テーマ:最近観た映画。(40214)
カテゴリ:日本映画
原作はずいぶん前に読み始めたものの、病気で読むのがつらくなって第一巻の途中で止まったままなので、御巣鷹山編や会長室編は初めて知るストーリーでした。 当然ですが、主人公の恩地元(渡辺謙)を中心に物語は進みます。冒頭から事故に遭うフライトの場面を持ってきますが、予感はびしばし感じるわけで、体育館に設けられた遺体安置所は白幕に覆われた棺がずらりと並んで圧巻でした。実際に御巣鷹山事故の遺族であの現場にいた方があのシーンの監修に入っていると何かで読みましたが、あれが現実の光景だったのかと思うと心が痛みます。また、遺族や恩地が慰霊登山をする御巣鷹山の斜面に林立する墓標も、心の中で手を合わせたくなります。 恩地が赴任したカラチ、テヘラン、ナイロビもカラチはタイでの撮影だったようですが、それぞれ実際にロケをして、本場の雰囲気をばりばり出していました。アフリカのサバンナで最後に恩地が夕陽に向かっていくところは、もしかして『アラビアのロレンス』のあの登場シーンを模していたりして。 ただ、休憩後の後半、会長室編になってくると、なにやら陰謀系の話になってきて、しかも政界や財界を巻き込んで大風呂敷を広げるけれど、そこで話に深みがなくなっていったような気がしたのは自分だけでしょうか。 ディテールも事故やロケではなかなかのものだったけど、陰謀編に入っていくと、ちょっと浮いてるかな、という場面がありました。八馬(西村雅彦)のエキセントリックな演技だったり、八木(香川照之)が行天(三浦友和)の指示で株主優待券を金券ショップに持っていって現金化するんだけど、行天に渡す紙幣の量が多すぎ(あれじゃ億の単位になりますよ)だったり、高級クラブでの官僚接待や料亭での密談はどこかしら底が浅い感じがしました。 サラリーマン社会の激しい出世競争を勝ち上がった行天や八馬、理不尽な左遷を受け続ける恩地に、冷遇されて最後には行天の汚れ役として使われた八木、そして美樹(松雪泰子)の立ち回り、首相に頼まれて国民航空を建て直しにきたのにその首相から引導を渡される国見会長(石坂浩二)もまた、会社という不気味な生き物に翻弄されたのでしょう。 そんな中で恩地の家族が辿ってきた道すじは、妻りつ子(鈴木京香)をはじめとする一家の恩地への強力な信頼がなければ成しえなかったものだと思います。このりつ子の演技もまた見事で、いたるところに恩地への揺るぎない愛と信頼が感じられます。そして大人になった克己(柏原崇)が一緒に牛丼を食べる場面、自分は父親とそういうことがなかったなあ、と振り返って羨ましく思いました。 御巣鷹山の遺族の方たちと恩地との関わりも丁寧に描いていて、お遍路さんになった方や遺族会で慰霊登山をされる方、やはり実際にそういう人たちが今ももちろんいるのだと思うと、改めてあの事故の大きさに心が痛みます。 原作に忠実に、ということでこういう構成になったのかもしれませんが、普通の映画であれば3つも4つもできるようなテーマが1つの映画の中に入っているだけに、決して一つ一つのテーマが軽いわけではなく、むしろずっしり重いのですが、そのためにあっちもこっちも、という感じになってしまい、全体としてまとまりがないイメージが残ってしまったのが残念です。もう少し中身を絞ったり、パート1、パート2みたいな感じにしたほうが良かったのかなあとも思えますが、この長尺にすることで個人では抗うことのできない流れを表現する意味もあるのかとも考えます。 いろいろと言う事はありますが、やっぱりこのロケのスケールは凄いと思うし、アフリカの赤い太陽は脳裏に残ります。そしてモデル企業の強い反対にも関わらず公開にまでこぎつけたスタッフの熱い想いも素晴らしいと感じます。 ただ3時間22分は長くて疲れちゃいました。 公式サイトはこちら 11/3 TOHOシネマズ川崎 12/26からシネスイッチ銀座他で公開! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.11.09 21:58:06
[日本映画] カテゴリの最新記事
|
|