アジアの言葉まとめ(呼吸について:その2)
2009年も、最終の月になりました。今年は、世界天文年で、皆既日食があったり、政権与党が交代したり、世界でも、核廃絶や、地球温暖化へ共同での取り組みが進んだりして数え切れないことがおこりました。稲刈りの終わった、たんぼの横を歩いていると、なぜかほっとします。昼間から、秋の虫の声がするので、近寄ると、夕顔が咲いていました。 透明感のある、柔らかそうな紫色の花びらで、夏の大きく開いた大輪のアサガオとは、また違ったおもむきでした。アジアの言葉を10カ国以上、韓国語、中国語、ロシア語、タイ語、インドネシア語、ヒンディー語、アラビア語、ヘブライ語、ペルシア語、トルコ語、ラテン語まで、まとめて総合的に比較してみるという企画です。1.文字の比較(7月)2.音声、発音、発声の比較(8月)3.文法、単語(9月)4.語順(10月)5.呼吸その1(11月)と進んできました。今月は、先月に続いて、「呼吸」について考察してみます。呼吸をテーマにすると、奥が深くて11月だけでは、短く切り上げることが出来ませんでした。11月と同様に、話が拡散しないように、呼吸といっても、特に、語学、そしてコミュニケーションに関係する部分に重点をおいて、呼吸について、書いてみます。なお、まとめた表は、先月と同じもの、「アジアの国々の呼吸の比較」を参考になさって下さい。先日のNHKのテレビ番組の中で、ウグイスの鳴き声の真似で有名な、江戸屋猫八の4代目の方が、「百聞は一見に如かず」のところを、「百聞は一鳴きに如かず」と言っておられました。アジアの言葉の時も同じで、一度、その国の言葉を自分の口で発音してみると、体で色々とそのお国柄を感じることが出来ます。先月は、アジアの国々の呼吸法に関して、大まかに分類して整理してみました。今度は反対に、アジアに特有というべきか、混沌とした、アジアの発音、発声の世界と呼吸との関係について、踏み込んでみます。まず、インドが発祥の地である、ヨガについて書き始めます。ヨガでは、脊椎に沿って、下から順番に、7つの気の通り道であるチャクラというものを意識して呼吸を整え、冥想をします。その7つのチャクラには、それぞれ、ヒンディー語の音が割り当てられています。下から順番に、ラ、ワ(ヴァ)、ウ、ヤ、ハ、ア(サ)となります。一方、日本の武道や、能の世界では同じように、脊椎に沿って、下から下田、中田、上田に、気の通り道があるという考えのようです。脊椎の下部、腰の根っこである仙骨は、武道では、力の源であるとして、八力(ア、イ、ウ、エ、オ音)が割り当てられています。また、火凝霊(かごたま)の図という古文書には、ス、ウ、ア、オ、エ、イから始まる、75の音声の発生が書いてあります。(言霊の武道「ワラク」参考)下のHPで図解していますので、ご覧下さい。ヨガのチャクラと、武道の丹田の図この、ヨガの7つのチャクラの音である、ラ、ワ(ヴァ)、ウ、ヤ、ハ、ア(サ)の音と、日本の古武道の八力(ア、イ、ウ、エ、オ音)、そして、火凝霊(かごたま)にあるス、ウ、ア、オ、エ、イとの間に、脊椎に沿って、直接の音の対応関係はないように見えますが、少なくとも母音の種類が5つくらいであるという点に、着目してみます。ヨガや、古武道では、5つの基本母音には、発声するときにそれぞれ特有の生理的効果があったり、また魂、が潜んでいるという考え方は似ているように思えます。例えば、ヨガでは、マントラ音(ア・オ・ン)を唱えますが、ア音には、明るく、オ音はやさしく、ン音は心身統一などの効果を持ちます。マントラは、下のHPから試聴出来ますので、参考に下さい。マントラ試聴などのページ一方、古武道の動き(八力)には、一霊四魂(いちれいしこん)という言霊が宿ると言われています。反対に、発声には力の働き(八力)が伴います。その、一霊四魂とは、一霊(直霊)はウ音(省みる心)で、四魂は、幸魂(愛)ア音 和魂(親)オ音、荒魂(勇)エ音、奇魂(智)イ音(参考:言霊の武道 わらく)となります。先ほど、脊椎に沿ったヨガのチャクラに割り当てられた音と、八力、そして火凝霊(かごたま)の音とは順番的に対応はしていないと書きましたが、このように、マントラ音と、一霊四魂の間には、似た関係があるようです。さらに、ヨガには発声体操もあります。発声体操の狙いは次のとおりです。アー (血液をアルカリ性に、胃の働きを 高めて疲労回復、心を朗らかに)イー (血液を弱アルカリ性に、甘いものを 減らし、陽気で積極的に)ウー (血液を中性に、心身統一、集中力・ 決断力をつけます)エー (血液を弱酸性に、なまけ者やグズを 治し、心を活発に)オー (血液を酸性に、性格をやさしく、 心を落ち着かせます)日本語のひらがな、カタカナの五十音の仕組みは、インドのサンスクリットの音の配列の影響を受けているようです。サンスクリットは、インド・ヨーロッパ語族に属する古代のインドの言葉です。、(なお、サンスクリットの母音の響きが良いという理由から、スター・ウオーズの「運命の闘い」などの映画音楽で、コーラスに使用されているそうです。)このようなことから、インドと日本の発音が、母音を大事にするという、同じ要素が見られるという理由も、ある程度説明出来るかもしれません。シルクロードを経て、インドから中国の密教系の仏教が日本に伝わり、般若心経(はんにゃしんぎょう)になっています。般若心経では、羯諦羯諦(ぎゃーていぎゃーてい)波羅羯諦(はーらーぎゃーてい)波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい)菩提薩婆訶(ぼうーじーそわかー)(以上を、三唱する)意味が分からなくても、この音に聖なる力があるという考え方のようです。音を感じるのが大事、ということで、なんとなく、サウンドセラピー的な感じもします。ヨガでも、ブラマリンという呼吸法があって、自分で発する、あぶ(虫)の飛ぶ音の振動を、自分の耳で聞きますが、サウンドセラピーの効果と似ています。ブラマリンの説明のページまた、ヨガでは、色々な体位(ポーズ、アサナ)をとりますが、マントラこそが大事、心臓だということです。マントラのことを、神呪(じんじゅ)仏教では真言と呼びますが、このようにヨガと仏教は深い関係にあり、また、呼吸においても、似た要素を持ちます。そして、呼吸が似ているために、言葉の発音も似て、母音を大事に発音する文化となっているようです。一方、逆腹式呼吸の太極拳の国、中国ではどうでしょうか。中国は、China(チャイナ)と英語で発音しますが、結構、チーやらシーやら、子音の発音が多い国です。マージャンをされる方は分かると思いますが、チーやら、ツモ やら、歯を合わせるようにして発音する言葉が多くあります。インドのマントラ、日本の一霊四魂に対応してあげるとすれば、中国の気功法においては、吐気法という心身調整法があって、xu ke hu si chui xi という六字訣があります。ここで、Xは、シの発音に近いものです。ハーと息を吐きながらも、口の中で歯を合わせたり、喉をしぼめたり、なかなか器用に発音する必要があります。とりあえず、腹の底から、息を出すという点では、マントラ、一霊四魂の母音の発音に似ていますが、子音も大事なようです。なお、イスラムの世界で礼拝の呼びかけに使われるアザーン(コーラン)は母音がしっかり聞こえて、同時に、巻き舌(R)も入った独特の音声です。アザーンの試聴も出来ます。アザーンの試聴などのページこのように、言葉と呼吸の関係は、アジアの言葉で大きく分類は出来ますが、実際には複雑にからんでおり、簡単には整理が出来そうにありません。しかし、”母音と子音”という切り口に限定したなら、その深い関係の一部をのぞきこむことは出来そうです。呼吸をしているということは、生きているということになります。つまり、呼吸とは、生きている証です。聖書に書かれている言葉のように、神の声は、人間の肺にたまり、その肺から出るのが、ロゴス(logos言葉)だとするなら、その関係は、「神・生命→呼吸→言葉」という順番につながるのでしょうか。古神道では、水火は、イキと読み、(イキ→息→呼吸)というつながりがあるというのも、上の聖書の言葉に対応するようで、興味深いものです。世界の共通語は英語と言うことで、学校や、社会に出ても子音を中心とした英語圏の文化は学ぶ機会が沢山用意されていますが、身近なアジアについて学ぶ機会はそう多くは、まだありません。しかし、日常の生活の中では、まだまだ、母音を中心とした言語文化というものが身近に残っていて、そして、少なくともアジアの言葉の世界においては、母音の言語文化というものも、根強く生きているということを、もう少し意識した方が良い気がします。国際化ということは、異なる文化に目をむけつつ、同じくらい慎重に、自分自身、そして仲間を知る努力をする過程で生まれるのではないだろうかということです。なお、インドの古典語、サンスクリットはインド・ヨーロッパ語族に属する言語で、ギリシア語、ラテン語、ペルシャ語や、英語など、ヨーロッパの言語と起源が同じであることから、 もう少し調査が進めば、東洋西洋をまたぐ、宇宙音というものが、見つかるかもしれません。そして同様に、宇宙呼吸というような、東洋西洋をまたぐ呼吸もあるのかもしれませんね。宇宙は、広いということです。では、最後に、自分で家の庭から撮影した天体写真で、宇宙の成り立ちを説明するページを作りましたので、頭を少し冷やされてお休みください!