第7官界彷徨

2016/12/06(火)19:44

西加奈子さん

読書日記(148)

 ポプラ社から、長編小説「i」=アイ、を出した、直木賞作家の西加奈子さんが、東京新聞夕刊に登場。  西さんの本は、「サラバ!」を読んだけど、あんまり共感を持てなかった。世代が違うので、問題にすべき点が、少し違う、という感想。ベストセラーになったし、共感する人が多いのでしょうが。    今回の「i」は、東日本大震災、国会前の反原発デモ、シリア内戦、爆弾テロ、などの世界中の悲しいニュースに耳を澄ませながら、シリアで生まれ、米国人と日本人の夫妻の養子となり、ニューヨークの裕福な家庭で育ち、東京に来た少女アイが、いろいろな問題に向き合っていく中での成長物語・・・・らしい。  西さんは 「シリアに行ったこともない、周りに難民や養子の友達もいない。そんな私が小説に書いていいのか、傲慢ではないか。すごく悩みました。」しかし「たとえ非難されても、物語に責任を持つ覚悟がるなら書くべきだ」という強い思いに突き動かされたそうです。  震災と原発事故をきっかけに、アイはデモに参加し、大切な人と出会う。遠い母国シリアの惨状に心を痛める。アイが「渦中にある人しか苦しみを語ってはいけないのか」との問いにもがく姿は、作家自身の葛藤とも重なる・・・そうです。  西さんは 「震災の後、自分の悲しみを相対化して、『ほかの人の悲しみに比べればたいしたことない』と思おうとする人を見て苦しかった。そんなことない、思い切り悲しんでほしいと伝えたかった」  その思いから、今回、世界の情勢や原発問題などを描くことに踏み切れたそうです。  「私の小説はきれいごとやとか、ハッピーエンドが嘘くさいとか言われることがある。でも私は全力でそう思っているし、そう思いたい。この作品は自分自身の決意表明みたいなところもあります。」  と語っているそうです。  力強い発信源になってほしいと期待します!  そうそう、アイとは、数学の世界で二乗してマイナス1になる虚数単位「i」のことで、愛とも自分の「I」ともとれるそうです。

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