久保ひとみさんの新作
自然の中で見られる何でもない、或いは見逃してしまいそうな景色です。チカラシバでしょうか?久保さんは写真を元にこの作品を描きました。元の写真とは随分と変わりましたが、私は写真より、この絵画の方にずっと惹かれてしまいます。久保さんは画面に見えてくる光のことをとても深く考えて描いています。また画面からにじみ出てくる色の深みのことにもとても気を遣って表現していることが見えます。この絵の元となる写真から見えてくる色は直感的に何色であると指摘したり、把握することができます。そしてその色をパレットの上で絵の具によって即座に色を作り出すこともできます。私は久保さんに今回は絵の具の塗り重ねから画面の中に感じる光を作ってみましょうと助言しました。どういうことかというと1回の塗りで対象物の色の表現をするのではなく、何回か少しずつ色の変化を加えながら、自分の望む色を表現してみようということです。あえて1回で的確な色を表現するのではなく、的確な色から少しずれた色を選択し,塗りを何層も重ねることによって的確な色に近づけていく表現にするということです。そうすると色がの重ねによって、1回で塗り終えるよりも、表面に見える色に深味を感じるようになります。久保さんにとってかなり難しい課題でしたが、見事にクリアしました。そしてなんとも言えない趣のあるチカラシバの野原になりました。画面の中で見られる遠近感、明暗にもぼかしを使った表現を取り入れて表現したことも良かったなと思いました。