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トンイ長いあらすじ(小説風)完全版一覧1~60話 byちょびかじり コピペ厳禁よ

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2019年06月05日
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チェ・ヒョウォンがアジトへ姿を見せると、手下たちが道をあけた。

コムゲの頭……

それがトンイの父さんの正体であった。

洞窟の一番奥へ奥まで進む間、頭を垂れた手下たちの長い列が途切れることはなかった。

ドンジュのそばには友人のチョンスもいる。浮浪者に変装してヨンギ従事官にメモを渡したあの若者だった。

子ブタみたいに可愛い目をしたケドラの父さんは、愛情たっぷりの普通の父親だ。ここに集まっている多くの人がそうだった。もちろんトンイの父さんもトンイのことを大事に思っていて、トンイからの手縫いの贈り物のお花のアップリケの巾着袋を肌身離さず持ち歩いていた。

彼らはみんな家族を売られるか殺されるかして、無念の涙をのんだ者ばかりだった。

紫色のはちまきには、二本の白い角のマークが浮かんでいる。これがコムゲの証だった。

たいまつの炎が洞窟内部を隅々まで照らすなか、壇上にあがったお頭の姿は、総勢三百名の熱気に包まれ、豆粒ほどにしか見えなかった。それでも一人一人がお頭の熱い演説に心を震わせ、たいまつや槍をかかげて吠えたてた。


ヒョウォンは息子のトンジュや仲間数人を呼んで、会議のため洞窟内部のほったて小屋に入った。丸太のテーブルにちびたロウソクと地図を広げた。
一班は高官三人が殺された手掛かりを探す……
第二班は三人のいた各部署の役人の動きを探り、三班と四班は朝廷の重臣たちを見張ることが決まった。
一連の殺人事件は、政府内の陰謀に違いないと思ったからだ。

会議も一段落し、洞窟の入り口で白い人影が細長く浮かびあがった。

捕盗庁へ忍び込んだ密偵が、何か新しい知らせを持ってきたようだ。

それは驚くべき報告だった。

なんとソ・ジョンホを乗せたコシを、何者かが狙っているという……

一刻の猶予もならないため、ヒョウォンはたった数人の精鋭を連れて、ソ・ジョンホ救出に向かった。行き先は崇陵方面である。

そこで山中に放り出された輿を発見した。

しかしすでに手遅れであった。
輿の内部でソ・ジョンホの死体を見たとき、さらに思わぬ光景がヒョウォンを襲った。

たちまち禁義府の兵が現れ、コムゲを包囲したのである。


門安婢の帰り、トンイは偶然にも信じられない光景を目撃した。
父さんと兄さんが奴隷のようにつながれ、町を歩かされているのだった。

「お父ぁーん、お兄ちゃぁーん!」

野次馬の中からトンイが泣き叫ぶと、父さんがこっちを振り返って、悲しそうに小さく首を横に振ってみせた。

ここへ来てはいけない。隠れていなさい。
そう目で訴えているようだった。

トンイは美しい着物姿の自分を、今初めて本当にバカみたいだと思った。ご褒美欲しさにわがままを言って、勝手に家を抜け出したりしたから罰が当たったのだ……

泣きすぎてトンイの目は、ひな鳥のように腫れてしまった。けど今さらどんなに後悔したってもう元には戻せない。

トンイのことを心配そうに最後までちらちら振り返って見ていたドンジュ兄さんも、父さんと一緒にだんだん遠く見えなくなってしまった。


オ・テソクは机に座って、したたかに計画を練るタイプだった。
それでいてさも何も知らない風にとぼけて見せるところがある。
実行犯は甥のオ・ユンに任せていた。
オ・ユンは背が高くて、野望もありそうだが、まじめに任務をこなすところが気に入っていた。

策略は上手くいったと思う。誰も賎民の言い分など信じはしまい。事件は時と共に人々の記憶から消え去るのであった。

テソクは一仕事やり終えたときの気持ちのいい息をついて、旅の男を部屋に招き入れた。その人並み外れた神通力は、ピタリと未来を予言するとの噂だった。前もって呼んでおいた若い女をお披露目するつもりである。

小花の刺繍をあしらった衿元に、明るいピンク色の衣が、ぱっと差し込む春風のように、美人の女は華やかだった。

「チャン・オクチョンと申します。どうかお見知りおきを……」

オクチョンは軽い挨拶だけを済ませ、すぐにも退出していった。

「あの娘を王様の側室に推すつもりだがどうかね?」

テソクが旅人に尋ねた。

オクチョンの余韻に気を取られ、まだ障子をぼんやり眺めていた旅人は、はたと我に返った。

「側室……? それどころではありません! 天乙貴人の相です。王室に入れば頂点を極めることは間違いありません」

そう言いながらも、なぜか腑におちないことでもあるかのように、眉を潜めた。

帰り際、旅人はオクチョンとすれ違いざま声をかけた。

「あなたの他に、もう一人います」

「……何のことでしょうか?」

オクチョンが足を止めて、振り返った。

「もう一人、あなたと同じ相を持つ者がいるのです。あなたはそれに立ち向かわず、できれば避けた方がいい。あなたは全てを手に入れるが、もう一人はすべてを失い、そしてそこから始まります」

「では、もう一人が私の影なのですか?」

「いいえ。影はあなたの方です」

旅人の答えを聞いて、オクチョンは不安な表情を浮かべた。


父さんの正体が実はコムゲのお頭で、ソ・ジョンソ殺しの犯人に仕立てあげられたという事実を、トンイはチョンス兄さんから初めて聞かされた。

夜になって、いったんチョンス兄さんと山中に隠れた。武器の保管庫でもある小さなほら穴には、ケドラの父さんや逮捕をまぬがれた顔見知りの大人たちが集まっていた。

武器は大量にあっても、爆薬の材料はない。それで大人達はしばらく話し合いをしたあと、材料集めに町へ下りることになった。トンイもどうしてもと志願して、ようやく一緒についていけることになった。

町にはコムゲの人相書きが貼り出されていた。

幸い花火屋の主人は、門安婢の服を見て、トンイのことをお嬢様と勘違いしたようだ。ケドラの父親のことは使用人か何かと思ったらしく、そのままトンイと一緒にすんなりと店の奥へと案内した。
ヒモで連なる小さな筒花火が、丸い束にして柱に垂れていた。大きい筒花火は筒の色ごとにテーブルに寝かせてある。束になった花火は矢ほども長く、赤い竹筒に金の吹雪を散らした花火は、両端の穴からヒモを通して何個か縦にぶら下げてあった。

「この店に爆竹の筒があると聞いたんだが。赤い花火はないかね?」

ケドラの父さんが聞いた。

「はぁ。赤でございますか…」

主人は一人で隣の倉庫へ探しに行った。

その隙にケドラの父さんは外に待たせておいた仲間を呼び込み、棚に置かれた升箱のフタを手当たり次第に開けてみた。茶筒や鉢まで荒探しして、何とか必要な材料を手に入れた。

作業の間しばらく外で待たされていたトンイは、店の表通りから横に外れたひとけのない路地で奇妙な光景を目にした。

小太りの中年男が、後ろにリボンを垂らした若い女官と立ち話をしている。男の頷き加減から、立場は女の方が上にあるようだ。女には何か生まれながらに備わった気性の強さが感じられた。

トンイが妙だと思ったのは、その女官が袖口から、ほんの少し手をのぞかせ、何か人目を気にするように手信号で会話を進めている点だった。

親指と人さし指で前をさし、手のひらをパッと開いて閉じ、最後にまた開いた。男にはその意味がわかったらしく、こくりと頷くと、すぐにどこかへ消え去った。

続いて女官もその場を立ち去ろうとした。
そのときぽろりと蝶のストラップが地面へ落ちたのをトンイは目撃したのだった。

トンイはすぐにも駆けよって、そのストラップを拾いあげた。

それはとても美しい蝶々の木彫りで出来ていた。
羽の斑点は透かし彫りで、花と玉飾りをあしらった組み紐の持ち手がついている。下の方には金属の鍵棒と茶色い房が垂れていた。

とても大事なものだったらしく、トンイが声をかけると、オクチョンは丁寧に礼を言った。


翌日、渡し場までチョンス兄さんが送ってくれて、男の子に変装したトンイが船に乗り込んだ。

すでに大きな船が二隻、港についており、桟橋は肩が触れ合うほど人でごったがえしていた。仮設テントから市場さながらの威勢のよい声が響いてくる。風通しがいいので、染物屋が糸や布を干していた。

チョンス兄さんは別れ際に、コムゲの証であるハチマキをまるで形見か何かのようにくれた。

後からお父さんやお兄ちゃんと一緒に行くことになっているという。
チョンス兄さんがそう約束してくれたので、トンイは少しはホッとして、船の隅の方へうずくまった。

チョンス兄さんが去ってだいぶ経ってから、二人の商人が船に乗り込んできた。重い荷物を床へおろすやいなや、息せき切ったように世間話をはじめた。

「おいおい聞いたか? コムゲが逃げちまったらしい」

「打ち首だろう?」

「そうだよ。コムゲの残党が兵士を襲ったそうだ。その連中が向こうの絶壁の岩場へ逃げこんだんだとさ」

トンイは思わず断崖絶壁の岩山を見上げた。
次の瞬間、慌てて船を飛び降り、岩山に向かって無我夢中で走り出した。

途中で雨が落ち始め、そのうち土砂降りになってきた。

ようやく絶壁へ到着したトンイは、この世のものとは思えない光景を目の当たりにした。

本当に雨ばかり降って、残虐の痕を洗い流すようにとても静かだった。
そこら中の死体から血が広がり、雨に打たれて水たまりのように跳ねあがっている。泥でぬかるんだ地面には、無数の槍が散らばり、兵士もコムゲも見分けがつかないほどだった。

トンイは父さんのかも知れないと思ってワラ靴を拾いあげた。雨をどっしり吸い込んで重く、ほころんだヒモから、ぽたぽたと滴が垂れてきた。

トンイは血眼になって父さんや兄さんを探すうちに、とうとう絶壁の先へ行き着いた。
もし真っ逆さまに落ちたら、下の川へ体をたたきつけられる前に、途中で息が尽きてしまいそうなほどの天空の絶壁だった。
そこへ巾着袋が一つ落ちていた。
色違いの布を花びらの形に縫いつけてある……
いつかトンイが父さんにプレゼントしたものだ。

トンイは絶望のあまり、どうしていいか分からなくなった。

ここにはもう自分の他に、生きている人は誰一人ないのだ。


山を下りる間に、疲れて眠ってしまったらしい。不気味な風がざわざわ笹を揺らし、目が覚めた。辺りはすっかり真っ暗になっていた。

廃れた集落を見つけて、一晩泊まることにした。ザルが転がっていたり、縁側に扉が倒れたりして、大風が吹いたあとのようだ。

寒さに手をこすり合わせながら床板の部屋に入ると、トンイはシーツだか布団だかわからない布に、そのまま倒れ込むようにして眠りについた。

父さんや兄さんも失った今、トンイはもう帰る家さえないのだった。



2011/5/1











最終更新日  2020年01月09日 11時35分24秒



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