年 2月22日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/22 11:33:13 AM
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2017/02/21
大山 42

 山本伸一は、力強い口調で語り始めた。
 「これからは、新会長を中心に、みんなの力で、新しい学会を創(つく)っていくんだ。私は、じっと見守っています。悲しむことなんか、何もないよ。壮大(そうだい)な船出(ふなで)なんだから」
 会場から声があがった。
 「先生! 辞(や)めないでください!」
 すすり泣きがもれた。それは次第に大きくなっていった。号泣(ごうきゅう)する人もいた。

 一人の壮年が立ち上がって尋(たず)ねた。
 「今後、先生は、どうなるのでしょうか」
 「私は、私のままだ。何も変わらないよ。どんな立場になろうが、地涌の使命に生きる一人の人間として戦うだけだ。広宣流布に一身を捧(ささ)げられた戸田先生の弟子だもの」
 青年の幹部が、自らの思いを確認するように質問した。
 「会長を辞められても、先生は、私たちの師匠(ししょう)ですよね」
 「原理は、これまでに、すべて教えてきたじゃないか!
 青年は、こんなことでセンチメンタルになってはいけない。皆に、『さあ、新しい時代ですよ。頑張りましょう』と言って、率先(そっせん)して励ましていくんだ。恐れるな!」

 次々に質問の手があがった。
 「県長会には出席していただけますか」
 壮年の質問に伸一は答えた。
 「新会長を中心に、みんなでやっていくんだ。いつまでも私を頼(たよ)っていてはいけない。
 これまで私は、全力で指導し、皆の育成にあたってきた。すべてを教え、伝えてきた。卒業のない学校なんかない」
 「各県の指導には回っていただけるんでしょうか。ぜひ、わが県に来てください」
 涙(なみだ)を浮(う)かべながら、婦人が言った。
 「ありがとう。でも、今までに何度となく各県を回ってきたじゃないか。これからは、平和のために、もっと世界を回りたい。いつ戦争になるかわからない国もある。できる限りのことをしておきたいんだよ」
 平和への闘魂(とうそう)がほとばしる言葉であった。
(2017年 2月21日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/21 11:03:24 AM
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2017/02/20

大山 41

 県長会のメンバーは、十条潔の説明で、山本伸一が会長辞任を決意した理由はわかったが、心の整理がつかなかった。
 十条は話を続けた。
 「先生は、この際、創価学会の会長だけでなく、法華講総講頭の辞任も宗門に申し出られました。こちらの方は、宗門との間に生じた問題の一切の責任を負われてのことです。
 先生が会長を辞められるというと、どうしても、私たちは悲しみが先に立ってしまう。しかし、大切なことは、先生の決断を、その心を、しっかりと受けとめ、未来に向かい、明るくスタートすることではないかと思う。
 力のない私たちではあるが、これから力を合わせて、『先生。ご安心ください』と言える創価学会をつくることが、弟子の道ではないだろうか!
 なお、今後の流れとしては、先生の勇退のお話を受けて、本日、午後から総務会を開催し、勇退が受理されたあと、記者会見を開き、正式発表となる予定であります」

 彼の話は終わった。拍手が起こることはなかった。婦人の多くは、目を赤く腫(は)らしていた。虚(うつ)ろな目で天井を見上げる壮年もいた。怒りのこもった目で一点を凝視(ぎょうし)し、ぎゅっと唇(くちびる)を噛(か)み締(し)める青年幹部もいた。
 その時、伸一が会場に姿を現した。
 「先生!」
 いっせいに声があがった。
 彼は、悠然(ゆうぜん)と歩みを運びながら、大きな声で言った。
 「ドラマだ! 面白いじゃないか! 広宣流布は、波瀾万丈(はらんばんじょう)の戦いだ」
 皆と一緒に題目を三唱し、テーブルを前にして椅子(いす)に座ると、参加者の顔に視線(しせん)を注いだ。皆、固唾(かたず)をのんで、伸一の言葉を待った。
 「既(すで)に話があった通りです。何も心配はいりません。私は、私の立場で戦い続けます。広宣流布の戦いに終わりなどない。私は、戸田先生の弟子なんだから!」
 彼は、烈風(れっぷう)に勇み立つ師子であった。創価の師弟の誇りは、勇気となって燃え輝く。


(2017年 2月20日付 聖教新聞)







Last updated  2017/02/20 12:30:57 PM
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2017/02/18
大山 40(連載6000回)

 山本伸一の会長辞任は、あまりにも突然(とつぜん)の発表であり、県長会参加者は戸惑(とまど)いを隠(かく)せなかった。皆、“山本先生は宗門の学会攻撃を収(おさ)めるために、一切の責任を背負(せお)って辞任された”と思った。だから、十条潔から“勇退”と聞かされても、納得しかねるのだ。
 宗門との問題が、会長辞任の引き金になったことは紛(まぎ)れもない事実である。しかし、伸一には、未来への布石のためという強い思いがあった。
 十条の額には汗が滲(にじ)んでいた。彼は、皆の表情から、まだ釈然(しゃくぜん)としていないことを感じ取ると、一段と大きな声で、「山本先生は、ご自身が勇退される理由について、次のように語っておられます」と言い、伸一の話を記したメモを読み上げた。
 
 「第一の理由──19年という長い会長在任期間のため、体の限界も感じている。
したがって学会の恒久的な安定を考え、まだ自分が健康でいる間にバトンタッチしたい。牧口・戸田門下生も重鎮(じゅうちん)としており、青年の人材も陸続と育っている今こそ好機である。

 第二の理由──1970年(昭和45年)以来の懸案(けんあん)としてきた、社会と時代の要請(ようせい)に応える学会の制度・機構の改革も着々と具体化した。それを踏まえた会則も、このほど制定される運びとなった。次代へ向け、協議し合って進みゆく体制も整った。会の運営を安心して託(たく)せる展望ができた。

 第三の理由──近年、仏法を基調とした平和と文化・教育の推進(すいしん)に力を注いできた。この活動は、今後、日本、世界のために、さらに推進し、道を開いていかなくてはならないと感じている。また、一緒に歴史を創り、活躍してくださった全国の功労者宅への訪問や、多くの執筆等も進めていきたい。それには、どうしても時間を必要とする。
 以上が、山本先生の会長勇退の理由です」

 人も、社会も、大自然も、すべては変化する。その変化を、大いなる前進、向上の跳躍台(ちょうやくだい)とし、希望の挑戦を開始していく力が信心であり、創価の精神である。
(2017年 2月18日付 聖教新聞)


新聞連載回数で日本一
● 連載は、1509回にわたる小説『人間革命』と合わせると、きょうで7509回になる。
















Last updated  2017/02/18 07:08:14 PM
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2017/02/17
大山 39

 未来を展望する時、社会も、学会も、ますます多様化していくにちがいない。したがって、山本伸一は、これまで以上に、さまざまな意見を汲(く)み上げ、合議による集団指導体制によって学会を牽引(けんいん)していくべきであると考えていた。もちろん会長はその要(かなめ)となるが、執行部が、しっかりとスクラムを組み、力を合わせ進んでいくことを構想していたのだ。
 また、彼の組織像は、全同志が会長の自覚(じかく)に立って、互いに団結し合い、活動を推進していくというものであった。

 理事長の十条潔は話を続けた。
 「山本先生は、ご自分でなくとも、会長職が務(つと)まるように、制度的にも、さまざまな手を打たれてきたのであります。
 先生は、以前から、私たちに、よく、こう言われておりました。
 『私がいる間はよいが、私がいなくなったら、学会は大変なことになるだろう。だから今のうちに手を打っておきたい。いつまでも私が会長をやるのではなく、近い将来、会長を交代し、次の会長を見守り、育てていかなければならない』
 また、『君たちは、目先のことしか考えないが、私は未来を見すえて、次の手を打っているんだ』とも言われております。
 その先生が、今回、『七つの鐘』の終了という歴史の区切りを見極(みきわ)められ、会長辞任を表明されたのであります」

 この瞬間、誰もが息をのんだ。耳を疑う人もいた。愕然(がくぜん)とした顔で十条を見つめる人もいれば、目に涙を浮かべる人もいた。
 十条も万感の思いが込み上げ、胸が詰(つ)まったが、自らを励まし、言葉をついだ。
 「先生は、『次の創価学会の安定と継続と発展のために、新しい体制と人事で出発すべきである』と言われ、熟慮(じゅくりょ)の末に会長勇退(ゆうたい)を決意されたのであります」
 弟子のために道を開くのが師である。そして、その師が開いた道を大きく広げ、延ばしていってこそ、真の弟子なのである。この広布の継承(けいしょう)のなかに真実の師弟がある。
(2017年 2月17日付 聖教新聞)






Last updated  2017/02/17 12:41:50 PM
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