途方もなく手間ひまがかかって大変な辞書作りをテーマにした映画です。日本アカデミー賞をたくさんもらった映画らしいのですが、どうなんでしょうか、最近の邦画の悪い所が全部でちゃった映画に思えました。テーマ自体は大変良いと思うのですが、見ていても、タラタラと話が流れているだけでまるで起承転結もなく、登場人物もまったく感情移入できない薄っぺらな描き方しかできておらず、見終わっても何も残りませんでした。例えば、途中から参加してきたファッション誌からの異動の女性視点で、辞書作りの現場にやってきた彼女が、はじめは嫌々やっていたけど、だんだん言葉の大切さや辞書作りの意義がわかってきて、最後はかんばって完成させるといった成長物語にするとか、あるいは、辞書作りにしか興味がなかったオタクな主人公が、下宿にやってきた娘に恋をして、言葉に関わる仕事をしているものらしさを感じさせるセンスのある恋文を何通も書いて、最後に何とか彼女を口説き落とす、といった変則的な恋愛ものにするとか、あるいは、もっと社会的な視線から現代の出版業界の厳しい事情から、手間がかかる割に儲からない辞書作りから撤退する事を決定した経営陣と、辞書作りを重要さを訴える現場との攻防戦を描いて、悪戦苦闘するけど最後に見事に出版してバンザイ的な映画にするとか、いろいろ方法はあったと思うんですが、実は3つとも全部この映画に描かれてる内容なんですけど、どれも煮詰まらないままサラッと流されちゃってますね。最近の邦画ってのは全部こんな傾向で、しかもこれでアカデミー賞なんですか、そうですか。で、実はこの映画原作があるそうなんですよ。ええ、調べたら、本屋大賞作品でした。ああ、ダメなはずだ。