アルタクセルクセスの王宮址遺跡

2007/10/22(月)05:08

「世界最古」ネタ二題

歴史・考古学(131)

 シリア北部、トルコ南部ではダム建設に伴う水没遺跡の緊急発掘が数多く行われているが(日本の調査隊も加わっている)、最近目覚ましい発見が多いようだ。その中から最近報じられた「世界最古」の発見ネタを二題紹介。  記事の解説が面倒なのでとりあえず「Abenteur Archaeologie」のホームページの記事から、抄訳だけ載せることにする。 ・「世界最古のカップルの墓発見」(リンク先に写真あり) (訳出開始)  トルコ東部で珍しい発見があった。ハケミ・ウセの遺丘で、おそらくカップルとみられる二人が葬られたおよそ8000年前の墓が発見された。二人は新石器時代の20代の女性と30代の男性で、互いに抱き合うように一つの墓に葬られていた。  ハジェテペ大学のハリル・ティルキンによれば、この二人の関係を示す埋葬方法であるという。死因についてはまだ不明であるが、二人は疫病か不自然な理由で死んだ可能性がある。  最近イタリアのマントヴァで抱き合う二人の墓が発掘されている(関連記事)。約6000年前の新石器時代のこの墓はこれまで世界最古の「愛する二人」の墓と見られてきた。それまで新石器時代のカップルの埋葬は見つかっていなかった。  ディヤルバクルの70km東方にあるハケミ・ウセの発掘は、ウルス・ダム建設に伴う古代遺跡緊急調査の一環として2001年に始まっている。(ミリアム・ミュラー) (訳出終了)  マントヴァの発見の時に僕も日記に書いたけど、「世界最古」ってのはミスリードじゃないかな・・・?ドイツを調べただけでも、旧石器時代にもあるぞ。しかも写真を見るとこの二人、並んではいるけど向き合っても抱き合ってもいない。男が女に背を向けてるように見える。  ま、「墓まで一緒」ってのは夢のある話ではあるけど。マントヴァのカップルが「新石器時代のロミオとジュリエット」なら、こちらはさしずめ「新石器時代のライラとマジュヌーン」か。でもあれは男が女に恋い焦がれて発狂する話だから、女に背を向けているのはおかしいな。 ・「世界最古の壁画」発見(リンク先に写真あり) (訳出開始)   「これはパウル・クレーの絵のように見える」、とエリック・コクーニョ(訳注:読み方これでいいのかな?)は呟いた。この考古学者やフランス国立科学研究センターの発掘チームは、9月末におよそ4平方メートルの大きさの壁画をユーフラテス河沿岸のジャアデ・エル・ムガラにある新石器時代集落で発掘した。それは今のところ世界最古と呼べる壁画である。白地に碁盤の目状に赤や黒で描かれた図柄である。  放射性炭素測定法にそれば、この壁画は紀元前9千年紀、つまり1万1千年前のものである。  この壁画が見つかった円形遺構は、集落内のおそらく公的な建築物だったと推測される。住民たちは集会や祭礼のときにこの建物を使ったのであろう。  このような公共建築物はユーフラテス河沿岸の新石器時代の遺跡でも見つかっているが、壁画が見つかったのは今回が初めてである。これまで世界最古の壁画といわれていたのは、トルコ東部(訳者注:トルコ東部じゃないだろ!)にあるチャタル・ホユック(ホームページ)で見つかったものである。  ジャアデ・エル・ムガラの発掘調査はユーフラテス河中流におけるティシュリーン・ダムの建設に伴う遺跡の緊急発掘調査として1990年代初頭に始められた。(ミリアム・ミュラー) (訳出終了)    チャタル・ホユックの壁画は紀元前6000年くらいだっけ。あと「壁画」というなら旧石器時代にも洞窟壁画があるが、あれは建物の壁じゃないので、厳密には「壁画」ではないのだろうか。まあ「最古」をつけるのは考古学報道の常道だからな。  トルコ南東部やシリア北部では新石器時代に関する目覚ましい発見が相次いでいるなあ。この10年だけでも新石器時代像はだいぶ変わったように思う。考えられていた以上に複雑で深い信仰や祭司が行われていたことが明らかになってきた。都市の起源は経済活動に求める説が強かったが、最近ではこうした祭祀センターこそが人間の集住の始まりと唱える人もいる。僕はこの時代は専門じゃないのであまり書くとボロが出るから深入りしないけど(笑)。  ただまあ、ダム建設に伴う緊急調査、というのが複雑なところ。遺跡によっては水没して失われてしまうし(1990年代に調査が始まってもまだ沈まない遺跡もあるが)、調査されなかった遺跡も数多い。ティグリス・ユーフラテス河の水資源をめぐっては、上流から順にトルコ・シリア・イラクがそれぞれダムを建設して争奪戦が起き(上流のトルコが一番有利ではあるが)、対立の原因にもなった。  この地域のこの時代の遺跡では、日本隊も紀元前7000年頃の完全に残った女性土偶を発見・修復して5月に朝日新聞で報じられたが、元記事のリンクが切れてしまっている。残念。ここに写真が出てるけど。ちなみにこれは「世界最古」じゃないです。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る