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ロマンチック中年男の独り言 DVDレビュー、収集物、趣味全般、日々想うこと

星に恋したモグラ


星に恋したモグラ Wrote by aosaga369



ここは日本のどこかのとあるいなかの森のはずれ。森の動物が集まっておしゃべりしてます。

リス「モグラってミミズ食べるんだって、あんな気持ち悪いモノ、よく食べられるよね。ドングリやイチゴやおいしいものがいくらでもあるのに。」
ウサギ「ボクはなんと言ってもニンジンだね。あの赤い色を見るだけで幸せになっちゃうよ。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「鹿せんべい食べたいよ~。」
全員「奈良公園に帰れ!」
オオカミ「…おまえら食いたい…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…なんにも言ってない…。」
ヒツジ「モグラの話じゃなかったの」

リス「そうよね。こうして私たちが集まってるのに、顔も出さないのよ」
ウサギ「そうだよ。夜行性のボクがこんなに目を赤くして参加してるのにゆるせないよ。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「鹿せんべいの話じゃなかったの~。」
全員「奈良公園に帰れ!」
オオカミ「…モグラ食ったことない…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…なんにも言ってない…。」
ヒツジ「モグラはどうしてこないの」

リス「太陽を見ると死んじゃうらしいのよ。こんなにいい天気で気持ちいいのに変なヤツ。」
ウサギ「死んじゃうなんてかわいそうだね。ボクもニンジンが食べられなかったら、きっと死んじゃうよ。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「鹿せんべい食べないと死んじゃうよ~。」
全員「奈良公園に帰れ!」
オオカミ「…死んだらおまえを食う…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…なんにも言ってない…。」
ヒツジ「じゃあ来れないね。かわいそう。」

リス「かわいそうじゃないよ。モグラって一年中ねずみ色の服着てるのよ。」
ウサギ「ボクは冬と夏じゃ色が変わるんだ。でもニンジン色の服もきっとカッコいいよね。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「鹿せんべいって何色だっけ~。」
全員「奈良公園に帰れ!」
オオカミ「…誰でもいいから食わせろ…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…なんにも言ってない…。」
ヒツジ「ウール100%わけてあげようかな。」

リス「あんなのに関わらなくていいよ。きっとビンボーなのよ。」
ウサギ「ビンボーはイヤだな~。お金がないとキャロットパイやキャロットスープが食べられないし。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「なんでビンボーなの~。」
全員「奈良公園に…じゃ、ないか。」
オオカミ「…小さいころにパパとママが死んだんだ…。…俺が食い殺してやりたかった…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…。」
ヒツジ「ウール100%売れば、お金持ちになれるかも。」

リス「…でも私だってパパやママはいないよ。そんなの関係ないよ。」
ウサギ「ママの作ってくれたキャロットパイはサイコーだったな。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「ボクにはパパもママもいるよ。」
全員「奈良公園にだろ!」
オオカミ「…パパとママ食いたい…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…。」
ヒツジ「モグラって、ビンボーなんだ。」

というわけで、モグラはビンボーということで話はまとまったようです。




モグラはその頃…。

やっぱりミミズを食べてました。

モグラはミミズしか食べたことがありません。でもイチゴやニンジンは知ってます。
モグラのすみかは人間の畑なので、穴を掘っているとニンジンによく出くわします。
夜中に畑から顔出すと目の前にイチゴがぶら下がっていたこともあります。

でもモグラはミミズしか食べません。
パパやママが畑のニンジンやイチゴに手を出してコロされた事を知っているからです。
パパとママの無惨な姿を見てから、ミミズ以外は決して食べないと心に誓いました。

人間はとても恐ろしい生き物です。
とても大きくて、とてもズル賢くて、どんな動物も人間にはかないません。
森の多くの動物たちが人間のせいでみんなひどい目に遭っています。
ニンジンが大好きなウサギでさえ、人間を恐れて畑のニンジンを荒らす事はしません。

子供の頃パパとママに死に別れたモグラは、ずっとひとりで生きてきました。
だから子供の頃からぜいたくなんて一度も経験した事がありません。
ねずみ色の服も子供の頃からずっとです。おいしいものも食べた事ありません。

それでもモグラは満足です。森の動物からはビンボーと言われますが気にしません。
暗い穴の中ではねずみ色の服を見せる相手もいません。
ミミズ以外の食べ物の味も、ずっと昔に食べなくなってからもう忘れているからです。




日が暮れて、月や星しか見えなくなるとモグラは土の中から顔を出します。
昼間熱かった空気も夜の闇に冷やされて、とても気持ちがいいです。

ひんやりした空気を大きく吸い込むと「今日もいつもと変わらない一日でよかったな。」いつもの一言です。

そしていつものように土の中に潜ろうとした時に、モグラは見つけてしまったのです。
北の山の一本杉のすぐ上に、小さいけど明るくチョット赤みがかかった光を放つ星を。

モグラはドキドキしました。ほほが熱くなるのを感じました。こんな気持ちは初めてです。
その星の光は眩しいけど、いつまで見ていたいと思いました。

モグラは勇気を出して話しかけてみました。

「こんばんは。」
星の光が瞬いて、返事をしてくれたように感じました。

「気持ちのいい夜ですね。」
星の光は瞬きます。

「ボクはモグラです。あなたの名前を教えてください。」

ちょうどそのとき雲が星の前を横切りました。
モグラは驚きました。急に星が見えなくなったからです。

でもすぐに雲は通りすぎました。さっきと同じ場所に星は輝いています。
モグラは安心しました。でもチョット反省しました。

名前を聞いたのがよくなかったのだな、と思って名前を聞くのはやめました。
その代わりモグラは星に名前を付けました。

「ルビー」です。チョット赤みがかかった光が宝石のようだと思ったからです。

「君の事、ルビーって呼んでもイイよね」
星は瞬きます。モグラはほっとして微笑みました。

「じゃあ、ルビー明日も会える?」
星はさっきと同じように瞬いています。

「明日も会おうね。」
モグラは笑って呼びかけると、土の中に潜っていきました。

「今日はすてきな一日だったな。」
その夜モグラは幸せな気分で眠りました。




次の日から夜中のひんやりした空気の中でルビーに会う事がモグラの楽しみになりました。

夜モグラは土の中から顔を出すと、北の山の一本杉の上にルビーを探します。
そしてモグラはいつもの場所にルビーを見つけて安心します。

モグラは星にいろんなことを話しかけます。
そのたびに、星は瞬いて、うなずいているようです。

たまに雲に隠れる事がありますが、すぐに同じ場所に姿を現します。
そのたびに、モグラはこんどから同じことは話さないと誓うのでした。




その日は雲一つない快晴の夜でした。
「今日は一度も失敗しなかった」モグラは上機嫌でした。

モグラの問いかけにルビーはずっと瞬いて、一度も隠れる事がなかったからです。

その日のモグラはいままでで一番幸せな気分で眠りました。




その日はどんより曇って星一つ見えない夜でした。

いつものように土の中から顔を出したモグラはがっかりしました。
いつもの場所にルビーがいないからです。

でもこんなことは前にもありました。
ちょうどルビーの所に雲がかかっているからです。

しばらくすると雲は通りすぎ、ルビーはいつもの場所に現れます。
そのときモグラはタイミングが悪かったと納得します。「ボクもお風呂やトイレに行く事もあるし。」

しかしこの日はいつまで待っても現れません。
別の場所にいるのかとあたりを見渡しましたが、どこにもルビーはいません。

しかたなく今日はルビーに会うのはあきらめました。

でもモグラは眠れません。

「ルビーはボクがキライになったのかな?」
「ボクがビンボーだから?」

モグラはビンボーがイヤではありませんが、みんなからビンボーだと思われていることは意識していました。

「ビンボーなボクは、普通の子を好きになっちゃいけないんだ。」
いままでなんどもモグラの頭をよぎった考えでした。

ずっとひとりだったモグラは友達が欲しくてしかたなかったのですが、いつもそう自分に言い聞かせてきました。

でも今日はなぜだか涙が出ます。
もうルビーに会えないかと思うと涙が止まらないのです。
モグラの小さな目からはいつまでも涙が流れました。




次の夜、土の中からモグラが顔を出すとルビーがいました。
いつもの北の山の一本杉の上にルビーがいます。

モグラは嬉しくてたまりません。

「ルビー昨日はどうしたんだい。」
いつものように星は瞬いています。

「いいんだ。君が元気なら。」
星は瞬きます。

この日もいつのように、モグラはひとしきり星に話しかけると
おやすみを言って土の中に潜っていきました。




その日はずっと嵐でした。
モグラが土の中から顔を出すと、吹き飛ばされそうな風と、たたきつけるような雨が降ってます。

風で吹き飛ばされた葉っぱだかなんだがが、飛び回っています。
モグラは手で雨を避けながらルビーを探しますが、見つかりません。

いつもの北の山の一本杉の上にも見つかりません。
目を凝らしてまわりを探しますが、やっぱり見つかりません。

モグラは不安になりました。
「この嵐でルビーは北の山の裏側に落ちたのかもしれない。」

モグラの中で不安はどんどん大きくなっていきます。
モグラの心はもうはりさけそうです。

「助けに行こう。」
モグラは穴から飛び出し、嵐の荒れ狂うなか、北の山に向かう道をまっすぐに進んでいきます。

モグラはけんめいに手足をバタバタさせますが、なかなか北の山へはたどり着きません。
やがて嵐はやみ、朝になっていました。




リス「モグラが北の山に行く道で死んでたんだって。」
ウサギ「死んじゃうなんてかわいそうだね。でもなんでそんなところにいたんだろう。」
フクロウ「ほー、ほー。」
シカ「鹿せんべい食べないと死んじゃうよ~。」
全員「奈良公園に帰れ!」
オオカミ「…死んだのならモグラを食う…。」
ヤギ「なんか言った ?!」
オオカミ「…なんにも言ってない…。」
ヒツジ「モグラ死んじゃったんだ。かわいそう。」




今日も北の山の一本杉の上に、その星はいつものように、小さいけど明るくチョット赤みがかかった光を放ってかがやいています。

でも目をこらしてよく見てください。
モグラがルビーと名付けたその星に、よりそうように鈍い光を放つ、とても小さな星が見つかるはずです。

そのモグラの目のように小さく鈍い光を放つ星はモグラなのです。
モグラをかわいそうに思った神様が、ずっとルビーのそばにいられるようにと星にしてあげたのです。




北の山の一本杉の上に、その星はいつものようにかがやき、瞬いています。
そしてモグラの目のように小さな星も鈍いけど暖かな光を放っています。

それはまるで2つの星が楽しそうに話しかけて、うなずいているようでした。



おしまい

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