カテゴリ:連載小説
「・・・で、今日は何の用だよ。」 赤川は外出を諦めた。そもそも、この司令官に何を言っても無駄なのだ。 「今日はあなたと君島さんの顔合わせですよ。」 「・・・はあ。」 「えーっと、名前はさっき言いましたね。こちらの赤川さんが、ダメ人間マンのレッドです。」 そう司令官がアカリに言うと、アカリはへぇ、というような顔をした。赤川は、そんな突拍子も無いことを聞いたら普通の人はもっと驚くのではないかと思ったが、期待していたほど大きなリアクションはなかった。・・いや、普通の人ならそんな話信じずに、笑うか怪しい目で見るかだろう。 ということは、彼女はダメ人間マンの存在をもともと知っていたのだろうか。 一体このアカリという女はなんなのだろう。司令官とそれほど親しいわけでも無さそうだし、雰囲気から一般人だろうと思うのだけれど。・・そうすると、あと考えられる可能性は・・。 「・・それで、彼女は一体誰なんだ?」 赤川は考えるのも面倒なので、単刀直入に聞いた。 「えっと、ダメ人間マンの新しいメンバーです。」 「やっぱり。」 彼女も、自分と同じようにわけもわからぬままダメ人間マンにされてしまったのだろうと赤川は思った。おとなしくここに居るということは、すでに改造(だと赤川は思っている)されて変身した後なのだろうか。 赤川は、ある日突然改造されてダメ人間レッドになった。初めはヒーローなんてなりたいと思ってはいなかった(というか、信じてもいなかった)。しかし、実際に自分が変身した姿を見ると、諦めてヒーローにならざるを得なかったのである。 「アカリさんは、もう変身したんですか?」 「・・ええ。」 アカリはうなずいた。 「それは・・かわいそうに。」 赤川はアカリが自分に降りかかった突然の不幸に落ち込んでいるだろうと思った。しかし、アカリはきょとんとして聞き返した。 「かわいそう?」 「ええ、だって、突然ヒーローになれだなんて迷惑でしょ。」 「迷惑なんて、そんなこと思わないけど・・。私は、私みたいなダメ人間でもヒーローとして貢献できるなら、良いことだと思うから。」 そう言ったアカリの瞳には、強い意志が宿っているように見えた。 赤川は思った。こんな人もいるんだなと。ダメ人間と言われる自分を肯定し、正義のために戦おうという人も。そう思うと、面倒くさい、恥ずかしいという理由でヒーローなんて今すぐでもやめたいと思っている自分が、ほんとにダメな人間であるように思えた。 そんな赤川に、司令官が言った。 「そういうダメ人間じゃなければ、このダメ人間マンは務まらないんですから。赤川さんはそれでいいんですよ。」 「うるせー。」 司令官はなぜか、赤川の考えていることが手に取るようにわかるようだ。まさか本当に心が読めるわけじゃないと思うのだけれど・・。 「あ、それじゃあ、アカリさんはなぜダメ人間なんだ?見る限り、どこもダメそうな雰囲気は無いけれど・・」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年08月26日 21時03分10秒
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