第7官界彷徨

2016/06/28(火)19:57

高瀬舟

シネマ(203)

 多田富男さんの能、生死の川ー高瀬舟を、NHKの「古典芸能への招待」で見ました。場面は,今は囚人護送の役目を終えて物資を運ぶ高瀬舟に乗り込んできた異界の男。彼は末期ガンに苦しむ妻を安楽死させたのです。 たまたま、CSの時代劇専門chで「高瀬舟」という1時間ほどの作品を見ました。森鴎外のあまりにも有名な「高瀬舟」ですが、付き添いの役人が囚人の心根に「人の尊さ、その価値」をしきりに考えている・・・くらいの記憶しかなかったのですが、幼い頃に親に死に別れた兄弟が助け合って成長し、その後働けなくなった弟が兄の足手まといにならないために自殺しようとして、果たせず苦しんでいるのを兄が見つけ、苦しみから解き放つために弟を殺してしまった・・・といういきさつがあったのでした。 脚本は松山善三、ナレーションは市原悦子で護送の役人は前田吟でした。 高瀬舟の通過する高瀬川は細い運河で、その周辺には家が立ち並び、人々の暮らしが描かれます。島流しになる男は、そういう暮らしとは無関係の最下層に生きてきましたが、「島流し=居場所」が与えられ、二百文の支度金が与えられたことに安堵の喜びを語るのです。 舟は狭い川をいくために、折々、ほかの舟と行き交うために「舟入り」といって岸につけます。そこで役人、囚人、船頭の会話が深まっていきます。  護送の役人が次第に囚人に心を寄せていくところや、兄が弟を思い兄弟がやっとのことで生きる姿など、なかなか良いドラマでした。 そのあと、CSで久しぶりに「ギルバート・グレイプ」を見ました。これも、兄のジョニーディップが知恵おくれの弟、レオさま・・・ディカプリオ(18歳の誕生日)を愛して見守る物語。 父が自殺したグレイプ家では、母がそのショックから立ち直れず、引きこもりの過食症。ジョニーディップは母、2人の妹、弟の面倒を見て、いっぱいいっぱいになりながら暮らしています。 そんな彼を見守る友人たち。 以前は、経済的に苦しい家なのに、物がいっぱい・・・だなあ、アメリカだなあ、と見ていましたが今の日本の貧困家庭って、これに似ているかも。 彼に希望を与えてくれたのは、トレーラーで旅しながら暮らす一人の聡明な少女の愛情でした。 ジョニーディップもディカプリオも上手!兄弟愛って洋の東西を問わず、お互いを掛け値なしに思いやれれば、永遠に良いものなのですね。 

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