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2008/03/18(火)21:01

小田光雄『出版業界の危機と社会構造』

読書(181)

実はここ1年くらい本屋で買い物をしたことがありません。小説や新書は図書館で借りれば無料ですし、雑誌程度の情報でしたらネットで十分手に入れることができます。別に書籍での出費を押さえてるわけではありませんが、それにしても最近の本や雑誌の高いこと、高いこと。先日、復刻されたクラークの「海底牧場」を見つけて買おう! と手にすると840円ですよ。 840円! はっぴぃやくよんじゅーえええんん!!!!! 無茶苦茶だ!!!!! (ドクターエメットフォンブラウン風に)  なんで文庫本が840円もするんだよ! 文庫本ってのは300円くらいのもんだろ? と思って他のものを見ると、なんと、いつの間にか文庫本の価格は700円800円900円が当たり前になっていました。まあ、そうだわなあ。この前読んだ「半島を出よ」上下で4000円近い価格設定、これはもうフツーの本じゃないでしょう。「死霊」の初版本だって2500円だったぞ。いやー、こんなに本が高くては、出版業界が不況でもしょうがないんじゃないの。 『出版業界の危機と社会構造』は、そんな現代の出版業界の危機的状況を冷徹に分析している本です。といっても、著者はこれまで多くの著書で出版業界に警鐘を鳴らしてきたようで、最新作である本書にはあきらめのムードさえ漂っています。著者が言うには、諸悪の根源は再販防止法だそうで、よくわからん法律なんですが、ようするに決まった価格でしか本を売っていかんという法律らしい。おいおい、それって価格カルテルじゃないのか? よく考えると豆腐や牛乳の安売りは見ても、本屋雑誌の安売りなんて見たことないですね。メーカーが安売りするなと小売店に圧力をかけていたとなると問題になりますが、なんと、本と音楽は法律で出版社価格を死守しろと法律で決まってるんですよ。売れ残ったら全部返品だそうで、そりゃあ、出版元が困るでしょう。返品が前提となると、本屋さんの儲けも少ないでしょうし、返品された本は結局ゴミですから、出版社も儲けが無くなりますから、必ず儲かるような流行ものしか売らなくなりますね。となると、文化保護のための再販防止法が、全く逆の意味になっている、これが現状だそうです。かくして本の価格は高くなり、客はブックオフのような安売りの古本を買うようになり、図書館で借りるようになり、ますます売れなくなる悪循環が進むのでした。 まあ、こういった法律で保護された市場、業界ってのは、いずれはいびつな形になって衰退への道を進んでいくことは間違いないので、自由市場が必ずしも良いとは限りませんが、ある程度は自由にしないとやばいと思いますよ。でも著者はもういまさら再販防止法を廃止しても遅いと言ってますが。そういえば音楽業界のコピー防止や輸入CD反対なんてのも、この保護された業界らしい発想ですね。ちなみにゴーマンの小林よしのりがブックオフを文化破壊だと主張しているんですが、別にブックオフの肩を持つわけではないですけど、再販防止法のもたらした現状をどう分析しているのでしょう。活字離れを杞憂する有識者も多いでしょうが、でもね、ケータイ小説があれだけ流行るということは、みんな読むことに対して飢えているんだと思いますよ。でも高いから本を買えない、ケータイの支払いで窮してますからね。だから無料のケータイ小説を貪るように読むのではないか、これが私の説です。

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