カテゴリ:読んだ本
この本は、あの青色発光ダイオードを世界で初めて実用化させて現在はUCSB教授として次の研究をしている中村修二氏の自伝的な本。 印象に残るのは、やはり青色発光ダイオードを発明するまでの日々。会社から業務命令として出された開発を入社10年で3つ製品化させていた中村氏は、海外留学で論文を一本も書いていない自分の研究者としての位置づけに疑問(というか、もっと強い不満のようなもの)を抱き、世界初、を目指して当時の日亜化学の社長に青色発光ダイオードの開発をやらせてくれ、と直訴する。そして社長は、これまで3つの製品化をこなしてきた中村氏を信用して開発を許可し、開発費まで充ててくれた。 しかしここからが苦闘の日々。なんせ世界中がこぞって研究していて、20世紀中にはできないだろう、と言われているものだから、そんなに簡単にはできやしない。また日亜化学も中小企業なので、たいした設備もなく、実験装置をいちから改造してつくる日々。午前中に実験装置を改造して、午後に実際に実験しては失敗して、の繰り返し。この改造技術も、入社してからの製品開発でプロ並の腕前になった溶接など、これまでの苦労の蓄積があってのもの。 そしてついにある日、無理と言われていた窒化ガリウムで青色発光ダイオードを作り出すことに成功する。理論ではなく実践で、そして最初から無理とあきらめるのではなく、そこにわずかでも可能性があれば挑戦してみる、そしてとことん、本当にとことん、失敗に失敗を重ねて落ちるところまで落ちていって考え抜く、という氏の姿勢が、世界初の発明に結びついたのだろう。 最先端技術における生産技術の重要性、そして物事をとことん、ひたすらとことん限界近くまで極めれば成功する(かもしれない、もちろん失敗もたくさんある)ということが、学び取れる。ダメなのは失敗することではなく、挑戦しないこと。挑戦しなければ、何もはじまらないのだから。そして、簡単にはあきらめないこと。何度も何度も失敗して、机上の理論ではなく自ら経験を積んで、自分なりのやり方にこだわること。そうすれば、成功するかもしれない。少なくとも、何も挑戦しないよりは、成功の可能性はある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.11.17 21:24:05
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