かめ@ゴミスティピョンの小説と日記

2006/02/13(月)16:44

「キミの瞳が映す人」 2

短編(33)

「キミの瞳が映す人」2 (昨日のつづき) バレンタインデーの放課後。 静かな教室で、キミは口を開いた。 「あの、それじゃあ……これ、アツシ君に渡して……」 そう言ってキミは、チョコの包みを前に差し出した。 「お、おうっ。わかった。任せとけ」 俺がチョコを受け取ると、キミはよろしくと言って走って去っていった。 ……予想通り、キミはアツシへのチョコを俺に渡した。 ……こうなることは、わかっていた。 キミのことが、気になっていた。 いつもちらちらとこっちを見ていたキミのこと。 たとえキミが見ているのが、俺でなくても。 キミの瞳に俺が映ってることが、嬉しくて……。 嬉しくて……。 ……嘘だ。 そんなの、ただの強がりだった。 本当は、それだけじゃ、ツライ……。 赤いラッピングがされたチョコの箱をぼんやりと眺めて、俺は、ため息をついた。 「よー、待たせたな」 教室にアツシが戻ってきた。 俺は、キミからのチョコをアツシの前に差し出した。 「……これ。チョコ。……お前に」 俺は、キミのことが好きだ。 本当はこんなチョコ、アツシには渡したくなかった。 けど、それじゃあキミがかわいそうだ。 キミのことが好きなら、キミのことを応援するべきだ。 「お、おまえ……そうだったのか。……ごめん、俺にはそういう趣味は……」 アツシはふざけて、そんな冗談を言った いつもなら俺も一緒になってふざけるところだけれど、今はそんな気分じゃなかった。 「バカやろう。違げぇーよ」 「なんだよ、のってくれても良いのに。……で、誰から?」 「佐藤」 俺がキミの名前を告げると、アツシはきょとんとした。 「え?誰?」 「だから、佐藤だって」 「うちのクラスの?」 「ああ、そうだよ」 「……俺に?」 「ああ、お前に渡してくれって」 アツシは、今までへらへらと笑っていたのに、急に真顔になった。 そして、少し黙って何かを考えてから、言った。 「あー、要らないや」 「……は?」 「要らない」 「なんでだよ?」 要らない?せっかく女の子がくれたチョコを、要らないって? アツシは、また少し間を空けてから、今度は笑顔を浮かべながら、困ったような口調で言った。 「俺、あーいう暗い女苦手なんだよね。……そうだ、そのチョコお前にやるよ」 「……てめえっ!ふざけんな!」 俺は、そう怒鳴って、アツシの頬を殴った。 つづく

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