接客を捨てて肉と価格で勝負するオヤジ
友達が我が家の近所に、780円でランチ黒毛和牛食べ放題(肉屋系列)の焼肉屋があるとう情報を入手してきた。住宅街にある分りにくい場所にある店なので、地元の人しか行けないだろうという触れ込みらしいが、地図を見ると、地元(徒歩圏内)の私も全く知らない場所にあった。おぼつかない足取りで小雨の中さすらうこと10分余り…。あった!!小学校の横、公園の前というバリバリの住宅街に、赤い暖簾が掛かっていた。暖簾には「和牛」の白抜き文字が!!万全に空かせたお腹に、黒毛和牛食べ放題の妄想…。高まる期待を胸に、私たちはガラガラとドアを開けた。煙たっ!!狭い店内は、白い煙で一杯だった。3台ある換気扇は、キモチ回っているだけだった。「これは相当匂いがつくな~」と思って「ここで待つのだろう」と思われる椅子に座った。そう店内は満席だったのだ。「すいませ~ん!」一番奥に座っていたおばさんは、声を張り上げた。し~ん…。少しして、一人のおじさんが肉の乗った皿を持って現れた。ものすごく美味しそうな肉の盛り!!「すいませ~ん!」再びおばさんが声を張り上げた。店員、無視して奥に引っ込む。また少しして、ご飯を持った別の店員が現れた。「すいませ~ん!!」おばさん、空の皿を持って叫ぶ。店員、黙って皿を受け取る。私たち。一切無視される。「いらっしゃいませ」の一言もなく、それどころか待合席に座っている我々に一瞥もくれない。完全無視。壁には「○○テレビ2007年、年間ランキング1位」と書いた張り紙が誇らしげに数枚貼ってある。「肉と価格だけで勝負してるねんな」ちょっと見ただけでも、肉の上質さは伝わってきた。しかも大盛り。しかも780円。しかも食べ放題。これで接客までよかったら、店がパンクすると予見し、あえてメチャメチャ感じの悪い態度を取っているのでは…。「もしかしてハンデ?」私たちは呟き、全く席の空く気配のない店内を後にした。ちなみに店に入ってから出るまで、店員の声は一言も聞かなかった。私たちに関しては、見られてもいなかったと思う。焼肉を諦めた私たちは「料理の鉄人で、陳健一と戦った」料理人がいる中華の店に向かった。店に着くと、鉄人と戦ったと思しきおじさんが、「どうぞ」と笑顔で店のドアを開けてくれた。とても小さな店だが、感じのよい料理人だった。料理も美味かった。また行こうと思う。ちなみに焼肉の店にも、心を無にして「肉」のみを追求する気概で、乗り込むことにした。