夢
夢とは、睡眠中に起こる体感現象の一種。また、見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号とも言われる。転じて、希望や願望そのものをさす場合もある。睡眠時に起こる外的現象睡眠時は本来ならば何も感じていないと考えられる大脳が覚醒時と同様な活動状態を示す脳波になる。時にはその活動に刺激されて反射運動がみられる場合がある。この反射運動には、寝ている状態で手足を動かす、声を発する(つまりは寝言)などある。寝言の中には歌を歌いだすという報告もある。反射行動の中には日常生活では見られない行動、奇異であり不思議な行動が見受けられる。フロイトの報告によれば、普段聞きなれているのだが、発音できなかった(もしくは上手でない)外国語を突然、流暢に喋りだすという事例がある。また、睡眠中に突然起き上がり歩き回るが覚醒時にはその記憶が残っていないなど、その行動が顕著な場合に夢遊病と呼ぶことがある。夢は人間に限られた現象ではなく、犬や猫などを初めとする動物でも見るとされる。人間同様に睡眠中に、覚醒活動状態の脳波を示したり、反射運動が発現する、などが確認されている。夢のメカニズム浅い眠りに陥るレム睡眠中に見るとされ、ノンレム睡眠時は発現されないと考えられている。夢を見る理由については現在のところ不明である。 夢の存在意義を定めようとする説はさまざまあるが主に無意味な情報を捨て去る際に知覚される現象 必要な情報を忘れないようにする活動の際に知覚される現象 の二つが有力である。夢の知覚ただし、睡眠時の肉体が感じている外的な知覚が夢に影響する事が知られている。寝ている人の顔に短時間、ハンカチを被せた所、夢の中で顔に何らかのものを押し付けられる目にあったという複数の報告がある。夢の知覚には、性別や年齢によって傾向があるといわれる。男性より女性の方が色が付いたの夢を見やすい、などがあげられる。夢では視覚だけではなく、聴覚・触覚・味覚・嗅覚においても何らかの刺激を感じるといった報告がある。上記の通り、どの感覚においても、人によってさまざまであり、同一の人でも時には感じないこともある。ただし、触覚のひとつである痛覚については、ほとんどの事例で「感じない」とされている。一説では、夢自体は「白黒」の映像として視覚のみ投射されているが、それを知覚、認識する脳がこれまでの経験における適切な情報を付加しているとされる。これは、脳にはその所有者に対して都合の良いように処理をする性質によるものであり、覚醒時でも、とても色に敏感な人が「白黒映画」を見た際にもあるはずのない色を感じるのと同様な情報操作が、睡眠時に行われていると考えられる。夢には時間軸が存在せず主観時間でのみ知覚しているとも考えられている。これは、目が醒めた時時点で記憶されている夢の多くは覚醒前20分以内に見た物とされているが、夢の中では実際の睡眠時間よりも長い、数時間~数日に感じたというケースが多いことによる。覚醒時と夢との関係ただ、それらは誇張されている事も多く、結果的に現実としては不可解な現象で表現される事が多い。また、普段の生活から興味がある現象について夢を見やすいといわれている。具体的には色に興味がある人は色が付いた夢を見る、などである。覚醒時に考えていた(悩んでいた)事が影響するケースも多く、考えていたテーマに新しい着想を夢の中より得た事例もある。ベンゼン環の分子構造を解明したドイツの科学者フリードリヒ・ケクレは、夢の中で尾を咥えた蛇を見た事が解明の糸口となったと述べている。文学に於いてはブラム・ストーカーがカニを食べ過ぎて悪夢を見、これを元に吸血鬼ドラキュラを書き上げている。この他にも、重要な発見や発明、芸術作品など、夢で得たイメージを元としている事例は多い。夢の分析・予知夢夢で未来を占う夢占いでは、夢は見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号と考えられている。また、おきた現象がそのまま実現する夢を予知夢と呼び、可能性がある夢を詳細に検討する場合もある。夢の分析に関しては、ジークムント・フロイトの研究が有名であり、夢の中の事物を何かを象徴するものとして位置づけている。ただし、フロイトが述べた事例は性的な事象に紐付けられているものが多く、現在、夢判断に使用されているものとは異なっている。具体的には、銃が男性器を、果実が女性器を、動物が性欲や性行為を象徴するなどである。これらは、現代と比較して当時の禁欲的な世相が反映されているとする説や、フロイト自身が抑圧された性的願望を抱いていたために偏った解釈をしているとみる説もある。明晰夢これに対し、夢の中でも自覚している現象を明晰夢と呼び、その場合には夢の内容をコントロールすることも可能であると言われる。このため、望むままに夢が変化することも多いため、願望を(現実ではないが)叶える事ができるとされる。