原作が未読だったので読んでみました。映画を見て原作もこんなヒドい出来なのか、ナンタラ大賞にろくなもんはないから仕方ないわなあこんなもんだろうなあと勝手に想像してましたが、実際に読んでみないとわからないので読んでみました。で、想像したよりはマシでした。まあ、それなりにちゃんとした作品になってました。少なくとも途中で読むのが苦痛になるような事はなかったです。結構面白かったです。最後は最低でしたが。私は先に映画を見てしまったので、オチがわかってて読んだので、こうなる事は想像できましたが、原作は一人称で書かれておりまして、となると、メイントリックとなる部分に関しては、叙述トリックになってしまいます。この叙述トリック、ミステリとしては完全に反則技なんで、よほどの必然性がないと読者が納得する事はないですが、本作に関しては、ピアニスト成長物語としていい感じで進んできたクライマックスで、おいおい、ここでそうくるのかよ、と興ざめさせてしまう、まったく不必要な要素だと思います。おそらく、映画はこの点を必然性を持たせる為に、主人公がなぜピアニストにならなければならないか、ああいう形の理由付けをしたのでしょうが、原作にこそ必要だったのではないか、でもしかし、アレはないと思いますよ。作者が読者に意識的に騙すのにもルールがあると思うのです。これは一人称でやるべきではないでしょう。三人称か、あるいは本作の探偵役であるピアニスト教師の一人称にすべきでした。まあ、それでも、あのどんでん返し(のつもりなんだろうけど)はまったく不要で、どんでん返しの為のどんでん返しになっており、遺産相続のトラブルに関しては、サイドストーリーとして十分描けてたと思うので、苦難を乗り越えてピアニストとしてコンサートに挑む感動ドラマが台無しでした。