二人目のお見合い相手 ~砂男さん~
砂男さん37歳との待ち合わせは、繁華街のど真ん中のお花屋さんの前だった。彼は会う前に何度もメールで楽しみにしていますと書いてきた。そんなに楽しみにされると心が痛む。だって私、彼氏がいるんだもん。一体、何をやっているんだか。砂男さんは、誠実そうで超まじめ。実家で両親と共に暮らしているらしい。お仕事は安定した大手企業で、仕事に関してとてもプライドを持っているようだった。彼は趣味が海外旅行で、よくひとりで遺跡巡りをしたりするらしい。居酒屋で飲みながら、お互いの海外旅行や仕事の話などで盛り上がって、結構楽しかった。あんなことを彼が言うまでは・・・「僕の父親の職業言いましたっけ?」聞いてほしそうだったので、興味津々って顔をして聞いてあげた。「医者をやっているんですよ」と、彼は重大な告白をするようにその言葉をもったいぶりながら言った。「うわー、すごいですね」私は顔を引き攣らせながら答えた。だから何?何が言いたいんだ。どう話を展開させたらいいんだ。とりあえず「開業医さんですか?」なんて聞いてみたりしたけど違った。お母様もお嬢様育ちだという。彼は育ちの良さをアピールしたかったらしい。「こう言ったら嫌味に聞こえるかもしれませんけど、僕、お金の苦労をしたことがないんです」とまでおっしゃる。かなりお酒も入っていたし、本音が出てきたのでしょう。だけど大学生のときに200万の車を親に買ってもらったことを、37歳になった今でも自慢するなんて。裕福な家庭の子って、ベンツとかBMWとかを新車で買ってもらってたけどな。裕福でも親が甘やかしてくれない家は、自分でアルバイトして車を買ってたな。その重大告白をした後の彼は、なんだか態度が少し変わった。私が話すことに対して、「はっはっは、僕はそういうの分からないな」と、下々の庶民の話に耳を傾ける貴族のよう。わざとそういう態度を演じているように見えた。その後私は、「欲しいものって、自分で稼いで手に入れるのがいちばん嬉しいですよね」ってお話をしてしまった。後から気付いたけど、嫌味だったかな。次は彼の行きつけのバーがあるとのことで、お店を変えることに。お店の方にお勘定してもらったら、10,300円だったので、彼に5千円渡した。「こんなにもらえるんですか」と言って彼はそのお金をすぐにお財布に仕舞った。今まで会ってきた男性は、どんなに駄目な男性でも最初のデートは全額払ってくれた。私もそれなりに稼いでいるから、お金が惜しいわけじゃない。でも、砂男さんは私よりもお酒を何杯もおかわりして、たくさん飲んで、割り勘ってのもねぇ。それに、お金の苦労をしたことがないお金持ちのおぼっちゃんだと言うのなら、ごちそうしてくれたっていいのにね。そのあとのバーも、もちろん割り勘。最終の地下鉄に乗り込んだと同時に、砂男さんから「またお会いしたいです」とメールがきた。私はもう会いたくないです。ごめんね。接客のお仕事した後みたいにぐったりして帰った。