Apr 20, 2018

ドライブレコーダーの義務づけについて10年以上前に書いた記事を思い出したので。

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みなさん、こんにちは。

 今日の朝日新聞首都圏版朝刊に、ドライブレコーダー開発の発端となった人物のひとり、片瀬邦博さんの記事が掲載されていました。それを読んで、10年以上前に書いた記事を思い出したので、ここに掲載しておきます。
 当時、僕は、自動車の研究者とジャーナリストによって構成された(とされている)ある組織の理事をしておりまして、その「パーソン・オブザイヤー」に、練馬タクシーの桜井さんを推薦し、それを通じて世論を喚起しようと狙ったのですが、会員からの理解はまったく得られませんでした。この記事は確か、その会の年次報告書に掲載したものです。


■ 映像記録型ドライブレコーダーの普及を急げ!
 2003年、第156通常国会における施政方針演説で、小泉純一郎内閣総理大臣は、今後10年間で交通事故死者数を半減し、世界で最も安全な交通環境の実現を目指す方針を発表した。現在、その一助となる装置として有力視されているのが、映像記録型のドライブレコーダーである。
 ドライブレコーダーとは、航空機事故の原因解析に使われる「フライトレコーダー」の自動車版で、事故直前の運転操作を記録しておくことにより、何が原因で事故が起き、どちらにどの程度の過失があったのかを明確化するために開発が始められた装置である。
 1990年代後半には、運輸省(現国土交通省)によって研究が進められていたが、当時のものは運転操作のみをコンピュータ内のメモリーに記録しておき、現場の道路や構築物をコンピュータグラフィックス(CG)によって再現した中に、そのデータを元に車両を走らせ、事故状況を再現するというものだった。
 それを知った筆者は、ある雑誌に「そんなメンドクセェことをするなら、CCDカメラも付けて映像を記録したらいいじゃネェか。デジカメの値段から考えても、5万円もありゃお釣りが来るだろう」という内容の記事を書いた。1999年のことである。
 ちょうどその頃、筆者と同じことを考えている人が少なくとも2人いた。練馬タクシーの社長・桜井武司さんと、日本交通事故鑑識研究所の大慈弥雅弘さんである。
 桜井さんは、運輸事業に携わる者としての責任感や、社員の冤罪防止、自社タクシーの事故処理の迅速化などの立場から、大慈弥さんは交通事故鑑定人の立場から、映像記録型ドライブレコーダーを着想したのだが、この2人が出会うまでには、少々の時間を必要とした。
 1999年、桜井さんは、大手自動車メーカーや電気機器メーカー数社に製品開発を打診するが、需要が見込めないことを理由に、協力を得ることができなかった。
 翌2000年、全国交通事故遺族の会を通じて、桜井さんと大慈弥さんは出会う。お互いに同じアイデアを温めていたことに驚きつつも、すぐに共同開発することで合意。ハードウエアは大慈弥さんが、実車での効果確認や機能の絞り込みは桜井さんが主導する形で開発は進み、2003年11月、国産初の映像記録型ドライブレコーダー「Witness(ウィットネス=目撃者)」が完成。輸送事業者を対象に、ほぼ原価と思われる4万2千円で発売された。
 WitnessはCCDカメラとGセンサー、そしてフラッシュメモリーカードなどによって構成され、急ブレーキや急ハンドル、衝突による衝撃などで、あらかじめ設定されたGより過大な加速度が加わると、警報音を鳴らすとともに、その前12秒・後6秒間の映像を記録するという仕様だった。
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 過失割合の判定や事故処理の迅速化を主な目的として開発が始まったドライブレコーダーだが、練馬タクシーの業務車両約100台に装着して行った実証実験の結果、第一当事者となる事故が激減するという現象が見られた。ドライブレコーダーが装着されていることにより、「事故を起こしても、言い逃れができない」という意識をドライバーが自然に持つようになり、より注意深い運転をするようになったのである。
 さらに、事故の映像が安全教育にも使えることが判明。2004年にはタクシー業界大手の日本交通が全車に装着。加害事故削減に絶大な効果があったことが、同社のホームページで報告されており、現在までに全国の事業者向けに2万5千台以上が販売されている。
 映像記録型ドライブレコーダーの効果には、国土交通省も注目しており、'04年10月からは実証実験を開始。既に導入している事業者へのアンケート調査の結果、約15%の事故削減効果を確認。'05年6月には普及促進を図る方針を決定している。
 一方、損害保険業界では、早い時期からドライブレコーダーの効果に着目しており、東京海上日動火災保険では、'99年から運転データのみ採取するタイプのドライブレコーダーによる事故削減コンサルティングを行ってきた。さらに'05年8月からは、映像記録型ドライブレコーダーにも対応したコンサルティングを開始している。
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 その後、桜井さんは、さらに安価な「ジコ録」を開発し、事業者向けに利益を載せない販売を継続。一方、大慈弥さんは株式会社ドライブカメラを立ち上げ、事業化して一般ユーザーにも広く普及させる方向へと、それぞれ別の道を歩み始めた。
 しかし今年5月、桜井さんは運転中の身体的疾患が原因と見られる車線逸脱によって12トントラックと正面衝突。誰よりも交通事故撲滅を望み、行動してきた人が、その交通事故で亡くなるという皮肉な結果となってしまった。
 一方、そんな桜井さんの遺志を継ぐかのように、2005年に入ると大手メーカーが映像記録型ドライブレコーダーを相次いで発売。5月には矢崎総業から「YAZAC-eye」が、8月には堀場製作所から「どら猫」が発売され、富士通テンからは「11月に発売する」とのプレスリリースが発表されている。
 一方、アメリカでは1998年、DRIVECAM社が早くも映像記録型ドライブレコーダーを発売。警察車両に装備されるなどの実績を上げており、現在では同社の最新モデルを、防犯カメラなどのセキュリティ用品を扱うネクステージ(株)が輸入・販売している。この製品は20Gという大容量のハードディスクを搭載しており、連続38時間の映像が保存できる常時記録型ドライブレコーダーだ。
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 現在の交通事故捜査は、ほとんどが当事者の証言に基づいて行われている。しかし当事者証言には決定的な弱点がある。それは、「周辺環境を完全に把握できていなかったからこそ、事故が起こった」という事実だ。
 すなわち当事者にとっては「急に飛び出してきた」ように感じられたとしても、実際には他の事象に気を取られていて、相手の存在に気付くのが遅れたというのが客観的事実であることも少なくない。いきおい、過失割合の算定でお互いが不愉快な思いをし、時間と労力がムダに消費されていく。
 あるいは、当事者の一方が死亡してしまった場合、生き残った側の証言のみによって調書が作られる。そこに警察官のマンパワー不足が加わり、正確な捜査が行われないまま、死者に濡れ衣が着せられて幕引きとなるケースは枚挙にいとまが無い。
 しかしもし、ドライブレコーダーが装着されていれば、こうした問題はほとんど起こらなくなるだけでなく、前出のように、事故削減効果も期待できる。音声も記録できるようにしておけば、相変わらず減らない携帯電話運転も激減することだろう。
 以下、筆者の個人的な意見であることをお断りしておくが、政府にはぜひ、映像記録型ドライブレコーダーの装着を義務化していただきたい。そのためには、最低限の機能の定義や画像データの提出義務など、法的に整備しなければならない問題はいくつかあるだろう。しかしその効果と意義を考えれば、それに払う労力など物の数ではないはずだ。
 一方、自動車メーカーにも、標準装備化の検討をお願いしたい。
 コストアップの要因になるとはいえ、Gセンサーは車両姿勢制御装置やABSに搭載されているものを使えばいいし、記憶装置はフラッシュメモリーを利用すれば数千円で済む。HDD式のナビやオーディオが付いていれば、その容量の一部をドライブレコーダーに充てればコストはかからない。カメラは車線維持装置のものが利用できるし、新たに付けても、コストはせいぜい数千円だろう。
 衝突安全ボディや数々のエアバッグなど、「ぶつかってから何とかする装置」や、DSCや車線逸脱警報など、「ドライバーが漫然と運転していても何とかしてくれる装置」は大幅に普及してきた。しかし本来、交通安全の基本はドライバーにあるはずで、ドライバーの安全意識を向上させる効果を持つ映像記録型ドライブレコーダーこそ、今後、進むべき「本質を突いた安全対策」ではないかと思うのである。





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Last updated  Apr 20, 2018 10:39:56 AM
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