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ロマンチック中年男の独り言 DVDレビュー、収集物、趣味全般、日々想うこと

かわいそうなゾウ


かわいそうなゾウ Wrote by aosaga369


「パオーン。」
ここは動物園。でもすぐそこにお城が見えます。
「パオーン。」
このお城は有名なお城で、かつてはだれも攻め落とせないと言われました。
「パオーン。」
でもサルの大将に攻められた時、話し合いがまとまらず、結局降参しました。
「パオーン。」
…。
「パオーン。」
…わかりました。このひとが主役のゾウさんです。
この堂々としたゾウさんが、いまではお城の主人のように見えます。
しかしこの大きなゾウさんにも悩みがあるようです。




ゾウ「ああつらい。」
どうしたんですか?
ゾウ「だって…。」
だからどうしたんですか?
ゾウ「僕の手って、太すぎて…。」
だからなんですか?
ゾウ「背中がかけない。」
だから…?
ゾウ「背中がかゆいんだ。」
…。
ゾウ「背中がかゆいんだゾウ。」
…はいはい分かりました。キリンさーん。




キリンさんはゾウさんのとなりのオリにいます。
キリンさんとゾウさんはいちおうお友達です。
こういう時はとなりのオリから首をのばしてゾウさんの背中をなめてあげます。

ゾウ「うひゃ。」
…?
ゾウ「うひゃ、うひゃ、うひゃ。」
…、どうしたんですか?
ゾウ「キリンさんの舌って、ザラザラしてくすぐったいんだ。」
…、そうですか。
ゾウ「くすぐったいんだ。うひゃ。」
そんなこと言ってて、いいんですか。
キリン「もうなめてあげないわよ。」
ほらね…。
キリン「ゾウさんたら、いつもなんだもん。」
キリンさんは普段はやさしい女の子ですが、チョット高血圧で…、
キリン「ベロッ!」
ゾウ「ギャッ!」
おこりっぽいのが、たまにきずです。
ゾウ「…そこは…。」
キリン「気持ちよかった?」
ゾウ「…ありがとう。」
おふたりとも仲良くしてくださいね。
でも「そこ」ってどこなんでしょう?作者も考えてないみたいなのでご自由に想像して下さい(苦笑)。




ここはサルのオリです。
むかしむかしサルの大将が、このお城を攻め落としたことはお話ししました。
そのせいでサルさんはお城の主人は自分だと思っています。
だからサルさんはゾウさんが気に入りません。
サル「ゾウっていつも大きな顔してるよね。」
まあゾウですから…。
サル「態度がデカイよ。」
体がデカイのまちがいじゃ…。
サル「ボクを無視して、大きな顔してるのが許せないよ。」
無視っていうか、ゾウさんのオリからあなたのオリは見えませんよ。
サル「いつか思い知らせてやる。」
どうぞご自由に…。




ここはフラミンゴのオリです。
ピンクのきれいなドレスで素敵なダンスをひろうしてくれます。
フラミンゴ「わたしのことはカルメンと呼んで欲しいの。」
…それってフラメンコじゃ…。
フラミンゴ「カルメンと呼んで欲しいの。」
…分かりました。
フラミンゴ「わたしの足が長いと思っている人が、多いみたいだけど」
そうなんですか。
フラミンゴ「細くて長い足ってよく言われるのよ。」
はあ、なるほど。
フラミンゴ「でも長いのはかかとから下なの(泣)。」
…。
フラミンゴ「わたしって変でしょ(泣)。」
なぐさめの言葉もありません…。




ここはカメさんのオリです。
この大きなカメさんは実は動物園の最長老です。
動物園で一番のものしりと言われています。
カメ「ワシが生まれたのはムーといってな。」
それって伝説の海に沈んだ大陸…、
カメ「オリハルコンという宝がのう…。」
…それはアトランティス…、
カメ「モアイと呼ばれた巨人が…。」
…イースター島…。
カメ「ジパングと呼ばれた黄金の島で…。」
あのね…。
カメ「…そう言えば昼ご飯がまだじゃないかのう…。」
…カメさんもお年を召したようです。




ところでおまえは誰だって
申し遅れましたが、私はツバメです。
若い奴らは世のご婦人方を惑わすトリと悪名を頂く事もありますが、
私のご先祖様は、とある国の幸福な王子様のメッセンジャー兼ポーターとして仕え、
ついには王子様と運命をともにするという伝説を作ったトリであります。
そんな名誉あるご先祖様を持つ私にとって、
メッセンジャーはまさに天職と言って過言ではないと自負しております。
失礼いたしました。チョット自慢がすぎましたね。
他の動物さんたちのようにオリの中にいないため、
あちこちのオリで話し相手にもなれるというわけです。
でもメッセンジャーの仕事をしてないんじゃないかって、
何をおっしゃいます。今ご覧のあなたにお伝えしてるじゃないですか(笑)。




でここからが本題のようです。
前置きが長いのが作者のクセなのでどうかご勘弁下さい。

ここはゾウさんのオリです。
でタイトルが「かわいそうなゾウ」だってことをもう一度思い出して下さい。
ありきたりですが、ゾウさんの悲しい恋のお話です。

ゾウさんにも好みのタイプがあります。
このゾウさん、タイニーな相手がお好みで、
しかもハンパでなく小さい動物にときめいてしまいます。

動物園も終わって騒がしかった空気も、いつのまにかシンとして澄んだ、月の明るい夜でした。
ゾウさんは月に向かってつぶやきます。
「さみしい…。」
…ヤバイ、
「人生ってむなしい…。」
…こんな雰囲気の時は、
「何のために生きているんだろう…。」
…今までの経験から言うと、
「恋がしたい。」
…ですよね。
「恋がしたい。恋がしたい。恋がしたい。」
それはTBSのドラマ…。
「ひとりはさみしいんだ~。」
夜も遅いので、あまり大きな声は出さないほうが…。

こういう時に限って、悪いこと(?)は重なるモノで…。
ゾウさんのオリのはしっこでチラチラと小さなカゲが動いています。
…ダメです。
「…」
…そっち見ちゃダメです。
「…!」
あ~あ、見つかちゃった。
それにしても、ゾウさんのうれしそうなお顔、お見せできないのが残念です。
世界中の幸せを一身にうけたような、満面の笑みです。

「ボクは見たんだ。」
…ここからしばらくゾウさんのひとりごとなので、しばらくおつきあい下さい。
「月明かりに照らされて、」
「ツヤツヤと照り返す毛皮を。」
「愛くるしいしっぽを震わせて、」
「ボクをじっと見てたね、」
「そのつぶらな瞳で。」
「ヒゲをプルプルさせながら、においをかぐかわいいハナ。」
「頭の上にちょこんとついた小さな耳は、」
「ボクの言葉を待っていた。」

恋は人を詩人にするといいますが…。
ここまでなりきってしまうひとも珍しいですね。

ゾウさんのオリのはしっこではネズミがこちらを不安げに見ています。
彼女(?)のこれからの運命を思うといたたまれません。

ゾウさんから立ち上るオーラが…、
ダメです、もうこうなると誰も止められません。

「好きだ~!」
突然ゾウさんは走り出しました。
どこどこどこどこどこどこ~!
動物園全体が揺れています。
眠りについていたキリンさんも、サルさんも、フラミンゴさんも、カメさんも目を覚ましました。
ゾウさんの勢いに押されて、ネズミは一歩も動けません。
「好きだ~!」
どこどこどこどこどこどこ~!
ぷちっ。




ゾウさんは悲しみに暮れて夜空を見上げます。
「あの星をネズミーと名付けよう。」
「君のことはずっと忘れないよ。」
ゾウさんのつぶらな瞳からは一筋の涙が…。




ゾウさんの悲しみはわかります…。
「でもかわいそうなのはネズミでしょ!」
とキリンさんも、サルさんも、フラミンゴさんも、カメさん…はもう寝てますが、
心の中でつぶやきます。

今日もこうして床にできたシミという墓標と
ゾウさんに名前を付けられた星が一つ増えました。
ゾウさんに幸せな日が訪れることは、当分なさそうです。

「ひとりはさみしいんだ。」
お願いですから、今日はもうやめて下さい~。

おわり

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