カテゴリ:平和
田中優子 法政大学教授 私は「色好みの文化」も研究してきました。 『江戸の恋』(集英社新書)という本にも書きましたが、 例えば江戸時代、「好色」という言葉は、男性にも女性にも使う、 非常に評価の高い言葉だったのです。 教養があって、芸ができ、恋心についてよく知っている人を指し、文化の担い手でもありました。 最近の(自民党を中心とする「保守」勢力の)日本文化を守れ、 という風潮の中にこの「色好み」は含まれていますでしょうか? いわゆる伝統主義者たちは、そういう平和で柔弱なものは伝統として扱おうとはしません。 戦うのに都合のいい「武士道」を強調するのです。 また、例えば「農民一揆」も、伝統といえば伝統でしょう。 これは「一向一揆」などから始まったのですが、 一揆を起こすには、きちんとした儀式と手順がありました。 伝統にのっとって起こされたと言えるのです。 これは権力に対する叛乱です。それも日本古来の伝統として認めるのですかと、 秩序を重視し、やたらに伝統を言い立てる人たちに、私は問い返したいですね。 伝統を守れ、と叫ぶ人たちはよく分かっていないのです。 「日の丸・君が代」などを日本の伝統の象徴のように言う人たちがいるけれど、 「君が代」の歌詞は単なる宴席の和歌で後には隆達小歌です。 「君」はその時々の祝う相手で、誰でもいいのです。 それを、天皇を指しているから伝統だ、などというのは 日本文学を知らないから言えるのです。 また、「日の丸」は明治以降に普及した船の旗印で、 とても日本古来からの伝統などと呼べるようなものではありません。 なにしろ、明治以前はこの国には「国家」という意識はなかったのですから」 「(明治以前にあったのは)あったのは「藩」です。「国家」ではありません。 だから、愛国心などというものは、この国には明治以前には存在しなかったのです。 確かに、藩のためとか故郷が愛しいとかいう感情は強かったでしょうが、 それは最近強調されているような愛国心とはまるで違うものでしょう。 愛国心などというものは、本来の伝統の中には含まれていないのです。 「愛」という言葉も「国」という言葉も新しいのですから。 新しい言葉を作ってもかまわないけれど、 そのときは「国を愛するとは、どういうことをすることなのか」を、 きちんと説明しなければなりません。 伝統や文化を尊重しろと言うのであれば 「これが伝統文化である」ということを明らかにする責任があるはずです。 でもね、その場合「私が思う伝統とはこれだ」と、みんなが別々のことを言い出したら、 一体どうするつもりなのですかね、 伝統文化を強調している人たちは、最近言われている「伝統」というのは、 殆どが明治以降に成立したものです。 すると、靖国神社も「伝統」に入ってしまう。 ところが靖国神社は、伊勢神宮を頂点とする神社本庁組織の中に入っていません。 つまり国家によって理念的に作られた神社もどきであって、 土地と結びついた伝統的な日本の神社ではないのです。いわば「新興宗教」のたぐいです。 日本では「英霊」という言葉も使いませんので、これも新しい。 ここで想定されている「伝統」のほとんどは伝統ではない、と言うしかないんですよ。 (万世一系の伝統、血筋が連綿と続いている伝統が世界に誇るべき日本の伝統という考え方もあるが?) 血筋問題は誰が考えたってフィクションでしょ。 論理的に説明できないでしょう。 2600年以上も誰かの遺伝子が続く間には人口が増えるわけだから、 その遺伝子はどんどん外に拡がっていっている、ということを意味します。 そのあいだには様々な民族の血が流れ込んでいる。 実際に証明されていることで言えば、もともとこの日本列島に暮らしていた人たちの中に、 朝鮮半島から多くの人たちがやってきて今の日本人を形成しているわけで、 そういう現実を見据えるならば、私たちは朝鮮民族の末裔なのです。 「万世一系」を主張するとそこへ行き着きますから、 伝統を守るためには朝鮮のかたがたを敬わなければならない。 同時に、もともとの日本人の末裔であるアイヌのかたがたも敬わなければならない。 反論するのであれば、日本人のミトコンドリアDNAについて学んでからにしてください。 法律に書かれる「伝統文化」や「愛国」は、まやかしである。 (2006.12.27 マガジン9) http://t.co/Bq9PC7oRKx ………………………………………… The Penelopesのwatanabe さんという方 ( @penewax )がTwitterで紹介してくださっている言葉をつなげてUPさせていただきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年09月21日 22時08分35秒
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