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カテゴリ:日本映画
時代劇があまり好きでなく「花よりもなほ」を観てないので、「誰も知らない」以来の是枝監督作品に期待が高まる。 15年前に海で溺れた子供を助けて亡くなった長男純平の命日に、実家に集まる横山家の姉弟。冒頭は、ちなみを演じるYOUとおばあちゃんの樹木希林の台所仕事と何気ない会話から始まる。 次男の良多(阿部寛)は子連れのゆかりと結婚しているものの、現在は職探し中で昔から父とそりが合わなかったため、今日は少し気が重い。 そして一家が集まって昼食を食べて、ちなみ一家は帰り、良多たちは泊まっていく。そんな何気ない、でも一家にとってはとても大事な純平の命日の一日を切り取った日常劇。 まず、YOUと樹木希林が準備する食材のアップが美しい。枝豆やじゃがいも、茄子、とうもろこしの天ぷらなど、思わず食欲をそそられる。ここまでおいしそうな食べ物のアップがあるのは久しぶり。 そして何気ないと思える会話。まったく不自然ではなく、本当に普通の親子の会話のような自然な流れ。映像の間も、計算されつくしているように冗長なところも後もう少し、というところもなく、ふっとちょうどいい間隔で切り換わる。 これはやっぱり是枝監督の感性だけではなく、緻密に計算され尽くしたものなのだろう。 オーバーラップするお墓参り。命日には、良多一家とおばあちゃんがお参りして、ラストでは良多一家が新しい家族も加わってお参りする。おばあちゃんを一度も乗せることのなかった車で来て。 おじいちゃんの海辺への散歩、一人では道路の反対側から海を眺めるだけだったけど、ゆかりの連れ子あつしと一緒に散歩に出たときには浜辺まで行く。純平を奪っただろう浜に。 15年経った今でも、いや15年間ずっと、跡取りの純平が亡くなった理不尽さを誰にぶつけていいかもわからず自らの中にしまいこんでいるおじいちゃんとおばあちゃん。おばあちゃんの感情は、よしおくんに対する心情の吐露、そして迷い込んだちょうちょに対する過剰な反応によく表れている。15年経ってもやっぱり納得いかない、きっと最期までその気持ちはあり続けたんだろう。 良多一家も複雑だ。失業中の良多に子連れで再婚したかおり。やっぱり良多の家では過剰に気を使う。ちはるが何の屈託もなくおばあちゃんとやりあっているのを目の前にしているだけに、心に鬱屈するものがある。あつしも子供ながら、現実と折り合いをつけている。良多をパパではなく良ちゃんと呼び名がら、亡くなった実父と同じピアノの調律士になりたいと夢見る。そしておじいちゃんの言葉が聞いたのか、二番目の夢は医者に。 静かなホームドラマだけど、身につまされる思い。父が亡くなってから、家族をことさら意識しているからかなぁ。何も大きな事件は起こらない、日常の中のちょっと特別な一日。でもきっと、そういう一日が大切なんだろうな。その時は気づかないし、後からも気づかないかもしれない。でも振り返ればきっとある、そんな一日を描いた秀作。 公式サイトはこちら 7/5 渋谷アミューズCQN お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.07.10 21:56:00
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