134643 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

小説メインHPです!=暗黒神剣のHP

小説メインHPです!=暗黒神剣のHP

闇穿つ者



 この世界には弱者と強者がいる。
 強者は何でも思うがままに事を成す。
 弱者は何をしようとも認めては貰えない。
 一体何故認めてもらえないのか。
 それは…単純なこと。
 その者が弱者というだけ。
 強いものが得をして、弱いものが損をする。
 強いものが幸せで、弱いものが不幸になる。
 皆が笑顔で笑っていられる世界はないのか。
 だから…俺はなるんだ。
 弱者を助け、笑顔にさせる人に。
 悲しみを、幸せにかえる為に。
 ただ…それだけを願って。

 チュン、チュンチュン。
 小鳥が鳴いている。
 それは寝ている俺には心地の良い囀り。
 人間朝にはこれっていうもが必ずある。
 朝に太陽を浴びないと駄目な人。
 朝にはヨーグルトを食べなきゃ気が済まない人など多種多様なほどに。
 それが俺の場合は鳥の鳴き声だというだけの事。
 でも、この小鳥が囀る時間帯というのは非常に不味いような。
 上手く機能しない頭を何とか正常レベルに。
 「…えっと、今何時だ?」
 ベットの上に置いてある目覚まし時計に刻まれている数字。
 AM8:10。
 うーん。
 これは一体如何なる事か。
 これじゃあ、遅刻するのは間違いない。
 しかも…始業式じゃなかったか?
 「この野郎…セットしたのに何で鳴らないんだ!!」
 怒りの矛先は勿論目覚まし時計に向けられる。
 昨日の夜確かにセットしたんだ。
 目覚まし機能をONにして、時刻を9時に。
 説明書通りにした筈なのにどうして鳴らないんだ。
 「……って、ちょっと待てよ?」
 時刻を何時に合わせたんだっけ。
 確か…7時の筈。
 だが結果は無残に外れていた。
 「9時ですかーーー!!」
 今日一日は最悪だっていうのが確認出来た瞬間だった。

 俺の名前は薫。
 草薙薫っていうしがない高校二年だ。
 といっても今日が始業式だから、まだ正式にはなっていない。
 だって始業式が終ってからが本当の二年だろ。
 まあ、他の奴がどう思ってるかは知らないけど。
 で、今は何をしているのかというと。
 ダッシュで通学路を急いでいる。
 周りには、いつもいる筈の学生の姿はない。
 それどころか人一人っ子いないみたいだ。
 何か違和感を感じたが急いでるので気にしないことにした。
 「この角を曲がれば…」
 後は一直線で学校の筈。
 時刻は8:25分。
 まだ走って向かえばギリギリ間に合う時間。
 それは、このまま何事もなくいけばの話だった。
 「きゃ!!」
 「うわっと!!」
 ドスンと胸にぶつかってくる何か。
 すると俺が頑丈なのか、それがひ弱なのか後ろに倒れこんでしまった。
 「う~、痛いです…。お尻がいたいです~」
 呆然と眺める。
 ぶつかってきたのが、目の前の女の子。
 俺は時計を見ながら角を曲がったから前を見ていなかった。
 よし、ここまではOKだ。
 そしたら、突然何かが体当たりしてきた。
 で、今の状況になったと。
 ここで俺がしなければならない行動は。
 「大丈夫か?」
 まだ痛がる少女に手を差し伸べた。
 確かに、今の状況では手を差し伸べる余裕など微塵もない。
 時間は刻一刻と過ぎている。
 今のままじゃ確実に遅刻、始業式には間に合わない。
 それは非常に不味い。
 後で担任に何を言われるか考えただけでも恐ろしい。
 俺の考えでは、まず始業式に出ないと学校が始まったと思わない。
 そこまで分かっていながら、俺は手を差し伸べた。
 「あ…ありがと…ございます」
 差し出された手を最初は戸惑いながらもしっかりと握ってくれた。
 力を込めて起き上がらせる。
 以外に女の子というのは軽いものなんだな。
 「ごめん、俺前見てなかった」
 「いえ、私こそ急いでちゃんと確認していないばっかりに」
 お互い頭を下げる。
 それと同時に鳴り響く金属音。
 キーンコーン、カーンコーン。
 始業式の始まりを告げる鐘は鳴り響いてしまった。
 「あちゃー、始まったな…こりゃ」
 「そうみたいですね」
 二人して苦笑い。
 どこか諦めムードが流れていた。
 「そいじゃあ、どこかで昼寝でもしよう」
 今から行っても怒鳴られるだけ。
 結局怒鳴られるなら今を有効に使う方が良いに決まってる。
 「そいじゃあ、俺行くよ。君も頑張ってね」
 「…はい。って私こんな所で話してる余裕ないんでした!?」
 そう言って少女は走ってどこかに行ってしまった。
 「うーん、何で逆方向なんだろ」
 取り留めない疑問を思案しながら、いつもの定位置を目指し歩く。
 裏門。
 あまり人が来ない入り口。
 この門の先には校舎から死角になる場所がある。
 木々で囲まれたその場所は俺の絶好の昼寝もといサボり場だった。
 「もう一度寝るとするか」
 そうして俺は先程会った少女の事を思い浮かべながら眠りについた。




© Rakuten Group, Inc.