まてぃの徒然映画+雑記

2010/03/16(火)00:04

ハート・ロッカー THE HURT LOCKER

その他の映画(68)

ヒリヒリとした緊迫感が続く2時間。 今年のアカデミー賞受賞作、だからというわけではないけれど、結構ノミネートされてたので前売りを買って日曜日に行ったら、すでにお目当ての回は満員で、平日仕事が終わった後に出直したのでした。それでも6~7割の入りだったから、相当オスカーの広告効果があったんでしょう。 2004年のイラク、ブラボー中隊に属する爆発物処理班の任務明けまでの38日間を追う。冒頭からいきなり班長のトンプソン軍曹が爆死するシーンで始まる幕開けは、イラク戦争の厳しさを無条件に突きつけてくる。トンプソンにかわり新たに班長として赴任してきたのが歴戦の猛者ジェームス軍曹で、最初の仕事から無人偵察車を使わずに、自ら防爆スーツに身を包んで爆弾処理に向かう。途中で目くらましの発煙筒を焚いたり、無線を切ったりするなど軍のチームとしては破天荒な行動をとりながら、見事にコードでつながれた6つもの爆弾を処理する。 爆発物処理班は、基本的に班長が一番危ない爆発物の処理をして、班員はその最中の護衛というのが基本パターン。国連施設に止まっていた爆弾を満載した不審車両を処理するときは、銃撃で車両が炎上しても冷静に消火器で消火して処理を続けるジェームス。大量の爆弾を見つけた後は、死ぬときは気分よく死にたいと、防爆スーツすら脱ぎ捨てて無線も取り外し、爆弾の解除に成功する。 その危険を省みずチームのルールを気にしないジェームスの姿勢に反発を覚える部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は、爆破処理の際に誤爆に見せかけてジェームスを爆殺したい誘惑にすらかられる。しかし、砂漠でトラブルを起こした味方を手伝っているときに銃撃戦に巻き込まれると、ジェームスは冷静にチームの指揮をとり、経験の少ないエルドリッジも敵を射殺し、サンボーンとジェームスは夕方まで敵と対峙するのだった。 モスクの爆弾処理で呼ばれたときには、軍医も「たまには私も外に出たい」と同乗してきた。そこで見つけたのは人間爆弾にされかけて失敗した少年の亡骸で、基地の中でDVDを売っているベッカム少年に見えた。建物ごと爆破する計画を変更して、少年の体内から爆弾を取り出して、亡骸をもって出てくるジェームスだが、すべてが終わって帰るときに、テロ爆弾が爆発して軍医が一瞬でヘルメットだけになりいなくなる。 ベッカム少年を人間爆弾にした奴らを許せないジェームスは、DVD売りの男の車に乗って市街へ行くが、あてもなく帰ってくると、タンクローリーが爆発した事故で原因究明に爆発物処理班が呼ばれていた。自爆テロじゃない、犯人はきっと近くにいる、とジェームスはサンボーン、エルドリッジと3人で犯人を追っていき、エルドリッジが連れ去られるところを間一髪で助け出すが、エルドリッジは脚に大怪我をおってジェームスに罵声を浴びせてヘリで帰っていく。 爆弾を体中にまきつけられた男がいる、といって出動するジェームスとサンボーン。防爆スーツを着て何とか爆弾を解除しようとするが、制限時間は2分だけで間に合わず、男は爆発する。ジェームズも防爆スーツを着たまま吹き飛ばされるが、何とか無事で、サンボーンは目の前を通り過ぎていった爆弾の破片に改めて死の恐怖を感じる。 ブラボー中隊の任務があけて、アメリカに帰国していっとき家族と一緒の穏やかな時間を過ごすジェームスだが、処理した爆弾の欠片の収集癖がある彼は、デルタ中隊として再びイラクの地を踏むのだった。。。 ハンディカメラの手ぶれが多用されていて、まるでドキュメンタリー映画のような作り方で戦場のリアルを伝える。最前線で敵と撃ち合う戦争ではなく、不発弾やイラク軍の残していった爆弾を利用したテロ爆弾を処理する任務は、地味だが対テロ戦争でこうした爆弾による犠牲者が最も多いという事実を知ると、重みが感じられる。しかも冒頭に、いきなり班長が戦死しちゃうもんだから、いつ誰が死のうと不思議ではない環境にあることを否応なしに知らされる。 この映画はジェームス軍曹を戦争の英雄として描くものではないし、かといって反戦のメッセージを明確に出しているわけでもない。リアルに淡々と、極限の状況をただただ淡々とスクリーンに映していく。トンプソン軍曹や軍医たちのようにあっけなく戦死する者もいれば、エルドリッジのように負傷して後方へ退く者もいる。そして運よく、本当に運よく無事に任務を終えることを神に感謝するサンボーン軍曹のような者もいれば、二度三度と自らの意思で戦場に赴くジェームス軍曹がいる。 イラク戦争の現実を突きつけて、観客に解釈を委ねるその手法は、オスカーを受賞したことからも、このテーマについては優れたやり方だったということだろう。骨のある戦争映画で、戦争の正義と悪、罪などいろいろと考えるところが多いのは、監督の思惑に上手く嵌まったということかな。 公式サイトはこちら。 3/9 TOHOシネマズ川崎 3月20日から渋谷シネマライズ他で全国順次公開!

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