10月は黄昏の国

2006/10/23(月)19:23

Danke Michael !

F1・モータースポーツ(29)

「Danke Michael (ありがとう ミハエル)」  これはBMWザウバーのリアウイング裏に書かれていた言葉だ。 ブラジルで引退する、同じドイツの偉大な皇帝に敬意を表しての事だが、厳しいスポンサー規定のあるF1では、非常に珍しい事だ。  もっとも場所が場所だけに、好調なBMWの後ろからでないと、ミハエル本人は見えないわけで、ある種非常に強気なジョークでもある。 「ありがとう、ミハエル。抜いていくぜ!」って事か。  ところがご存知のように、ブラジルでは表彰台の三人以外は、すべて偉大なるミハエル・シューマッハに抜き去られてしまった。 勝ったのは地元のマッサだった。チャンピオンもアロンソだった。だが、主役は誰が見てもミハエルその人に他ならない。  トラブルで失った予選順位に加え、レース中のパンクにより最下位に落ち、条件は揃った。 ミハエルは通常ポールポジションか、それに近い予選位置から、巧みなピットワークで勝つパターンが多く「最近のF1は追い抜きが少なくつまらない」という批判の要因でもあった。  ところが首位から約70秒遅れた位置から、これまでの批判など全て吹き飛ばすパッシング・ショー。勿論BMWの例のコピーを確認しつつ、誰も撃墜する事もなく。 ショーは超新星、元ポチ、パンクの原因を作った奴、来年のフェラーリドライバー等、全て抜き去り、好調なバトンに迫った所で終わった。 首位マッサとの差は24秒。これから70秒引くと……。  ちなみにSAF1は、トヨタ、ウィリアムズが早々に消えた事もあり、琢磨10位!左近は16位。驚いた事にファステスト・ラップでは、左近7位!琢磨9位!であった。  予選の早さは無いが、レースペースでは中位チームと肩を並べる事が出来た。逆に言えば二人は予選並みのペースでレースをしていたという事でもある。これは正に驚異的といってもよい結果だろう。  来年もしSAF1が生き残れたら、ブラジルタイプのサーキットでは、好成績を上げ、ポイントも夢ではないだろう。 SAF1の参戦は成功したのだ!  ミハエル夫人、コリーナは「長い間無事で、一度足の骨折をしただけで、無事帰宅できる事」が嬉しいとインタビューに答えていた。 私の敬愛する長谷見昌弘氏も、引退の時に「五体満足で終える事が出来た事がなによりだった」と述べていた。野蛮だった時代を生き抜いたレーサーにしか言い得ない言葉だと思う。 こうして引退を無事に祝ってもらえる、恵まれたレーサーは少ない。その中でもミハエルは、およそ考えうる、最高に近い形で終える事が出来た。 いろいろ批判の多い皇帝だったが、そのキャリアは見事という他は無い。 「ありがとう、ミハエル・シューマッハ。たいした奴だよ!」

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