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カテゴリ:日本映画
![]() 黒沢清監督作品は「CURE」以来かな。 なんてことはない、線路脇の普通のサラリーマン家庭、両親に子供二人の佐々木家。一見ごくごく普通の家庭だけれど、内実はみんなてんでバラバラになっていて、同じ家に住んでても他人みたいな関係。 父親の竜平は、会社をリストラされても家族に言い出せなくて、毎日出勤するふりをする。長男の貴は、突然アメリカ軍に入隊する。次男の健二は、黙ってピアノ教室に通う。そして妻の恵は運転免許証をとり、ある日強盗に入られる。。。 家族が崩壊していく様子というより、もうバラバラになっていたけれども何とか表面上は「家族」を繕っていた四人が、そう、リストラやらピアノやらがきっかけでそのバラバラな様子が徐々にあらわになって、クッキリと崩壊しているさまが映し出される。トウキョウに住んでる人は多かれ少なかれ、みんな本当はこんな部分があるんじゃないかい?って黒沢監督が語りかけてくるように。 炊き出しに並ぶ人たち、ハローワークに並ぶ人たち、そして無理心中をした黒須。そんな彼らもトウキョウの一部。 小泉今日子の運転しているプジョー206CC、かっこいいなぁ。自分が乗りたい車のかなり上位に入っていて、あのオープンカーの開放感がいいんだよねー。小泉今日子演じる恵も、ショッピングセンターで清掃員姿の竜平を見てから何か吹っ切れたみたいに車をオープンにして走っていく。どこまでもどこまでも、そしてたどり着いた海辺。 健二は喘息もちの友達の家出に付き合うが、ちょっとジュースを買いに行った隙にその友達が父親にみつかってしまう。そして高速バスの無賃乗車を見咎められて、指紋をとられて留置所で一晩過ごす。これって少年法上まずいんじゃないの?でも年齢も言ってないからいいのかなぁ。 強盗に連れ去られて荒らされた家は崩壊した家族の姿を表すよう。でもその崩壊した家族は、一人、また一人と家に帰ってくる。バラバラになっても家族が帰ってくる場所は、やっぱり家しかなかったんだよな。空中分解しながらも、やっぱりどこかしらで繋がっていた家族。そして「佐々木家のお母さん役誰がやるの?」という恵の言葉が家庭の芯を端的にあらわしていて、そうなっていったんだろうなぁ。 それぞれが孤独を抱えるなかで、試練に向き合い、改めて家族の元に帰っていく。そこに個人の再生が見て取れる。一度家族という共同体から切り離された個人が「やっぱり自分はひとりなんだ」という試練を経て、あらためて家族という共同体に帰っていく。 家族という共同体の再生の様子がすっ飛ばされていたのは残念だったけど、最後には、今度こそしっかりと家族という絆でむすばれた佐々木家があったのだった。そして多分、これからもきっと。 家族つながりだと、「幸福な食卓」や「酒井家のしあわせ」が頭に浮かんでくる。特にメインキャストが同じような年頃だからかな。ちょうど思春期の子供の目線から見た家族。それは案外もろいもので、でもやっぱり繋がっているものであり、いくつかの事件を通してその絆を再確認していく。そんなところが似てたのかな。 香川照之は、こういう暑苦しい演技が合うねー。ちょっとオーバーアクション気味でくどくて、でもまだ何とかわざとらしさにまではいってない、っていう感じ。小泉今日子はやっぱりオープンカーでの開放的な雰囲気が印象に残ってる。って、自分がオープンカー好きだからかな。家の中で遠くを見つめる寂しげな目線なんかは、「グーグーだって猫である」のときの遠くを見つめる目とおんなじ匂いを感じた。同じ人が演じてるんだから、当たり前か。 現代のトウキョウという日本を代表する都市に住む人たちの孤独と、それを克服というか、真摯に受け止めて立ち上がる逞しさが描かれた逸品でした。 公式サイトはこちら 9/28 チネチッタ川崎 ![]() CURE キュア(DVD) ◆20%OFF! ![]()
最終更新日
2008.10.26 21:09:38
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