4:おばけちゃんの引越しと沈んだ財宝元祖ちゃんは既に体長1mmでただの三角点を卒業し、細長いしっぽが確認できるようになった。「生まれてから4日たったらエサをあげましょう」と言われているが、詐称した誕生日は4/16であるものの、本当に生まれたのはそれより前だから、そろそろえさをあげてもいいのかなと思い、「3」の袋の中身をほんの少し与える。食べているのかどーか全然わからない。そして、さて、おばけちゃんのコップをみて驚いた!見事に元祖ちゃんの3倍はいる。何百匹ものおばけちゃんが元気に泳ぎまわっていた。おめでとー!!おばけちゃん。 ■おばけちゃんコップ(右側のほうの茶色いてんてんがおばけちゃん) 正確なところ、元祖ちゃんとおばけちゃんは種類が違うらしい。 元祖ちゃんは改良型「アルテミア・ナイオス」で、おばけちゃんであるフツーのブラインシュリンプ(アルテミア・サリーナ)とはちがうんだそうな。でも見た目元祖ちゃんのほうがちょっぴりうす茶色、おばけちゃんは白っぽいという以外、泳ぎ方も形も違うとは思えない。 その、おばけちゃん、見ていたらなんだかとても可愛そうになってきた。 「おばけえびの卵」の袋には、得体のしれない元祖ちゃん「2」の袋と違い、純粋に卵しか入っていないのだけど、結構な量が入っている。フツーの子供なら迷わず全量を投入してしまうだろうところ、私はコップの水の量や、孵化しなかったときのことを考えて、少量だけを入れてみたのだ。それにしてもすごい量孵化している。 もともとはこの半分の水の量で育てるはずだったと考えるとおそろしい、これではすぐに水が酸素不足となりにごって全滅だ! 私はとなりの元祖ちゃんの水槽を再び眺めてみた。元祖ちゃんは広々とした水槽を悠々と泳ぎまわっている。広いお庭で遊ぶお金持ちのお嬢様。それに比べ、おばけちゃんは狭いコップの中でひしめきあい、にごった水の雑踏の中で死んでゆくすさんだ幼少時代・・・やはりここにも差が!ゆるせん!差別反対!平民にも生きる権利を愛の手を!!! ・・・てことで早速私は近所の熱帯魚屋へ走った。「人工海水の素くださ~い」と告げると、上手い具合にその店には小さい袋が置いてあった。(店によっては「こんなにいらねーよ」というくらいの量のパッケージしかおいてなかったりする)そこで大枚980円をはたき、私は「SEA LIFE」という人工海水の素をゲットした。 ■人口海水の素。 学研のすすめどおり、台所の荒塩をつかってもよかったんだけど、これ以上おばけちゃんにふびんな思いはさせたくない。万が一のことがあっては大変だ。聞くところによると、学研の「海水のもと」はただのお清め塩ではなく、ちゃんと人工海水のもとが入っているというウワサだ。それに、エサ用ブラインを孵化させている方々も人工海水を使用しているらしい。だからこれさえあれば、大きい水槽で、残りの卵を孵化させることだってできる。 ちょうどいい水槽がなかったので、「こんこん湧水」のペットボトルを利用して、おばけちゃんの新居を作成した。本当は元祖ちゃんに負けない立派な水槽を用意してあげたかったが、海水の素に予算をはたいてしまったため、ガマンしていただく。しかし、1リットルの水が入る豪華な水槽ができあがった。もともとペットボトルの形には凹凸があるため、ところどころ内部が拡大されて見えるのもGoodじゃん。 ここに800ccの水をいれ、「SEA LIFE」の説明書きにある濃度になるように量をはかって投入した。今すぐにでも引越しさせてあげたい気持ちをガマンして一晩置いたあと、おばけちゃんを引越しさせた。この時点ですでにコップの底には多くの「おばけちゃんの死体」と思われるものが沈んでいた。もっと早く気づいていればと悔やまれるけど、コップの中で元気に泳ぎまわるおばけちゃんの量は昨日より増えており、とりあえずその子たちを救えたということでよしとした。水が多くなったから大丈夫だろうと思い、少量のえさも投入した。 元祖ちゃんとほぼ同じ広さの環境を得たおばけちゃん、これで引け目を感じることなくのびのびと育って欲しいと願うばかりだ。 ■ニューおばけちゃん水槽。ときどきエアレーションできるようにポンプ装備。 さて、人工海水の素を買いに行くときに娘を連れて行ったので家に帰って娘が「これ、なんにつかうの?」と聞いてきた。「いや、ブラインシュリンプのコップが狭そうだから、広くしてあげようと思ってね」と私。すると娘は「ブラインシュリンプってどこにいるの?」 ・・・「ほら、シーモンキーのとなりのコップよ」「え?あれはおばけえびじゃないの?」 そこで私は気づき、「シーモンキーもおばけえびも実はブラインシュリンプなのだよ」ということを説明してやったのだが、それまで娘は完全に3種類とも違う生物で、「シーモンキーはサルのような生き物」「おばけえびはおばけのようなえび」「ブラインシュリンプはブラインのようなえび」だと思っていたそうだ。 ・・・ブラインのようなえびってなんだよ!とつっこむのは後にするとしてやはり学研さんに言いたい。4年生でブラインシュリンプをフロクにつける際、やはり「じつは1年生の時の付録のおばけえびは本名をブラインシュリンプというのです。だましてごめんなさい」という説明をつけていただきたいっ!子供は意外と純粋だよ。うん。 母の水槽で元気に泳ぎまわるブラインのようなえびをみて、娘はとてもうらやましくなってきたらしい。「いいなーいいなー」を連発しながら、水槽の前を離れなくなった。 「なんかさ、観察しだすと飽きないね」といいながらじっと水槽を見つめる娘に対して、善良な母としては自分だけが楽しむのが後ろめたくなり、「セットを購入している事」を黙っておけなくなってしまった。 迷ったあげく、火星やお城やロボダイバーのセットは押入れの奥に隠し、自分には一番魅力がない海賊船のセットを娘に差し出した。 それは、私にとっては他のセットに比べて劣るものではあるけれども、学研の飼育セットしか見たことのない娘にとっては十分すぎるほどに超豪華だ。夢のようなセットだ。 フルカラーのイラストでは潜水服に水中メガネのシーモンキーが熱帯魚と一緒に泳ぎまわり、スポイトや袋のセットが水槽と一緒にきっちりとレイアウトされている。 「ひゃーこれ、海賊船が暗闇で光るんでしょ?すごーいすごーい!!」と、英語が読めないくせにイラストだけで内容を理解し、大騒ぎしている。(英語が読めればもっとすごい事『水を加えるだけ!』とか『銀河系で一番楽しい生きたペット!』だとかが書いてあるんだが、イラストだけでも十分だ) やはり、この種類の喜びは学研では味わえない。さすが、元祖アメリカンドリームの国の製品だ。子供の喜ぶツボを心得ている。母が欲しくなるのも無理はないな。 ただ単純に喜んでいるだけかと思ったらイラストをみながら娘が言った。「もともとシーモンキーなんだから、泳ぐのに水中メガネいらないじゃん」…おお、子供だましにつっこみ入れられるほど成長したな、娘よ。 しかし、苦労してアメリカから取り寄せた商品だ、無駄にされてはかなわない。「すぐにあけてみた~い」という娘に母として教育的立場から言った。「これは、机の上で育てたらいいと思うんだけど、机の上が散らかったままでは水槽を倒しちゃったりするから、ちゃんと部屋や机の上をかたづけたら開けてよしっ」 そんなわけで、娘はすぐにこのセットをあけることができず、大切に机の上に飾ってある。ツッコミは入れられるが、親にはさからえないビミョーな年頃である。 ■娘にあげたセット「Sunken Tresure」 直訳すると「沈んだ財宝」か、たいそうな。沈んでいるのは卵のカラとシーモンキーの死骸だけだろう・・・ ■箱の裏面。ピンボケで小さい字がよめずごめんなさい。「Color-Changing Pet Sea-Monkeysが一瞬でうまれて2年以上生きます」だの、すごいことが沢山書いてあります。 とにかくアメリカの商売は誇大広告っていうか自信たっぷりっていうか、JAROが無いから言いたい放題だ |