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「イェテリの死」「ロッテの死」「天国のほとりで」の3部構成で、アリとネジャット、イェテリとアイテン、ロッテとスザンヌの3組の親子の物語をドイツとトルコの2ヶ国にわたって繰り広げる。 さすが脚本賞!の素晴らしい構成。始まりのネジャットのドライブのシーン、最初は何がなんだか分からないけど、これが巡りめぐって最後のシーンに繋がってくる。ネジャットが講義している大学の教室で居眠りするアイテンのシーンも2回でてきて、最初のはそういうことだったのね、と二度目に納得。ロッテとアイテンが自動車でブレーメンに向かう同じ時に、イェテリも電車でブレーメンに向かっている。 イスタンブルのネジャットが店主をするドイツ本屋で、アイテンを捜す貼り紙の横に貸し部屋募集の貼り紙をするロッテ。ドイツから運ばれてきたイェテリの棺桶が空港で飛行機から降ろされる、その同じ構図で今度はトルコからドイツにロッテの棺桶が向かう。強制送還させられたアリと同じ便でトルコにやってきたスザンヌ、そのスザンヌも30年前はヒッチハイクでドイツからトルコを通ってインドまで旅したが、娘のロッテもインドに旅して今度はトルコへ。こうした、すべてが計算されつくされた細やかな演出に感心するばかり。 ファティ・アキン監督自身がドイツ在住のトルコ移民二世ということで、ドイツとトルコの微妙な関係が背後に横たわっている。ドイツにある自由は、トルコにはない。でもそんな政治体制の違いを超えて、人と人との間は愛で繋がっていく。ブレーメンで父親アリに愛想をつかしたネジャットも、娘を失ったスザンヌがロッテの遺志を引き継ぐような形でアイテンを支援する姿を見て、やはり親への愛情を感じたのだろうか。海のほとりでアリを待ち続ける最後のシーンがまた叙情的で、あれはたぶん黒海なんだろうなー。トルコもイスタンブルとエーゲ海沿岸は旅行で行ったけど、黒海沿岸は行ったことがないからどんな光景なのか憧れがあるなあ。 邦題の「そして、私たちは愛に帰る」っていうのも、見事にこの映画の本質をあらわしてるなーと感心してしまう。そう、何があっても、いや、何かがあるからこそ、それが些細なことでも大きなことでも、それがきっかけで、私たちは愛に気づき、愛を求めて、愛に惹かれていくのだ、たぶん。この映画でも3組の親子の愛はもちろんのこと、アイテンとロッテの間の愛やアイテンとスザンヌ、そしてスザンヌとネジャット、ネジャットとアイテンといろんなところに愛が溢れている。 こういう英語圏以外の秀作がきっとたくさんあるんだろう。もっとたくさん日本で公開されてほしいなー。 公式サイトはこちら 1/4 シネスイッチ銀座 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.01.06 21:58:26
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