2-4変身したアカリが赤い変身スーツに身を包んでいるのを見て驚いている赤川に、司令官が言った。「よく見てください。」 「え?よく見ろって・・・」 赤川がどう見ても、アカリは全身赤だった。 「赤川さんの赤とは、ちょっと違いますよ。」 「いや、え・・」 ・・確かに言われてみると、真っ赤というよりは、少し黄色が入っているだろうか・・あれは、朱色?か? 「そう、アカリを漢字で書くと、朱に理科の理で“朱理”なんです。アカリさんは、“ダメ人間ヴァーミリオン”ですっ!」 司令官は高らかに宣言した。 「ヴァーミリオンって!難しい単語出したなおい!響きかっこいいけど!」 てゆうか、ヴァーミリオンって言われても朱色だってパッとわかんねーよなぁ。っつーか、レッドとヴァーミリオンって、近くねえか?普通はもっとすぐに見分けがつく、ブルーとかイエローとかじゃねーのか? 「仕方ないですよ。名前が朱理なんですから。」 「って、すげえ理屈だな、それ。」 「・・・それより、ステージ上がどうなってるのか気になりますね。」 そうだ、色のことはとりあえず置いておいて、今はステージに上っていったアカリのことだ。・・・さっきからいろんなものを置いてきている気がするが・・・。 赤川がステージ上を見ると、息を切らしたアカリがワリカン伯爵を睨みつけ、そのまま膠着状態であった。 「え?フルフェイスのヘルメットみたいな変身スーツなのに、よく睨んでるってわかりますね。」 「うるせーよ。なんとなくそんな感じだろーが。」 司令官の指摘はもっともだが、今はそんなことに構っている暇はない。 「・・いったい、どういうこと?」 ステージ上で、アカリが口を開いた。 「その声は・・アカリなのか?」 「ええ。そうよ。・・・カンちゃん、どういうことかちゃんと説明してよ。」 アカリの質問に、ワリカン伯爵は答えた。 「・・・俺、昨日からこの完璧な地球作りプロジェクトの正会員になったんだ。そして、ワリカン伯爵に任命された。」 「てゆーか昨日って!入っていきなり講演してるのかよ!しかも、そんなすぐ伯爵なんて称号もらえるのかよ!!」 赤川は思わずつっこんでしまった。なんていい加減な団体なんだ。 ワリカン伯爵は話を続けた。 「知り合いがこのプロジェクトに居てさ・・・アカリと別れてから、俺、考えたんだ。・・そして、何か始めようと思って・・・」 「そんなこと聞いてるんじゃねーよ!」 ワリカン伯爵の話を聞いていたアカリは、突然そう叫んだ。 「ア・・・アカリ?」 ワリカン伯爵がアカリの豹変にうろたえている隙に、アカリは伯爵が持っていたマイクを奪い取った。 「『男女平等な社会を作るために、ワリカンから始めましょう』っててめぇさっき言ってたよなぁ!」 「え、ああ。言ったけど・・・」 「ワリカン?はぁ!?普通は男の方がたくさん食べるし、お酒もたくさん飲むんだから、同じ額払ってたら女の方が割りに合わねぇだろーがぁっ!!」 アカリはそう言って、マイクを床に叩きつけた。 ガーンッ、カラッ、コンコンコン・・・・ 「って、お前はマジャかよ!」 と赤川が突っ込んでいると、マジャことアカリは転がったマイクを拾い上げて続けて言った。 「だいたいなぁ、お互いの経済状況とかあるんだから、どっちがいくら払えば平等かなんて人それぞれなんだよ!」 ヒートアップしたアカリは一気に捲くし立てた。 「食事以外のことでもそうだよ!人には向き不向きがあるんだから何事も役割分担してやるのがいいに決まってんだろ。それなのに、みんなが同じことを同じようにやるべきだなんて、そんなのちっとも平等じゃねーよ!」 ガーンッ、カラッ、コンコンコン・・・・ 体育館全体に一瞬の沈黙が訪れた後、ワリカン伯爵は言った。 「・・確かに、どうすることが一番平等かということは人それぞれで違うかもしれない。・・しかし、アカリと俺との関係は、平等だったと言えるかな?僕はキミに言われるままに何でも買ってあげた。けど、それは平等な付き合いと言えたかな。」 ワリカン伯爵は見苦しいことに、終わったはずの二人の恋愛話を持ち出してきた。 アカリは先ほどのマジャとはまったく違う、一人の女性としてのテンションになって言った。 「・・確かに、私の方ばかりたくさんプレゼントをもらっていたけれど・・。でも、私は・・」 「キミは何?キミは、プレゼントをもらうかわりに僕に愛情をくれていたとでも言うのか?・・・僕だって、お金以外の方法でキミに愛情を表現したいと思った。だから、これ以上何でも買ってあげるのはやめようと思って・・・でも、そのとたんにキミは別れようと言ったじゃないか。それは、結局僕はキミに物を買うだけの男でしかなかったってことだろ?」 ワリカン伯爵は一気にそう捲くし立てた。そんな伯爵をキッと睨んで、アカリは強く言い放った。 「物でしか愛情を感じられないんだから、仕方ないでしょう!そんな私なんだから仕方ないじゃないのよ!」 そして、俯いて小さな声で呟いた。 「だから、そんな私を受け入れてくれないのなら、私たち別れるしかなかったのよ・・。」 「アカリ・・・」 場内にまた沈黙が訪れた。ステージ下の小学生までもが、固唾を飲んで二人を見ている。その沈黙を破ったのは、今度はアカリの方だった。 「私たちは別れた。それはもう終わったことなのよ!そして今はもう、あなたは私たちダメ人間マンの敵なのよ!あなた達の思うような世界は間違ってるわ!覚悟しなさい!」 アカリはそう言って、いきなりワリカン伯爵へと殴りかかった。 つづく |