嘘をつかない國策冩眞。
JCIIフォトサロンで「示威と宣揚 戦中の国策写真 2」展を觀る。昨夏に開催された企画の第二彈、第二次大戰時下に回覧板へ挟み込まれ、庶民の戰意高揚を煽ったプロパガンダ誌「冩眞週報」などに掲載された冩眞原版の數々をリプリントしたもので、八十年以上が經た令和現在にそれらを見ると、物資力ですでに劣ってゐたぶん精神力で勝たうとするその有様は、戰意高揚どころかむしろ敗れる要素しか詰まってゐないのがありありとして、これら情報操作された冩眞のはずが却って實態を曝け出す資料となってゐるのは、何とも皮肉だ。しかし私はこれこそが、眞實を冩すこの文明の面目躍如と見る。東京府廰の鐵門扉を金属供出のため取り外す様子など、これを見て根本的な武器資材の不足を疑った國民は必ずゐたはずであり、食糧難による代用食で痩せ細っていった動物園の生き物たちが、獣醫や飼育員たちの“愛”ですっかり元氣になったなど、先日に橫須賀の無臺でさうして犠牲になった動物たちの物語を觀た者には、とんだお笑ひ草でしかない。診察を受ける動物たちのさうした冩眞を見ながら、橫須賀まであの芝居を觀に行って本當によかったと思った。一方で、「冩眞週報」誌の昭和十六年八月二十七日號には、野で捕まへたトンボを共同研究として觀察する少年たちの様子の記事のなかに、“大人から教えこまれたり、本を讀んだりしただけでは、子供たちはたヾそのことを苦しんで暗記するだけで生きた知識とはなりません”と、至極真っ當な一文がある。ところがそれは國民の戰意高揚を狙った作為のなかへ差し込まれたコトバであり、かうして虚實を巧みに織り込んで情報統制が行なはれる、その手法の一片をまたひとつ知ることが出来たことに、私はこの冩眞展に来た糧を得る。