2009/10/27(火)22:20
中国茶は難しいか(5)
<難しい点3:農作物であり、工芸品でもある>
これは、お茶に限らず、食品全般に言えることでもあるのですが、農作物というのはなかなか難しいものです。
まず、ピンからキリまでという言葉がピッタリ。
日本の国産の米でいえば、標準米から南魚沼産の最高級コシヒカリまで、まあ幅がだいぶあるわけです。
しかも「値段が高ければ旨いか?」というと、嗜好性もあって、必ずしもそうは言い切れない。
もちろん、高いものは高いなりの評価をされるポイントがあるんですけど、悩ましい世界です。
品質は、特定の産地であったり、品種であったり、季節(時期)であったり、生産者の手間であったり。
そういうものによって左右されます。
また、天の恵みの農作物ですので、その年の天候も出来に影響します。
#といっても、大体、ある程度の幅の中に収まるので、そんなに大ブレするわけではないのですが。
そして、お茶は摘んだら、すぐに商品になるわけではなく、そのあとに製茶という重要な工程があります。
機械化されることも多くなりましたが、製茶は一種の伝統工芸のようなもの。
本などを見ると、かなり簡単に製造工程を記してあります。
が、現場で実際に自分でやってみると、農家の方が平然とできることでも、なかなか上手くできません。
「言うは易く行うは難し」とは、まさにこのこと。
手の動かし方など、1つ1つの動作、それ自体がノウハウなのです。
実際にお茶づくりをしてみると、製茶というのは、膨大なノウハウ(理論と経験)の積み重ねだと実感します。
そういう仕事に一生を捧げている人たちが懸命になって作るから、美味しいお茶になる。
製茶は、まさに職人の世界と言っていい。
機械化するにしても、フルオートメーションにはできませんから、微妙なコントロールが必要です。
この調整にも当然ノウハウがあるわけで、機械化をすれば、製茶の価値が下がるということはありません。
農作物でもあり、工芸品であるからこそ、全く同じお茶というのは世の中に存在しない。
まさに一期一会。
これは、お茶の悩ましい点でもあり、面白い点でもあります。
* * * * * *
農作物であるがゆえに、価格の問題も悩ましいところです。
紅茶のように大手ブレンダーが存在すれば、それは一種の工業製品のように規格ができるのでしょうが、残念ながら中国茶の世界に、そのような巨人は存在しません。
そのため、各社(お店)が独自の名前づけをしており、商品名がややこしい。
例えば、自分が仕入れた中で一番上の茶葉なら”特級”だの”特選”だの”茶王”と名付けたりしますが、それは何か明確な基準があってのものではありません。
ほとんど、取り扱いラインナップの中の”序列”に過ぎません。
#一応、国家標準は物差しとしてありますが、それとは全く別につけられていると思った方が間違いないです。
ですから、価格と味のバランスというのが、分かりづらい。
日本茶なら、なんとなく煎茶で100g1000円を超えたら良いお茶?のような相場観が一般の人でもありますが、千差万別の種類の集まっている中国茶では、それもつけにくい。
普段、買い物に行かない人が野菜(ちょっと前に話題になったカップラーメンでもいい)の値段を見て、高いか安いか分からないのと一緒です。
やはり、ある程度の経験は必要なわけです。
また、お茶の世界に”特売”はありません。
安いものは安いなりの理由が、高いものには高いなりの理由があります。
意外に経済合理性のある価格が提示されていることが、ほとんどです。
その理由が納得の行くものであり、味と価格の釣り合いがとれると思えば、”買い”です。
この値段の高いor安い理由というのは、実際に説明されながら飲めば分かるもので、そんなに特殊技能ではありません。
これは評茶とは別次元の話です。
お店によっては、その判断に必要な情報を文字で与えてくれているお店もあります。
そのようなお店であれば、コツを一度つかんでしまえば、値段と味のバランスが価格相応かどうかは判断できると思います。
実は、これこそが消費者にとって、もっとも身につけたいことだったりします。
次でまとめます。
続く。
一期一会だから面白かったりします