2012/04/20(金)11:56
青にまみえる
1月に出版された岩茶房の左能さんの本を読みました。
左能さんは、日本に岩茶を紹介された第一人者であります。
改革開放後の中国ならまだしも、その前から岩茶を追い求めている情熱には、頭が下がります。
岩茶房がある限り、日本では「岩茶」は「いわちゃ」ではなく「がんちゃ」なのです。
さて、この本ですが、表紙の帯に「大人のための、滋味豊かな小説。」とあるように、お茶を題材とした小説です。
主人公が共通の7編から構成されている、いわゆる連作短篇集ですね。
それぞれ、主人公がお茶と出会う場面が描かれているのですが、印象的なシーンが多く、出てくるお茶はみんな美味しそうです。
その中でも、とくに私が気に入ったのは冒頭の2編。
とりわけ最初の1編は、トルファンの高昌国の跡でのお話。
なにしろ、私のブログのプロフィール画像は、高昌故城にいたロバ車の”やる気のない”ロバです(笑)
→そのときの旅行記
もっともツボにはまるお話でした。
次の敦煌の鳴沙山でのお話も、なかなかイイです。
中国の近現代の歴史の縮図といった部分も出ていて、好きなお話です。
↑単に私が西域好きだからかもしれません(汗)
それ以降は、武夷山でのストーリーとなります。
この本は、あくまで小説の形態をとっていますが、左能さんのストーリーをご存じの方ならば、単なる小説とは思われないでしょう。
全編を通して、現実とフィクションの境目が分からなくなってくる、そんな不思議な作品に仕上がっています。
読み進めていくと、だんだんディープな左能さんワールドの色彩が濃くなってきます。
お茶を詩的な文脈で捉えている方ですので、そこが合うかどうかは人によるかも。
ただ、あくまで「小説」というエクスキューズがありますので、そんなには気にならないかと。
なによりも、1つ1つのお話が大体30ページぐらいと読みやすい。
さらにお茶の描写が大変美味しそうなので、夜、読んでから寝ると、夢の中にお茶が出てきそうな本です。
お茶好きのナイトキャップ本にはピッタリかもしれません。
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