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アロマ姉さん繁盛記from南房総

アロマ姉さん繁盛記from南房総

「やさしい竜」2000.7

第1話   「やさしい竜」の巻き

 昨夜の1場面

今日のお客さんは、かわいいしとやかなタレント似の女の子。
ベッドにあがろうというその瞬間にそのクライアントは言った。
「背中に、少し・・・・入れ墨が有りますけれど・・・・気にしないで。」と
「あ・・・いいですよ。」
今、若い子の間ではやっている、ファッションとしてのアレだなと思った。

アロマベッドにうつぶせになったクライアントのタオルを背中から、 軽い気持で
外した。 一瞬、息を飲んだ。 背中一面、おしりの下までかかる竜の入れ墨。
おもしろ半分で入れたものとは思えない。

タオルを外す瞬間にそれを告げたのは トリートメントをどうしても受けたかったの
だと思った。 背中の中心にくる竜の顔はとても優しかった。 自分の意志で入れ
たにしても、そうではないにしても、これだけのものの奥には どれほどの苦しみ
が有ったのだろうと思うと、背中をマッサージしながら胸が熱 くなった。

その竜の鱗の間にぽつりと見える小さなニキビに、痛々しい若さがあった。

何も語らずに帰っていった。
何も聞かずに、見送った。

タオルを外す瞬間に、素肌をさらす瞬間に、本当にドラマのある仕事だと思った。



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