ガソリン高騰時代を乗りきる切り札は、実はハイオクガソリンだった!?
みなさん、こんにちは(^^)/。 今月は、やや下がり気味だったとはいえ、相変わらずガソリンが高いですよね。巷では省燃費グッズも人気とのことですが、実はハイオクタン・ガソリンも、そのひとつなんです。 ちょっと機械に詳しい人なら、ガソリンエンジンは点火プラグで火花を飛ばすことによって燃焼を起こすことを知っていると思いますが、燃費やパワーを左右する大きな要素が、この火花を飛ばすタイミングなんですね。 火花を飛ばしてから、着火して炎が燃え広がり、最大圧力に達するまでには、短いとはいえ時間がかかります。その間にエンジンは回っていくわけですが、効率良くエネルギーを取り出すためには、最大圧力に達したときに、クランクの角度がある一定の位置にある必要があります。火花を飛ばすタイミングは、その角度から逆算すれば求められますが、実際にそのタイミングで火花を飛ばすことが出きるかといえば、そうはいかないんですね。 大きな理由は「ノッキング」という異常燃焼で、点火プラグで火花を飛ばし、シリンダー内圧力が上がってくると、同時に雰囲気温度も高くなっていき、ガソリンが自己着火して勝手に燃えはじめてしまうんです。すると何が困るのかというと、この燃焼は速度が異常に速く、音速に達して衝撃波を生じることもあるため、燃焼室壁にぶつかって温度境界層を破壊してしまうんです……というと非常に難しいので簡単に言いますと、シリンダー壁の油膜を破って摩耗を進めたり、場合によってはピストンや排気バルブを溶かして、エンジンを壊してしまうんです。 そこでどんなことが行われているのかというと、圧縮時に温度が上がりすぎないように圧縮比を下げたり、プラグに火花を飛ばすタイミングを理想より遅めに設定して、燃焼温度が高くなりすぎるのを抑えているわけなんですが、そうすると当然、燃費は悪くなるわけです。 そこで最近では、「ノックセンサー」というノッキング特有の音を感知するセンサーをシリンダーブロックに付けて、点火時期をできるだけ早く設定しつつ、ノック音を感知したら点火タイミングを遅らせてノッキングを回避するということが行われているのです。 こうしてノッキング限界ギリギリを使う制御を行えば、エンジンを壊すことなく燃費も稼げてパワーも出るという寸法なのですが、特に最近はトランスミッションとの統合制御が進んでおりまして、ギヤ選択とスロットル開度、点火時期などを、ノッキング限界を探りながら最も効率の良い状況に制御できるようになっているんです(CVT車は特に顕著ですね)。 それとハイオクとどう関係があるのかというと、ハイオクタン・ガソリンというのは、レギュラーガソリンと較べてノッキング限界の指標となるオクタン価が高くなるように作られているんです。すなわち、レギュラーガソリンよりもノッキングしにくい燃料が、ハイオクガソリンなんですね。 ノッキングしにくいということは、それだけ圧縮圧力(圧縮比)を高めたり、点火タイミングを理想時期に近づけることができます。すなわち、熱効率が高まって、燃費も稼げてパワーも出るということなんです。 実際にどの程度、違うのかというと、僕の経験では10%は確実に違います。かつて自分のクルマやバイクにハイオクガソリンを入れて、ノッキング限界までイニシャルの点火時期を進めて燃費計測をしたことがあるのですが、そのときにおおむね10%程度の優位性が見られたのです。 一方、現在のハイオクとレギュラーの価格差は8.5%ぐらいですから、トータルで考えるとハイオクガソリンを使用したほうが、燃料代も安くなるということなんです。だからハイオク仕様のクルマに対して、「このガソリン高騰時代にハイオクなんて不経済」と見るのは誤りなんですね。 ここで問題となるのは、レギュラーガソリン仕様のクルマにそのままハイオクを入れたらどうなるのか? ということです。かつては「イニシャルの点火時期や圧縮比をいじらずに、ガソリンだけハイオクにしても燃費やパワーに違いはない」と言われていました(実際、理論的にその通りです)。 が、既述の通り、現在はノッキング限界ギリギリを使うように点火時期やギヤレシオがフィードバック制御されているクルマが少なくありません。ならば、そういうクルマにハイオクを入れれば、レギュラーガソリン使用時より燃費が良くなるのではないか? という疑問が湧いて当然なわけで、実際にダイハツ・ムーヴ(ターボ+CVT)を使ってテストしてみたところ、条件を5種類ほど変えたテストで、多い順に9.9%、5.3%、2.3%、0.6%、-0.7%の差を確認することができました。最も差が出たのは、20kmの同一コース5周による平均燃費で、それ以外はそれぞれ勾配の違う登坂路で一定速を維持するための最小瞬間燃費の5回平均値です。 すべてにおいてプラスの結果が出たわけではありませんが、これだけ見ても「優位性はありそう」と考えることができます。(ほかのクルマでもテストしてみたいところですが、コストがすべて持ち出しになるため躊躇しています(^^;) そんなわけで、みなさんがお乗りのクルマがもしレギュラーガソリン仕様なら、ぜひハイオクガソリンを試してみていただきたいと思います。特にここ5年以内に発売されたクルマでCVT車ならば、投資額に見合う程度の効果はあるんじゃないかと思います(無かったとしても責任はとれませんが(^^;)。 仮に投資額と省燃費効果がトントンでも、省燃費分だけCO2排出量が減らせるわけですし、一般にハイオクの方が精製度が高く硫黄分が少ないため、硫黄酸化物の排出も減らすことができ、排気系も長持ちします。 何より50リッター入れても500円程度の投資ですから、怪しい省燃費グッズに手を出すより有効なんじゃないかと思いますよ。 メーカー各社でもぜひ、レギュラー仕様車のハイオクガソリン使用時の燃費データを取って、カタログの10・15モード燃費の欄に参考値として記載してくれるようお願いしたいですね。(という話を、先日、某社の試乗会で既にしてきたところです)