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Motor & Outdoor Journalist 安藤眞の　　　　　　　　　逆説的よろず考現学

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二輪車用ETCの今後予測

みなさん、こんにちは(^^)/。　昨日書いた二輪車用ETCの価格ですが、国側の作戦としてはあ「補助金を使って四輪用と同価格を維持する」という作戦が考えられます。何しろ、四輪用だって5,000円の補助があるわけですから、二輪に適用しない手はありません。平成16年度の四輪車用ETCの車載機購入助成金は、5,250円×30万台でしたが、これを防水機能向上によってコストアップするぶんが１万円だったと仮定して、15,750円にしたとしても、10万台分の補助金になります。　二輪車の高速道路の利用台数は、四輪車の2.5％にすぎませんから、15億7,500万円の予算が組めれば、高速道路をひんぱんに利用するライダーのほとんどが網羅できてしまうかも知れません。　あらかじめ小銭やカードが用意できない二輪車にとってこそ、ノンストップ通過の導入はありがたいことですから、そうなれば「それじゃ、付けるか」と思うライダーが多数を占めるのではないかと思います。　たぶん、そうやって懐柔することによって、根本的な問題点への批判を反らして、なし崩しにしてしまうのが狙いなんでしょうね。　そうそう、昨日書いた若年者のクレジットカードの件ですが、道路公団がETC利用のためだけのカードを発行することを決めたという話を忘れていました。これならカード破産の心配はありませんけれど、このシステムを作るのに、いったいいくらかかるんでしょうね。

Dec 26, 2004

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二輪車用ETC、事実上の切り捨てへ！

みなさん、こんにちは。　今朝の毎日新聞に、二輪車用ETCの今後に関する記事が出ていました。要約すると「二輪車用ETCには、四輪用のETCと同じシステムを使用する。車載機には、四輪用のものに防水加工したものを使用する。これまでタッチ＆ゴー方式を検討してきたが、コストがかりすぎるための措置」ということでした。　これって、事実上、二輪用ETCの切り捨てです。　「四輪用車載機に防水加工する」といったって、タダでできるわけではありません。それなりの信頼性を確保するには、それなりのコストアップが必要であることは、以前から指摘されています（だからタッチ＆ゴー方式が検討されていたんです）。　「タッチ＆ゴー方式では（道路公団が負担する）コストがかかりすぎる」からと言って、自分たちは何もせず、ユーザーにコストアップ分を負担させるというのは、あまりに都合が良すぎるんじゃないでしょうか。　恐らく、そんな高価な車載機を買う人は少ないでしょうが、高価で売れなかったとしても、国交省は「メーカーの値下げ努力が足りない」とか言うのでしょう。　防水性以外にも、耐振動性や盗難対策なども問題になるはずです。振動で壊れたETCでバーが開かず事故になっても、「徐行しなかったのが悪い」ということになるのでしょうね。　もうひとつの問題点は、自動二輪の免許は16歳から取れるということです。現行ETC方式が採用されれば、16歳の少年少女もクレジットカードを作らなければならないことになります。　ただでさえ、カード破産やカード犯罪が多発しているのに、判断力の未熟な若年者にカードを持たせるような施策を、行政が率先して行って良いのでしょうか？　現実問題として、高速道路を頻繁に利用するような18歳未満の若年者は少ないでしょうけれど、これって公共事業なんですよ。公共の福祉のための事業に、こんなリスクがあって良いはずはありません。　これらのことに鑑みると、今回の決定は「もうやってらんないから、利用者の利便性なんかどうでも、裁判にならないように形だけ作ってお茶を濁しておこう」という事実上の放棄と考えるのが、正しい捉え方だと思いますよ。

Dec 25, 2004

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自賠責保険料、4,000円の値上げへ。

みなさん、こんにちは(^^)/。　子供のロタウイルスを移されちゃいまして、昨日は１日、激しい下痢に苦しんでいました(^^;。　さて、標題の件。　報道等でもうご存知だとは思いますが、自賠責保険の保険料が、段階的に4,000円、引き上げられることになりました。　自賠責保険は、正確には自動車損害賠償責任保険と言い、自動車を所有（というか、公道走行可能なようにナンバーを取得）する場合、一部の例外を除いて所有（正確には「使用）」者全員が加入するように、「自動車損害賠償補償法」という法律で定められています。　この法律は、1,955年（昭和30年）にできたもので、急増する自動車事故に対応するために作られました。当時はまだ、自動車保険（いわゆる任意保険）への加入が少なく、自動車事故の被害に遭っても、加害者に支払い能力がなく、被害者は「轢かれ損」になるケースが多発したんですね。そこで、そうした被害者が救済できるように、自動車を登録した人全員に加入が義務づけられたのが、自賠責保険というわけです。　ですから補償されるのは人身事故（同乗者の死傷含む）のみで、補償の対象は所有者本人以外に限定されています。　補償額も上限が定められており、死亡の場合3,000万円、傷害の場合120万円、後遺障害の場合、障害の等級別に4,000万円とされています。　ところが、現在、人身死亡事故における逸失利益が3,000万円を超える事例は珍しくありません。しかも、自動車同士の事故の場合、自賠責では物損部分への補償がありませんから、自腹責で払わなければなりません。　そんなわけで、ほとんどのみなさんは任意保険に加入しているのではないかと思います。しかも多くの人が、死亡事故の補償は「無制限」というのをかけていらっしゃるのではないでしょうか。　となると、そういう方にとって、自賠責保険はまったく意味がないということになってしまいます　そんなわけで、いっそのこと「自賠責で補償される金額以上の任意保険に加入している場合、自賠責の加入は免除される」と法律を改正するべきではないのか、と考えた今回のニュースでありました。

Dec 24, 2004

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スローライフはフェアライフ・その６

みなさん、こんにちは(^^)/。　今日は（たぶん）今年最後の取材に行ってきました。媒体は「小学四年生」です。　さて、そんなわけで、今日も「ありものネタ」ですみません(^^;。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・その６】　ここ数年、自転車がブームである。自動車ジャーナリストにも自転車好きは多いようだし、中にはすっかりハマってしまい、レースにまで出るようになった人もいるらしい（そういえばＦ１ドライバーの佐藤琢磨選手は、元自転車競技選手だそうだ）。　かく言う僕も、自転車は大好きだ。しかも僕の場合、最近の流行で乗り始めたのではなく、'70年代に巻き起こった「バイコロジー（バイシクル＋エコロジー）・ブーム」以来だから、筋金入りのサイクリスト（自転車乗り）である。数年前までは筑波サーキットの８時間耐久レースなどにも出場し、上位５％に入るくらいの成績を残していた。　とはいえ、僕はレースより旅の方が好きで、日本国内はもちろん、海外の長期ツーリングも２度ほど経験している。とりわけ南米のアンデス高地が大好きで、２度の海外ツーリングは、いずれもアンデス山脈を走破するものだった。　一度目は学生時代の'86年。ペルーを起点に南米最南端のフェゴ島まで行く計画を立てたのだが、寒さと水の悪さにやられ、隣のボリビアで気管支炎と肺炎と急性胃腸炎とパラチフスを併発してしまい、体重が13kgも減ってあえなく断念。10年後に「かたき討ち」と称して、その続きをやりにいったのだった。　ペルーもボリビアも貧しい国なので、道路の整備は遅れている。あえて険しいルートを選択したこともあって、全行程の８割は未舗装路で、そのうちの３割は道路ではなく「クルマが通った跡」にすぎなかった。　そんな地域を旅した経験が、今の僕の価値観を形成するのに大きな影響を与えたのである。　ペルーのアンデス山中にある標高2,400mの村、アバンカイでのできごとだ。その日はバス会社の車庫に泊めてもらうことになった。車庫と言っても、日干しレンガで囲まれた50m四方ぐらいの土地の隅の方に、トタンでふいた屋根があるだけの粗末なものだった。　日没までにはまだ時間があったので、誰かが「サッカーをやろう」と言い出した。見ると、広い敷地の両端には、サッカーのゴールが据えてある。さすがは南米である。「ホセ、ボールを取ってこい」　車庫の敷地で遊んでいた12歳ぐらいの少年に、若い男が命令した。ホセ少年が持ってきたボールには満足に空気が入っておらず、少しへこんでいた。　空気入れを持ってきて入れようとするが、うまく入らない。それもそのはずで、ボールに空気を入れるための針がないのである。「いいさ、それでやろう」　と誰かが言うと、へこんだボールでサッカーが始まった。もちろん、ホセ少年もいっしょである。　小一時間走り回り、太陽が山の端に隠れたころ、誰からともなく「終わりにしよう」と言い出した。さすがにみな、肩で息をしている。しかし笑顔が良い。満足に空気の入っていないボールひとつで、大の大人がこんな笑顔ができるものかと思う。　反面、物質的にはあきれるほど貧しい。ボールに空気を入れるための針のように、生活とは直接関係のない物などは、首都のリマまで行かないと手に入らないだろう。リマはここから1,000キロの彼方だ。（彼らが日本の豊かさを知ったら、みんな行きたがるだろうなぁ）　と、つきなみな想像をして、すぐにそれを打ち消した。　日本は確かに物質的には豊かだ。しかし彼らには、仕事を適当に切り上げ、近所の人を集めてサッカーができるほどの「豊かな時間」がある。物質的に貧しいのは、そんな時間の使い方をしても回っていく経済スケールだからであって、経済のスケールを大きくしようとすれば、その分、時間は確実に失われるはずである。彼らがどちらを選ぶかは、聞くまでもないだろう。　あるいは、こんなこともあった。　ガタガタの砂利道を自転車で走っていると、路傍に先住民のおばちゃんが腰を下ろし、編み物をしているのが目に留まった。周囲には集落はおろか、人家もない。聞けば、街に行くために、クルマが通るのを待っているのだという。「クルマはいつ通るの？」「わからない」「通らなかったら、どうするの？」「明日、また来る」「また来るって、どこから？」「あの山の向こう」「どれくらい時間がかかるの？」「２時間ぐらいかねぇ」　それでも彼らは別段、困るわけでもなく、毎日を普通に生活している。そんな時間の使い方をしても支障のない経済スケールで生きているから、何の問題も発生しないのである。　確かにアンデス先住民の暮らしは金銭的には貧しいが、それは「金銭収入」という尺度で測るから貧しく見えるだけで、日干しレンガで家を建て、アルパカの毛で服を織り、ジャガイモやトウモロコシを栽培し、自然に感謝を捧げながら、ゆったりとした時間の流れの中で暮らす彼らの伝統的な生活が、僕には貧しいとは思えなかった。　経済のスケールと自由に使える時間の積は、一定であるに違いない。彼らの笑顔と貧しい身なりを見ながら、僕はそんなことを考えた。　ボリビアでは、こんなこともあった。　首都のラパスから800kmあまり南下すると、火山灰砂漠に突入した。道路はなくなり、４輪駆動車が付けた轍だけが、ザクザクの火山灰の上に延びていた。　自転車のタイヤは火山灰に深く潜り込み、乗って走ることはできない。となれば、降りて押すしかないのだが、50kg近い荷物を積んだ自転車を火山灰の中で押すのは容易なことではない。おまけに標高は4,000m以上。酸素は平地の半分だから、10ｍも押せば息が上がる。０度近い気温の中を、風速20ｍの暴風が吹きすさぶ。　10数kmの火山灰砂漠を半日がかりで押し抜け、地面がしまってきてようやく自転車に乗れるようになったとき、「自転車に乗って走れるということは、なんて幸せなんだろう」と、腹の底から感じた。　厳しい環境に身を置けば置くほど、取るに足らないもののありがたさが身にしみるようになる。そういえば以前、サックス奏者の渡辺貞夫さんがチベット奥地を旅した直後にお話を聞く機会があったのだが、似たようなことを言っていたのを思い出した。　恐らく「幸せ」とは、そういうものなんだろうと思う。他人と比較したり、物の豊かさばかりを良しとする価値尺度で測るから「自分は不幸だ」と考えてしまいがちだが、「自分にとって、何が大切なのか、何が幸せなのか」というふうに見方を変えれば、案外、幸せは身近なところにあるものなのだ。　隣の芝生は青く見えるというが、青さを維持するために、それなりの努力（あるいは犠牲）が払われているということを忘れてはならないし、青いことのみに価値があるわけではないのである。（初出：芸文社　CAR IO 2004年２月号）

Dec 21, 2004

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スローライフはフェアライフ・その５

みなさん、こんにちは(^^)/。　年末進行も、やっと先が見えてきました。あと原稿４本、取材１本で終わる「はず」です。　さて、標題の件、つづきの「その５」です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・その５】　我が家では野菜や梅干し、味噌のほか、ヨーグルトや燻製や天然酵母パンなども作っている。いずれも、有機農法などのフェアな方法で作られた材料を使って、伝統的なスローな方法で作っているから、手間ひまはかかるが本当に美味しいものができる。　ところがその反動で、外食をしては、がっかりすることが多くなり、外食する回数そのものも減ったし、やむを得ず外食するときも、まったく期待することが無くなってしまった。　そんなある日、名前だけは知っていた全国チェーンのレストランに、初めて立ち寄った。たまたま昼時に通りかかったから「ここでいいや」と入っただけで、このときもまったく期待などはしていなかった。　ところが。　そのレストランはハンバーグの専門店なのだが、席に案内されると、テーブルの上に並べてあったのはナイフとフォークでは無く、竹製の割り箸だった。　ぼくは洋食を食べるときでも、箸を使うことが多い。フォークとナイフしか用意されていないところでも、たいてい「お箸、下さい」と頼むことにしている。　それは別に、文化的とか思想的なこだわりがあるからというわけでも何でもなく、単に箸の方が使いやすいからだ。　だいいち、前菜のサラダなんかフォークで食べた日には、最後に残ったレタスの破片を追い回しているうちに、メインディッシュが冷めてしまうではないか。　にもかかわらず、ほとんどの洋食屋は、黙っていればナイフとフォークしか持ってこない。ここはハンバーグ専門店なのに、どういうわけか箸だ。「この店は、何か違いそうだぞ」と、日本全国47都道府県すべてに足跡を残しているぼくは、直感したのである。　そしてメニューを見ると、このチェーン店では、牧草だけで育てられたニュージーランド産の牛で、しかも生産者がわかるように契約農場で育てられたもの以外は使っていないということがわかった。さらに、野菜は無・低農薬栽培のもので、コーヒーまで有機栽培のものを使うというこだわりようだ。　後にホームページを調べたところ、店舗で出た廃食油をディーゼル燃料に再生して配送車を走らせたり、天然ガス自動車を導入したりということを、１９９９年からやっているということもわかった。　いやはや驚いた。今どきの全国チェーンレストランで、ここまでフェアな食材を使っているところがあったとは。もちろん、出された料理も美味しく、感激したぼくは「外で食べなければならないときは、なるべくこのチェーンを使おう」と思ったのだった。　それから数日後、家族で外出した帰り道、どこかで夕飯を食べてから帰ろうということになった。そこで、その店の話をかみさんにしたところ、「それなら帰り道に、同じチェーンの店がある」という。ぼく以上に外食には厳しいかみさんなのだが、一度も入ったことの無いその店を、なぜか覚えていたのだ（曲がり角の目印にしていたらしい）。　店に行ってみると、駐車場はほぼ満杯。席も４～５グループが待っているという大盛況な状態だった。日曜日の夕方ということもあったのかも知れないが、外食産業の不況が取りざたされている現在、これだけ流行っているということに、正直驚いた。　ひところ、280円の牛丼や59円のハンバーガーが話題となり、大手のファミリーレストランは価格の安さを売り物にした新ブランドを立ち上げるなど、「価格が安いことこそ正義」のような風潮になったが、それらの店に、今、これほどの人が入っているだろうか。　一方、このチェーン店の料理の値段は、大手のファミリーレストランに比べると、必ずしも安いとは言えない。それでもこの盛況ぶりというのは、「価格は多少高くても、まともなものを食べたい」という人が、少なからずいるということである。　最後は自分の首を絞めることになる無意味な価格競争に走らず、フェアであることを前面に押し出したこのチェーン店「びっくりドンキー」を支持している人が多いことが、ぼくは素直に嬉しかった。　びっくりドンキー以外にも、フェアであることにこだわり続ける生産者を、ぼくはいくつか知っている（と、地道に頑張っている人を勝手に紹介したくなるのが、ぼくの悪いクセだ）。　まず、身近なところでは、狭山茶の黒田園。微生物による発酵肥料を使った有機栽培のお茶は、甘味があって本当にうまい。しかも、１００ｇ５００円の安いグレードでも、並みの茶園の１５００円クラスの味がするのだ。　ちなみにぼくは、生まれも育ちも茶どころ狭山で、煎茶に関しては舌が肥えている。同じく狭山生まれの母に、何も言わずに飲ませたら、「あら、いいお茶、飲んでるのね」と驚かれ、５００円だと言ったらまた驚かれた。それほどうまいのである。　そんな緑茶党のぼくを驚かせた紅茶が、島根県にある西製茶所の紅茶だ。壊滅状態にある国産紅茶を、今もなお守り続けている茶園である。無農薬・国産茶葉にこだわったその紅茶は、渋味が少なくまろやかな甘さを持っており、ストレートで飲まずにはいられない。砂糖やレモンなどもはもちろん、ミルクを入れるなど持ってのほかというくらい、素のままで美味しいのである。　お茶と言ったら緑茶を指すような土地柄で育ったぼくは、「アールグレイだのダージリンだの言っても、妙な渋味があってそのまま飲む気にゃならねぇよ」などと思っていたのだが、西製茶所の紅茶だけは別。緑茶を飲むときと同様に、ていねいに入れてストレートで飲んでいる。　もうひとつ、忘れてならないのは、山形の酒井ワイナリー。このワインを知ったのは、まったくの偶然で、旅行雑誌の取材の時にたまたま入ったレストランで、特に期待もせずに「地元のワイン」というだけで頼んだのだが、一口飲んで、その美味しさに驚いた。　そして翌朝、次の取材先に向かう途中で、またしても偶然、そのワイナリーの前を通りかかり、「ちょっと寄っていこうよ」となって、ついでに取材までさせてもらったのである。　同社は明治25年の創業で、当時の製法を今も守り続け、地元赤湯産のぶどうだけで作っている。量が作れないから宣伝も行わず、地元に卸す以外は、知っている人が通信販売で買っている程度だという。　ところが味は一級品で、田崎真也をして「ぼくももっと日本のワインを勉強しなければ」と言わしめたというのだ。　ことほど左様に、正しいことをやっていれば良いものが作れるし、少しぐらい値段が高くても、支持してくれる人は必ずいる。だから時代の流行や目先の売り上げに捕らわれず、フェアであり続けようとする生産者が一人でも多くなってくれればと思うし、それを支持する消費者が一人でも増えてくれれば、と思うのである。（初出：芸文社CAR IO 2004年１月号）

Dec 20, 2004

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メルセデスの試乗会に行ってきた。

みなさん、こんにちは(^^)/。　2004年の「メルセデス・フルライン試乗会」に行ってきました。場所は宮崎県の元シーガイア、今シェラトングランデ・オーシャンリゾートでした。　フルラインと言っても、時間の都合で乗れるのは４台まで。しかも、あちらがパッケージで組みあわせた４台を抽選で引く方式だったので、乗れたのはビアノ・E320ワゴン4マチック・Smart forfour1.3・C230Kアヴァンギャルドの４台だけでした。　インプレッションは面倒なので省略しますが(^^;、やっぱ高速性能はケタ違いですね。185万円で買える1.3Lのスマートでさえ、速度感が国産車の半分ですよ（120km/hでも60km/hぐらいにしか感じない）。　で、試乗会より面白かった話題を２題ほど。　ひとつは、最高級サルーン「マイバッハ」のお話です。　車両本体価格が５千万円を超えるマイバッハですが、'04年だけで50台売れたとのこと。オーナーの年収の内訳は、10億円以上が30％、10億円未満2億円以上が30％とのこと。つまり、60％の人は、年収２億円以上ということです。　５千万円といえば、消費税だけでウチのクルマが買えちゃいます（お釣りが来る）。しかも年収が、サラリーマンの平均生涯賃金と同じとは(^^;。あまりに世界が違いすぎて、頭が真っ白になっちゃいまいたよ。　もうひとつは、F1コンストラクターのマクラーレンと共同開発したSLRの現物を見せてもらったことです。さすがに試乗はさせてくれませんでしたが（ナンバーが付いていなかった）、これもケタ違いに凄いクルマでした。　なにしろパワーが626馬力、トルクが79.5kg-mですから、20年前のF1がそのまま公道を走っているようなものだし、トルクなんて10トントラック並ですよ(^^;。ちなみに最高速度は340km/hは出るそうです。価格も超弩級の5,775万円。　エンジニアリング的には、熱害対策に苦労しているのが興味深かったのと、エア・アウトレットの位置が、並の速度では正圧になるところに開けてあった（たぶん250km/h以上になれば負圧になるからちゃんと機能する）のが興味深かったですね。　で、もっと驚いたのは、こんなクルマでも、ちゃんと「メルセデス・ケア」の対象になっているということです。すなわち、普通の人が日常的に使っても大丈夫な耐久性が保証されているってことですね。

Dec 17, 2004

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スローライフはフェアライフ・その４

みなさん、こんにちは(^^)/。　今日は安藤が理事を務める日本自動車研究者ジャーナリスト会議の主催する2005RJCカーオブザイヤーの表彰式に行ってきました……ていうか、司会をやらされたんですけど(^^;。（結果等はhttp://www.rjc.or.jp/参照下さい）　さて、今回もまた「ありものネタ」で申し訳ありませんが、標題の記事をお送りいたします。　今回も季節感バリバリだぁ(^^;。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・その４】　実りの秋の到来である。と書いてはみたものの、実際に畑をやってみると、そこそこ１年中、何がしかが実っているので、「秋だから収穫」というのはあまり実感が湧かない。あれはやはり、稲作を中心に考えられた言葉なのだろう。　そうは言っても、畑をやっていると人一倍、季節を感じることができる。特に春と秋は収穫が多いだけでなく、種まきの季節でもあるのだ。　種まきをするには、まず撒き床を作らなければならない。うちは基本的に放任栽培だから、前に植えた作物の収穫期が終わるころには、畑は草ぼうぼうになっている。そこで、次の作物のために撒き床を作るには、草刈りと抜根から始めることになる。　作物を植えていない庭も雑草だらけで、雨が降ると一晩で驚くほどの成長を見せる。そこで引っ越してきた１年目は、庭も畑もせっせと草刈りをしていたのだが、あることに気づいてからは、草刈りはほどほどで止めにするようになった。　今回は、その「あること」のお話である。　１年目は、放任栽培の実験という意味合いもあって、「完全放任の畑」と「まめに草取りをする畑」に分けて作物を作ってみた。完全放任の畑は撒き床さえ作らず、雑草の間に穴を掘って種を蒔いただけにした。　その年の夏は、暑くて雨が少なく、人為的に水撒きをする必要があったのだが、ふと、両方の畑に明確な違いがあることに気がついた。まめに草取りをした畑の土はカラカラに乾燥してしまうのだが、雑草が生えたままにしておいた畑の土は、ちょっとやそっとの日照りでは乾かないのである。　理由は簡単で、まめに草取りをした畑は土が直射日光にさらされるが、放任畑は雑草が日陰を作ってくれるため、地面まで直射日光が届きにくく、水分が蒸発しにくいのである。さらに、葉にたまった朝露が地面に落ちるため、雨が降らなくても、そこそこの水分が供給されているのだった。　しかし一方で、放任畑では作物が雑草に負けてしまい、実がつかないどころか途中で枯れてしまうものさえあった。そのかわり、雑草に打ち勝って実を付けた作物の味は格別なのだが、収穫量の点では問題がある。やはり「ヨーイドン」の段階で、すでに生えている雑草と、これから発芽する作物を競争させること自体に無理があるのだ。　そこで「放任栽培」と言っても、作物の種類によってはきちんと撒き床を作り、ある程度、作物に勢いが出てくるまでは、適度に草取りをするというスタイルで行くことにした。しっかりと茎が伸びてしまえば、作物も案外、雑草に負けずに育つのである。　しかも雑草が生えているから、クモやカマキリやトカゲが住み着き、害虫の被害もそれほど大きくならない。種を蒔いた直後も、あまりきれいに撒き床を作るとたちどころに鳥にバレてしまうが、草の間に適当に撒いた種は、まず鳥につつかれることはない。発芽直後も同様で、雑草にはカモフラージュ効果があることもわかった。　一方、玄関のまわりや前庭は、さすがに草ぼうぼうにしておくわけにも行かず、余り伸びすぎないうちに、できるだけきれいに刈るようにしていたのだが、ここでもまた２つほど発見があった。　草を刈っていると、草の間からは作物につく害虫がけっこう出てくる。それを見て「こいつらが作物をかじるんだな」と思った次の瞬間、もっと大事なことに気がついた。僕がこうして草刈りをして、彼らの生息場所を奪ってしまったら、彼らは何処に向かうのか？　ということだ。　言うまでもなく、畑である。　一見、雑草の中で害虫が繁殖し、それが作物を食い荒らすように思えてしまうが、実は彼らの住み処はもともと雑草の中で、そこを刈ってしまうから、エサのあるところに移動しているという側面もあったのである。　もうひとつの発見は、今を時めく「植物によるヒートアイランド現象防止効果」である。　ある夏の暑い日、１時間ほどかけて前庭の草をきれいに刈り取り、シャワーを浴びて居間に入った。すると、居間が異様に暑いのである。しかも、いつもより部屋の中が明るいような気もする。　ふと、縁側ごしに庭を見て、その理由がわかった。草をきれいに刈った庭の土は、あっという間に白っぽく乾き、太陽の光が強烈な照り返しとなって、部屋の中に入ってくるようになっていたのだった。　無駄だと思っていた庭の雑草にも、ちゃんと生活を快適にする働きがあったことを、僕はこのとき知ったのである。以来、玄関前はともかく、前庭の草刈りはテキトーに……、あ、いや、適当なレベルで止めにするようになったのであった。　やがて秋が訪れ、冬が始まると、雑草の効用は夏ばかりではないことに気づいた。　うちの庭には、野生のニラがそこいら中に生えており、春から秋にかけては、野生ならではの香りの強いニラが食べ放題だ。だから草刈りをするときも、ニラは残して周囲の草だけを刈るようにしていた。　しかしさすがのニラも、霜に当たると葉先が茶色くなってしまうので、冬の間は食べられないものだと思っていたのだが、ある晩秋の寒い日、「今シーズン最後」と思って庭の草刈りをしていたところ、雑草の間から青々としたニラが現れた。雑草が霜よけとなり、ニラの葉っぱを守ってくれていたのだ。　それ以来、冬でも、ギョウザの材料に、チゲの薬味にと、庭のニラは大活躍はするようになったのであった。　また、庭の端の方にはフキや三つ葉も生えている。フキは毎年、春先のフキノトウをフキ味噌や天ぷらにして楽しんでいるし、冬でも枯れない三つ葉は、正月の雑煮を飾ってくれる。　こいつらはたまたま、人間が食べて「美味しい」と感じるから、名前と個体が認識されているだけで、野原に勝手に生えているという点では、他の雑草と変わりはない。そう考えれば、草餅を作るヨモギもそうだし、七草がゆの七草だって、蕪（すずな）と大根（すずしろ）以外は、みな「雑草」である。　そもそも作物にしたって、野生種の品種改良を繰り返して作ったものなのである。雑草から完全に隔離してしまえば、自分の力だけでは育つことができなくなって当然である。　今は亡き、さる高貴なお方が、生前「雑草という名の植物はない」と言っておられたという。下々の僕にとっては、食べられる山野草以外は、やはり雑草に過ぎないが、それがどれほど大事な働きをしているのかということを、草刈りを通じて学んだのであった。（初出：芸文社CAR IO 2003年12月号）

Dec 15, 2004

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「当選サギ」にご注意を！

みなさん、こんにちは(^^)/。　BE-PALのロケで九十九里に行っておりました。　で、帰ってきてメールを開けたら、こんなのが入っていました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・>御当選通知　三協精機（株）よりお知らせ>>この度は、テブラコール推進キャンペーンご応募有難う御座>いました。>約４２万通の多数のご応募の中から厳正なる抽選の結果、>ホンダ・ステップワゴン（ハッピーエディションG－2.0 FF)>御当選されましたのでご連絡させていただきます。>後程、当社担当よりご連絡を差し上げますので>>下記URLよりお手続き下さい。>>http://www.formzu.com/formgen.cgi?ID=8465565>>この度は誠におめでとうございました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　はて、こんなキャンペーンに応募した覚えもないし、何だろうなぁと思って、「三協精機株式会社」で検索をかけてみました。そしたら、出てきたのは「株式会社三協精機製作所」という会社だけ。しかも、その会社のサイトのトップページに、ごていねいに「注意！：『御当選通知　三協精機（株）からのお知らせ』と称したメールが出回っておりますが、当社とは一切関係がございませんのでご案内いたします。」ってあるじゃありませんか(^^;。　それとは別に「テブラコール推進キャンペーン」でも検索してみましたが、こちらもヒットなし。キャンペーンやってて検索エンジンにヒットしないなんて、ありえませんよね。　だいいち件のメールにしても、発信者名も部署も書いていないし、連絡先も書いてありません。どう見たって怪しいメールにしか見えないでしょう。　恐らく指定のサイトに「手続き」をしにいくと、個人情報を書かされるか、「登録に○万円必要ですので、この口座にお振り込み下さい」とか誘導されてお金をだまし取られるのが関の山でしょう。　みなさんも引っかからないよう、注意して下さいね。

Dec 14, 2004

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スローライフはフェアライフ・その３

みなさん、こんにちは(^^)/。　今日はせっかく天気が良かったのに、原稿書きと来週からのロケ先探しで忙殺されてしまいました。というわけで、また標題のシリーズです(^^;。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・その３】　ぼくがスローな生活を実践している理由は、フェアでありたいと思う以外に、もうひとつあって、こちらは極めて利己的な理由だ。　例えば、ぼくの家は最寄りの駅まで2.3kmほど離れている。途中、小さな山をひとつ越えるので、歩くのが速いぼくでも25分くらいかかるのだが、駅までの往復は、なるべく歩くことにしている。　こんな短距離にクルマを使ったのでは、排ガス触媒が満足に暖まらないうちに走行を終えるため、毒ガス垂れ流しになってしまうし、クルマの耐久性にも良くないから……というのも一面の真理である。が、それ以上に、ぼくは人間が本来持っている「歩く」という能力を衰えさせたくないのである。　だから都心に出ても、地下鉄の乗り換えが面倒なときは「えい、歩いちまえ」となる。あるとき、たまたま打ち合わせの間に時間があったので、渋谷から新橋まで歩いたときは、さすがに呆れられてしまったが。　庭でやっている農作業にしても、草刈りに使うのは鎌一本。土起こしに使うのは馬鍬（うまぐわ）一本で、草刈り機や耕耘機は使わない。あまり道具を増やしたくないというのも理由の一つだが、これも「なるべく体を使って、身体能力が衰えないようにしておきたい」という理由が大きい。　人間が持っている動物としての能力を、ぼくはなるべく失いたくないし、楽をすることによってそれを失ってしまった人間を、ぼくは幸せとは思わない。逆に、体や感覚が鍛えられ、自分の能力が高まって行くことのほうが幸せだし、大切なことではないかと思うのだ。　実はそういう想いをよりいっそう強くするできごとが、この原稿を書いている最中に起こった。妻が出産したのである。　38歳の初産にもかかわらず、本格的に分娩体制に入ってから出産までの所要時間はわずか28分。助産婦さんも驚く超安産だった。そしてその安産の理由が、人間が本来持っている「動物としての能力」を磨いた結果だったのである。　ぼくたちは病院での出産ではなく、助産院での出産にこだわった（自宅出産が理想だったのだが、室内犬３匹がいるため断念）。理由は、病院出産における医療の過剰な介入に疑問を持ったからである。　病院でするお産のほとんどは、出産の日時が管理され、予定通りに進まなければ陣痛促進剤が使用され、会陰切開（膣口と肛門の間を切開し、赤ちゃんを出やすくする施術）が行われる。出産前には剃毛や浣腸をされて、尿管にはカテーテルを入れられ、口には酸素マスクが当てられる。　しかしそうした医療行為は、本当に必要なのだろうか。そんなことをしなければ出産できないのだとすれば、人間はとっくに種として滅んでいるはずではないか。　出産は病気ではない。ならば本来、医療行為とは無縁のはずだ。だいいち分娩台というシロモノは、医者が処置をしやすいことだけを考えて作られたものではないのか。重力は上から下へかかるのに、なぜ足を高く上げて下から上に出産しなければならないのか。　そういう考えに至ったのは、大野明子著、『分娩台よ、さようなら（メディカ出版）』という本に出会ったからだ。著者は、自らの病院での出産体験から病院での出産に疑問を感じ、妊婦にとって望ましいお産とは何かを求めて、自らが産婦人科医になってしまった人だ。そしてその本には、ぼくたちの疑問に対する回答が、余すことなく記述されていた。まさに目からウロコ、口からタラコである。　詳しい内容は本を読んでいただくとして、医療行為の介入するお産が一般的になったのは、ベビーブーム以降からであり、たくさんの出産を効率的にこなすには、予定通り出産させるように陣痛促進剤が使われ、体の準備ができていないのに薬で無理やり押しだされるから会陰裂傷が起こり、それを防ぐために事前に会陰切開を行い、細菌に感染しないように剃毛や浣腸が行われる。すべては「計画通りのスピード出産」のためである。　しかし一方で、妊婦の側が原因を作ったという側面もあるらしい。　従来、「妊婦は安静に」とか「２人分食べろ」などと言われていたが、安静にして２人分食べていれば、妊婦は太り、胎児は肥大する。脂肪がついて狭くなった産道に大きすぎる胎児では、難産になってあたりまえである。しかも安静にばかりしていて、足腰の筋肉や子宮の毛細血管が発達していないから、出産に臨んでも子宮口や産道が柔らかくならず、それも難産の原因になっているらしい。　「安静に」も「食べろ」も、かつてはそれなりの理由があった。妊婦と言えども激しい農作業や家事労働をしなければ暮らしていけなかった時代、過労による流産が多かったのだという。さらに、普段の食事が質素だから、妊娠中ぐらい栄養価の高いものを食べておかないと、胎児も虚弱になるし、体が出産に耐えられなかったからだ。　それを現代の生活に当てはめてしまったから、逆に難産が増え、医療の介入が必要になってしまったのであり、本当に医療行為が必要な出産は、本来なら全体の10％程度であるという。　医療にたよらず安産をする秘訣は、良く歩き、食べ過ぎないことなのだと、大野さんは説く。そこでぼくたちは、さっそくそれを実践した。「食べ過ぎない」に関しては、普段から玄米食に質素なおかずなので問題ないし、「よく歩く」に関しても、都合の良いことに駅や商店街が遠い。しかも二人とも山登りが好きなので、「安産のため」を理由に、以前にも増して山登りに出かけるようになり、妊娠32週目には、標高2,402mの縞枯山（八ケ岳）にまで登ってしまった。　こうして、人間が人間たる所以の二足歩行能力の向上に努めた結果、検診の度に「理想的な状態」とお墨付きをもらい、整体に行けば「これは絶対に安産だから、もう来なくていい」とのお墨付きをもらい、臨月になるころには、お墨付きだらけで真っ黒になってしまったのである（ウソ）。　実際の出産も、予定日より11日も早く、満月に引かれるようにして生まれてきた（自然分娩では、満月や新月の日には出産が増えるらしい）。しかも自然に任せたスローな出産を選んだはずなのに、前記の通りのスピード出産だった。医療の介入に頼らずとも、あるべき姿であろうと努力するだけで、動物として当たり前のお産ができるのである。　種の保存は動物の本能的行為であり、動物が本来持っている能力に支えられているはずだ。それを失ったとき、その動物は絶滅に向かうのだろう。そんなことを考えた２００３年の夏である。（初出：芸文社「CAR IO」2003年11月号）

Dec 11, 2004

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スローライフはフェアライフ・その２

みなさん、こんにちは(^^)/。　今日は日産の試乗会の後、マツダの来年出るニューモデルの内見会に行ってきました。どっちも渋滞が多い場所だったので、クルマで行きたくなかったのですが、会場が駅から遠いもんで、電車＋折畳み自転車で行ってきました(*^^*)。　さて、標題の件、昨日に引き続いて２本目です。何とも季節外れで恐縮ですが、今年は冬でも暖かいから、まあいいか(^^;。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・２】　夏、真っ盛りの８月。夏バテなどしている人はいないだろうか？　夏バテの疲労回復には梅干しが良い。クエン酸の疲労回復効果と酸っぱい味の食欲増進効果で、軽い夏バテなど吹き飛んでしまう。　実は僕の相棒の実家が最高級梅干し「南高梅」で有名な和歌山県南部町の隣、田辺市にある。田辺市も梅の生育環境は抜群で、実家の周囲もほとんどが梅農家である。実家の庭にも12本の梅の木があって、剪定の時期と実がなる時期には面倒を見に帰っている。　今年も６月上旬、梅もぎに帰ったのだが、今回はそのときのお話である。　飯能の自宅から田辺までは、約700km。この距離を、僕はいつも無給油で走る。僕が今、乗っているエクストレイルのガソリンタンク容量は60Ｌあるから、リッター13kmで走らすことができれば、無給油で走れる計算だ（50l消費時に警告灯が点くので、ガス欠の心配をせずに走らせるにはこれくらい必要。実際は12.5km/lで走れば足りる）。　このクルマは幸い燃費が良く、市街地でも12km/lは確実に走ってくれる。だから高速道路中心の移動ならば、ちょっと気をつければ13km/lは出せるのである。　ポイントは、スピードを出さないことだ。空気抵抗は速度の２乗で大きくなるから、スピードを出せば燃費は加速度的に悪化していく。特にＳＵＶは、乗用車に比べて空気抵抗係数（Cd値）も良くないし、前面投影面積（クルマを輪切りにしたときに最大になる部分の面積で、真の空気抵抗はCd値×前面投影面積で決まる）も大きいので、スピードの出し過ぎはてきめんに燃費に響くのである。　そんなわけで、僕は普段から高速道路は90km/hを目安に走っており、和歌山に帰るときは、80km/h制限のところは制限速度をきっちり守って走るようにしている。あとはタイヤの空気圧を５％ほど高くしておけば、13km/lは現実のものとなるのだ。　高速道路を制限速度で走ることは、実情からするとスローではあるが、フェアでもあるしエコロジーでもある。途中給油せずに走れれば、高速道路の高いガソリンを入れずに済み、エコノミーでもある。　千景ちゃん（国土交通大臣）などは「日本の高速道路は120km/hで走れるように設計されているのだから、制限速度も120km/hにするべきだ」などとのたまっているが、これでは地球温暖化防止条約に逆行する。速く移動したければ、新幹線や飛行機を利用すれば良いわけで、クルマには「パーソナルで自由な移動」という独自性があるのだから、移動速度ぐらい我慢しても良いではないか。　さて、和歌山の梅である。うちの梅は、冬場に枝の剪定をする以外、基本的にほったらかし。無農薬・無肥料・無責任栽培である。　だからたいして良い実もならないし、なってもみんな虫にやられてしまう……かといえば、ぜんぜんそんなことはない。うちの梅は南高梅ではなく古城という種類だが、南高梅に負けない立派な実を、毎年たくさんつける。虫の被害は皆無とはいかないが、カメムシの吸い跡がぽつんと付く程度で、梅干しや梅酒を作るぶんには何の支障もない。おかげで毎年、６月が近づくと「今年は○kg頼むね」というメールがあちこちから入ってくる。　一方、まわりの梅農家はというと、雑草対策に除草剤を撒き、害虫対策に殺虫剤を撒き、黒星病対策に抗生物質を撒くのである。　これらの農薬を撒く理由は「雑草は害虫の温床になる」とか「梅が養水分を奪われる」とか「収穫しやすいように」などの理由からだが、うちの梅を見ているかぎり、手間と費用に見合うだけの効果があるかといえば、甚だ疑問なのである。　確かにうちの梅畑にはカメムシが発生するし、黒星病も多少は出る。しかし農薬を撒かないから、カメムシを捕食するクモやカマキリもたくさんいて、結果的にそれほど大きな被害にはならない。被害が出た実は、梅の木の根元に投げておけば肥料の代わりになるから、ある程度は必要でさえあるのだ。　逆に、周囲の農家の梅は、除草剤を撒くことによって梅の根が弱り、木の元気がなくなって黒星病に感染しやすくなるため、抗生物質の散布が必要になっているようにさえ思える。カメムシはそこいらの野原でも繁殖できるから、梅林の殺虫剤の効果が切れたころを見計らって外から飛んできて、天敵のいない梅林では梅食い放題となってしまい、結果として定期的に農薬を撒く必要が出てきているようにも思えるのだ。　こんなことを書くと「おまえはそれで生計を立てていないから、そんなことが言えるのだ」と批判されてしまいそうだが、まったく農薬を使わないことによる収穫の減少額と、農協の指導どうりに農薬を使った場合の農薬代＋人件費を、きちんと比較したことのある人はいるのだろうか。　実際、和歌山全体が「今年は不作」と言われる中、うちの梅は確かに例年より数こそ少ないものの、大粒の実が揃っていて、昨年以上の収穫があったのだ。　そんなわけで、今年も大勢の人に喜ばれ、うちでも１年分の梅干しを漬けることができた。　梅干しも自分で漬けてみると、スローフードであることがわかる。６月上旬に収穫して漬け込み、梅雨明けと同時に天日干しを行う。ひとつひとつザルに並べて、途中でひっくり返すという作業を３日間、繰り返す。２日目までは、日没とともに取り込み、３日目は取り込まずに夜露に当てると、柔らかくて美味しい梅干しができる。時間も手間も、けっこうかかる作業だ。　この作業は「土用干し」と言って、一年で最も暑く、天候が安定して夕立も起きにくい土用に行うのが良いとされている。日差しが強く暑い時期ほど、良い梅干しができるのだ。　夏の暑さは身に堪えるが、夏は伊達や酔狂で暑いのではなく、暑かったほうが都合の良いこともあるということ、人は古来から、それを巧みに利用してきたことを、僕は梅干し作りを通じて知ったのだった。　と、ここまで書いて気がついた。夏が暑いのも、暑いと夏バテするのも、夏バテに梅干しが効くのも、すべては梅干しの陰謀だったのである。（初出：芸文社「CAR IO」2003年10月号）

Dec 10, 2004

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スローライフはフェアライフ・その１

みなさん、こんにちは(^^)/。　いやー、忙しくて何も書かずにすみません(^^;。　来週末までバタバタなんですけど、放っておくのも忍びないので、過去、雑誌に書いた記事からエッセイを掲載しておきます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【スローライフはフェアライフ・１】　それはまだ僕が、自動車会社の開発職として働いていたときのことだ。夏の短期休暇の直前に北海道試験場への出張を設定することに成功した僕は、予定していた仕事を終えると、その足で利尻島へと向かった。利尻島は、日本最北端の市・稚内からフェリーで１時間半ほど西へ行った日本海上にある。島全体が利尻山という火山で、海から円すい形にそそり立ち、1,721mの頂上が空に突き上げている。その姿から「利尻富士」とも呼ばれており、今回の目的の一つは、この山に登ることだった。　自動車会社で仕事をしていたとはいえ、僕の趣味はもっぱらアウトドア。中学生時代時に始めたサイクリングを皮切りに、大学に入ると山登り、卒業した後は、沢登りやフリークライミングまでするようになった（どうやら高いところが好きらしい）。大学生時代、日本全国を自転車で旅しているうちに、自転車に乗ったままでは行けない「その先」にまで行ってみたくなり、歩いて山に登るようになったのだった。　利尻山は学生時代に行きそびれた山のひとつであり、いつか北海道の出張にかこつけて登りに行こうと狙っていた。しかし北海道の出張は、たいてい寒冷地試験であり、最も寒い2月に、最も寒い道東でのテストトリップばかりで、とても山に登るどころではなかったのだ。　今回はようやく、まんまと会社の飛行機代を使って利尻島へと上陸したのだが、今回この話を書き始めたのは、登山日記を書くのが目的ではなく、ましてや登山中に知りあった女子大生グループと礼文島で偶然再開し、その後キャンプ場で何があったかを自慢するためでもないので、話はいきなり下山中へと飛ぶのであった。　登ったルートとは別のルートを下山すると、３合目からは舗装された車道となっていた。ふもとの沓形（くつがた）まで、約７km。１時間半程度かかる距離だ。山道なら何km歩いても苦にならない僕だが（いや、最近はそうでもないか）、舗装路の歩きは正直言って苦痛だ。そこで、クルマが通ったらヒッチハイクでもと目論んだのだが、利尻島の、しかも行き止まりの山道にクルマなど走っているわけがない。何しろ、行き止まりの道の終点にクルマが無いことを確認してから下り始めているのだから、後ろからクルマが来ることは絶対に無いのであった。　そんなわけで、延々と続く舗装路をひたすら歩いて下山することになったのだが、退屈な舗装歩きをしていると、「自転車なら漕がなくても進むのになぁ」、「クルマなら10分だなぁ」などと考え始める。問題はその先だ。　歩けば１時間半かかる道のりを、クルマならたったの10分。クルマって便利だよなぁ。それを発明した人間て素晴らしいなぁ。文明って、なんて素敵！……とは、僕は思わなかったのである。　それじゃ、何を考えたのかというと、「それって『反則』なんじゃないか？」　ということだった。　人間が動物として持っている移動能力は、本来この程度しかない。しかし、石油エネルギーを利用することによって、行動範囲や生活圏を飛躍的に広げている。自然エネルギー以外を利用していない他の動物に言わせると、それは『反則』に見えるはずなのだ。そんな考えに至った背景には、山登りの世界の影響が少なからずある。　登山家の間には、By Fair Meansという言葉がある。「フェアな方法で」という意味だ。かつては、岩にハーケンを連打して、そこに足場となるロープをかけて登る「人工登攀」という登り方が主流だったが、1980年代になると「そんな土木工事のような登り方なら誰だって登れる。人間の持っている身体能力だけで登ってこそフェアではないか」と言う考え方から、ロープは万一墜落したときの命綱としてしか使わず、前進するためには手足以外、使ってはいけないフリークライミングが生まれた。　8,000m級の高所登山でも「酸素を使えば誰だって登れる。無酸素で登ってこそフェアではないか」と考える人も少なくない。現代登山の世界では、「フェアであること」は重要な哲学なのである。　振り返って現代人は、人間以外の生き物と生存競争をするにあたって、フェアな戦いをしているだろうか。そう考えると、数えきれないほどの反則をしていることに気づかされる。自然界に存在しないエネルギーや合成化学物質を作り出すことは、人間以外の競争相手から見れば、すべて『反則』であるはずなのだ。　しかし現代人はもはや、そうした反則技なしには生きていけなくなってしまっている。クルマを全面否定しようとは思わないし、原始時代のような生活に戻ることが良いことだとは思わない。だけどせめて、反則技は反則と認識し、なるべくそれに頼ることのない生活を、許容できる範囲でして行くべきではないか。と、退屈な舗装道路を歩きながら、僕は考えたのだった。　北海道から帰った後、最初に実践したのが、食べ物をなるべく、フェアな方法で作られたものに変えることだった。農薬や化学肥料を多用して工業製品のように作られた農作物より、無農薬・有機栽培のものを。石油エネルギーを消費して運ばれてくる外国産よりも国内産を。遠方のものより近県のものを。ハウス栽培より露地物を。　そのうち自分で作ってみたくなり、一昨年に埼玉の山の中に引っ越して、敷地に付いてきた小さな野原を開墾して、10坪ほどの畑を開いた。今や、作物の育ち具合を見て回るのが、毎朝の楽しみとなっている。　草ぼうぼうの野原を開墾して始めた農作業から、僕はいろいろなことを教わった。具体的には追々、このページで紹介して行こうと思っている。　僕のような生き方を、最近では「スローライフ」と言うらしい。しかし僕の場合、「フェアな方法で」という登山の哲学から出発しており、スローであること自体は、特に意識して始めたわけではなかった。　フェアな方法というのは、おしなべて手間と時間がかかり、結果的にスローな生き方になるのである。（初出：芸文社「Car IO」2003年９月号　「フェアライフ『試験』」をベースに、読みやすくなるよう再推敲）

Dec 9, 2004

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道路公団、ETCカードの発行へ動く

みなさん、こんにちは(^^)/。　今日は箱根でシトロエンＣ５の試乗会がありました。かつて某社でハイドロ・ニューマチックサスの開発を担当していた安藤にとって、シトロエンは一度は所有してみたいクルマの１台なんですよね。　さて、標題の件です。　今年９月２４日づけプレスリリースの別添資料「ETCによる料金割引の実施に向けた必要措置」の中に、以下のような文章がありました。１．ＪＨによるETCカードの発行　クレジットカードをご利用いただけないお客様にもETCをご利用いただけるようＪＨ発行のETCカードを遅くとも民営化までに発行できるよう検討します。　具体的には、一定額の保証金を事前にお支払いいただいたうえでご通行いただいた料金をお客様の銀行口座から引き落とすなどの保証金（デポジット）方式を検討します。（以下略）　ぼくが中村敦夫元参議院議員に提出してもらった質問趣意書での効果が出たようですね(*^^*)。　以前、質問趣意書で「ETCに特化した割引は、カード会社の審査を通ったものしか享受できず、公共料金に差別が生じる。これは憲法１４条『法の下の平等』に違反する」とやったんです。　これに対する回答は、概略「ETCという便利で役に立つ機器を普及させるためなら、この程度の差別は憲法違反にならない」というものでした。だったらＪＨ発行のETCカードなど作る必要は無いはずです。　現実問題として、クレジットカードが利用できない人は、ごく少数でしょう。ならば、費用対効果を考えれば、新たなシステムを組むなんて割に合わないわけで、にもかかわらず「やる」ということは、もし訴訟を起こされたら憲法違反という判決が出る可能性があることを、道路公団が認めたという証拠です。　で、このカード、カードだけで手に入るようになるのかと言えば、何が何でもETCを普及させたい国交省ですから、やっぱり車載機番号が無いと手に入れることはできないようにするんでしょうね。　……と思って、「別添資料」のその下を見たら、２輪車用ETCカードについて、以下のように書かれていました。２．二輪車のお客様への対応　（前略）　なお、（二輪車等ETCの）導入までに時間を要する場合には、遅くとも民営化までには、JHによるETCカードを用いて、マイレージの割引が適用できるよう対応を進めます。　ということは、二輪車ユーザーには、車載機が無くてもETCカードが発行されるということですね。ならばこのカードを使って、クルマで有人ゲートを通ればマイレージが適用されなければおかしいはずです。が、そうしないための屁理屈は、きっと既に用意されていることでしょう。　それにしても、このシステムを作るのに、いったいいくらかかるんでしょうね。質問趣意書の絶好のネタなんですけど、敦夫さんの落選は痛かったよなぁ(^^;。

Dec 2, 2004

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