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昼の暑さは相変わらずだが、夕方になると風に秋の気配が混じりはじめた。
秋は夜から始まる。 夕食後、久し振りに自転車を漕いで花火を観に出かけた。 会場は今年も大変な混雑だろうから、今年は近場の花火スポットで観ることにする。 自転車を漕いで夜の道を進み、駅近くの陸橋へ。 花火大会の会場からは離れているのだが、混雑を避けたい地元の人が集まる場所だ。 時計を見ると花火大会は始まったばかりなのに、陸橋の上は既に多くの人が集まっていた。心なしか小さい子を連れた家族が多い。やはり小さい子を満員電車のような会場に連れて行く気にはなれないのだろう。 陸橋の頂上を少し過ぎた辺りで欄干に凭れながら花火を観ることにする。 500円玉ほどの大きさの花火が地平線近くの夜空に模様を描き、水面に浮かぶ波紋のように広がりながら消えていく。夜空が黒一色に戻り、程なくして遠くからポンという音が耳に届く。 夜空に描かれる様々な模様を眺めながら、ふと去年のことを思い出していた。 去年はここではなく会場で花火を観ていた。 あまりの混雑で会場に着くまでに疲れ果ててしまい、顔をしかめながら来年は来ないぞと言うと、連れはおかしそうに笑った。 やがて花火が始まり、花火が文字通り夜空を染め上げると、隣に連れがいるのも忘れて夢中で眺めていた。 今年は去年言ったとおり会場から離れた場所でのんびり花火を眺めているのだが、去年ほど花火を楽しめていない自分がいた。 それが、離れた場所から小さな花火を観ているからなのか、みんな誰かと談笑しながら花火を観ている中で一人黙って花火を観ているからなのかは分からなかった。 もともと輪の中心にいるよりもちょっと離れたところにいる方が好きだし、人が楽しそうに過ごしているのを見るのは嫌いじゃないのだが、今年はなぜこんなことを考えるのだろう。 連続で上がった花火が夜空に華やぎを添え、それが消えると長い沈黙が訪れる。 次の華やぎへの休憩時間なのか、それとも全ての華やぎが終わったのか、離れたここからは分からない。 次の花火が上がるはずだと思ってはいるのだが、なぜか焦燥感に駆られていた。 しばらくして白い光が地平線から夜空に向かって伸びるのが目にはいると、焦燥感は霧散し、ほっとため息をつく。 そんな僕を笑うように赤い花火が広がった。 二時間ほどで花火大会は終わり、僕は自転車を止めておいたコンビニでアメリカンドックを買うと、口に頬張りながら家路を帰った。 遠花火 消ゆる辺りは 母の里 (椋鳩十) <追記> その時に撮った花火の写真です。 ぶれてしまったので止めようかと思ったのですが、せっかくですので載せておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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