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迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2026.08.13
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カテゴリ:浮世見聞記
橫濱の日本新聞博物館ニュースパークで、コレクション展「生誕150年 漫画記者・楽天」を觀る。



福澤諭吉が明治十五年に創刊した時事新報に、福澤の義理の甥である今泉一瓢の後任として採用された北澤樂天は、明治三十五年に始まった「時事漫画」に世相を諷刺した漫画を掲載すると同時に漫画キャラクターをいくつも生み出して大人氣を博し、日本における職業漫画家の第一號となる。

その北澤樂天の時事漫画時代の作品世界を収藏紙面でたっぷり浸りつつ、列強諸國に翻弄されて西洋化と富國強兵に猛進する大日本帝國、さうした時勢に踊らされる一般大衆の姿を讀んでいく。


(※展示室内一部を除きフラッシュ無しで撮影可)

北澤樂天が描く人間は、諷刺による誇張がされてゐるやうで、實は冷静な人間觀察のもとに創られてゐるだけに、紙面のなかのキャラクターたちは我々と同じ視線で言動を展開し、百年昔の人物たちが今日現在の友人のやうな親しみを覺えさせる。

今回の展示で氣に入ったのは、嫁いで次第に女の色氣を失なっていく様々な女のスケッチ「細君のいろいろ」、



そして政治家に立候補して選挙に挑むまでの悲喜こもごもを諷刺味たっぷりの双六に仕立てた「選挙競争双六」の二點、



ニンゲンは笑はせるつもりのないはうが、却って笑ひの材料となる。


もうひとつ興味をそそったのが、松本清張が「西郷札」でデビューする直前に地元九州のローカル紙に發表してゐたとされる新聞小説二編が日本新聞博物館の収藏庫から發見され、期間限定で特別公開されてゐるもの。



作者名はいづれも松本清張とは名乗ってゐないが、大阪大學の研究者が松本清張の作と特定云々、GHQ肝いりの週刊紙だった「朝日ウィークリー」昭和二十五年九月三日付が「ある盗賊の話」で、博物館に展示の繪巻物を盗んででも手に入れたい華族の愛好家と思ひ止まらせたいその奥方、両者の板挟みになる悪德古物商の三者駆け引きが緊迫感をもって簡潔に描かれ、同十七日付が「百八煩悩」、老僧が若い女との回想から幻想へと惑はされ石段から転げ落ちていく噺、いづれも四千字ほどの短編で、とくに前者は明らかに後の松本清張の作品形式の原型を成してゐる。

二作品とも題名だけは愛好者や研究者たちに知れてはゐたが、掲載された週刊紙「朝日ウィークリー」がすでに殘存してゐないため幻扱ひとなってゐたところ、國立國會図書館ではなく新聞の博物館からこのたび發見されたおかげで、なかなか貴重で濃密な讀書時間を過ごす。





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最終更新日  2026.08.13 20:30:23
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