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カテゴリ:韓国映画
北朝鮮の非情な現実と脱北しても解消されない悲惨な状況を突きつけてくる。 妻がかかった結核の薬を手に入れるため、妻と息子を待たせて中国へ行ったヨンスは、国境付近で不法労働して稼いでいたが、中国公安の取締りから逃げる最中にこれまで稼いだお金をすべて落としてしまう。 結核薬の金を手に入れるために脱北者のインタビューに協力することにしたヨンスは、わけも分からずドイツ領事館に入り込むが、その際にはっきりと顔が映ってしまいもはや北には戻れない身となって、ソウルで妻と子の脱北をブローカーに頼むことになる。この領事館に逃げ込むシーンでは、かつての中国の日本領事館が脱北者を追い返した事件を思い出した。北朝鮮に送還された人々にあんな収容所が待っていると知って、脱北者を追い返して中国公安に引き渡すなんて、日本人として悲しいです。 一方、残された妻と息子ジュニは、ヨンスが中国に行く前に買いだめしておいた食料も尽き、結核もひどくなって妻が亡くなってしまう。父ヨンスを追って中国に行こうとしたジュニだが、豆満江で国境警備兵に捕まってしまった。 強制収容所では、年齢も男女も関係なく狭い部屋で座って過ごし、日中は過酷な労働が待っている。倒れた者は死んだと見なされて、屋外に引きずられていく。ブローカーの働きにより、強制収容所から出て無事に脱北したジュニだったが、今度は中国公安と警備の目を盗んで中国‐モンゴル国境を抜けるという試練が待ち受ける。 ブローカーから妻が亡くなったことやジュニが無事に脱北したことを携帯電話で聞くヨンスは、サッカーボールやビタミン剤を準備してモンゴルまで迎えに行くが、ヨンスとジュニは無事会えるのか。。。 貧しい北朝鮮の日常生活が描かれている。舗装も何もされていない、草も生えていない地べたに立つ塀と小さな家、夜になると街灯などはなく、家の窓からもれる明かりが暗い夜に目立つ。まるで戦後の日本の焼け野原のバラックのように貧しいながらも、犬を飼ったりサッカーをしたりして幸せな家庭を襲う悲劇。 母親が亡くなった後、ひとり中国へ向かおうとしたジュニは、幼馴染のミソンと再会する。親が保安部に連行されてストリートチルドレンとなり、日々をしのいでいたのだ。気を緩めると、手にしていたパンを奪われたり寝ている間に靴を盗まれたり、孤児同士の物の奪いあいも心を痛めるし、強制収容所での悲惨な毎日も見るのが辛い。ジュニの心の支えは、母から受け取った結婚指輪と父ヨンスとの思い出の雨で、孤児になっても強制収容所でも、雨を喜んで受ける。雨の中でもヨンスとジュニはよくサッカーをしていて一番の思い出となっていたのだろう。 ヨンスは金を稼いだら北に戻ろうと思っていたが、中国公安の取締りで思いがけずソウルに行くことになり、同じ朝鮮でもこんなに違うものか、と嘆くしかない。なんせ北朝鮮では手に入らない結核の薬が、韓国では保健所で無料で貰えるのだから、神様も南にしかいないのか、と恨みが出てくる気持ちになるよなあ。 ジュニの孤児生活から収容所までは悲惨としかいいようのない日々で、幼馴染のミソンも収容所で亡くなってしまうのだけど、うまくブローカーが収容所から連れ出して脱北してからは、無事にヨンスとジュニが会えるのか、どうか無事に再会を果たしてほしい、と祈りにも似た気持ちで画面を見つめるしかない。 分断国家、そして収容所国家の現実がまさにここにある。 公式サイトはこちら。 4/18 渋谷ユーロスペース 5月15日から新宿武蔵野館、TOHOシネマズ川崎他で全国順次公開! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.04.19 23:38:04
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