2019/10/22(火)20:20
「散歩のすすめ」泉麻人著を、読んでみた。
【中古】 散歩のススメ / 泉麻人
これも時代のついた本です。
20世紀に雑誌に連載されていたいくつかのシリーズエッセイをまとめたもの。
お散歩エッセイではあるのですが、
著者の好みは「熟成した昭和の人々」または「取り残された昭和の風景」。
それは、あと四半世紀のうちには、失われるだろうという「レッドデータブックの人と町」。
実際には、6月頃に読み終わっていました。
つっこみどころは、いくつかはあったのですが、そちらは機会があったときに。
今日は、仕事で「経堂駅」と「桜新町駅」の近くへ行きました。
経堂駅の「すずらん通り」の途中にあるのは、昭和40年代のままときを止めたような「金物屋」さん。
仏具屋さんも、不動産屋さんも、30年は継ぎ足し続けてきて、ささくれもすでに擦り切れた風情。
雑貨屋さんはあるものの、中身は今風のおもちゃや駄菓子。
当世はやりのコーヒー豆屋さん。
世田谷線で「桜新町」へ移動したかったのですが、諸般の都合で地下鉄経由。残念。
桜新町は、個人商店が建替えられたと思わせる、小ぶりなビルがとりどりに並んで、
戦後の電車道沿いの商店街をわずかに偲ばせている。
けれど中身は、ナショナルチェーンの明るい店舗ばかり。
で、道路向かいにあったのが「サザエさん一家」の銅像。その後すがた。
平成の街並みを見て、驚いているのか、いぶかしんでいるのか。
桜新町から都立大学までは、東急の路線バスで。
一方通行の細い道で、宅配トラックが止まっているだけで、最徐行。
深沢は戦前からのお屋敷町だったはず。
古い床屋さんにワクワクしていると、
あ、魚やさん!
木造の店舗の最前列に平台があって、その後ろのガラスケースは、
正面のガラス戸が横引きで、斜めに店の内側へ、のけぞっている。
平成になった頃から、とんと見なくなったあの型。
棚はからっぽ。今日が祭日で市がなかったか、それともすでに売り切れか。
ゆっくり走るバスなのに、3間ほどのお店は、あっというまに過ぎてゆく。
カメラをかまえるのも忘れてました。
泉さんの「散歩のススメ」で学んだのは、
こういう風景は、数年をおいて訪ねると消えていることが多いのだと。
カバンの中に入れっぱなしで、ちびりちびりと読み続けた本。
数か月まえから本棚に待機しているのですが、
本体はなくとも印象はいまもカバンの中に。
「座右の銘」 ならぬ 「歩右の本」。