まてぃの徒然映画+雑記

2010/11/18(木)23:58

玄牝 -げんぴん-

ドキュメンタリー(24)

やっぱり自分は河瀬監督のカメラが好きだ。 木々の葉っぱが重なり合って、少しずつ異なる緑の濃さの違いがわかる光の加減が絶妙で、淡い自然の色彩を鮮やかに切り取っている。トマトが青から赤へ熟していく途中のほんの少しの色の違いや、野に咲く花の繊細な色が、柔らかく、でもそれぞれに主張を持って画面に映し出されている。 その光の加減は、薄暗い古家の中でも活かされていて、さすがに暗い部分にはノイズがのっていたが、板張りの壁や床のてかりなんかもくっきりと見える。 そして場面の転換で用いられるオフショットのような、花や木や空を数秒間止まって映すシーンが、光で作り出される色合いをじっくり見せてくれて、決して強く主張するわけではないんだけど、かといって弱々しかったりするわけでもない、綺麗な色で印象的です。 話は、自然分娩をモットーとする吉村医院とそこに通う妊婦さんの日常、そしてお産の場が映し出されます。吉村先生は、妊婦だからといって家で大人しくしていることに否定的で、農作業や古家での薪割り、スクワットなど、むしろ普段より運動させます。臨月になっても農作業をしている妊婦さんにはびっくり。でもその妊婦さんがおばあちゃんから譲り受けた乳母車が、昔から大事に取ってあったもので、良かったなあ。 現代的な医療をすべて否定しているわけではなく、ちゃんと超音波で胎児の様子も見るし、危険だと思ったら病院に搬送もするけれど、無理に陣痛促進剤を打ったりせずに、できるだけ妊婦本人の産む力を高めて、自然に昔から人間がしていたように赤ちゃんを産む、そのことをとても重視しています。 実際に赤ちゃんが産まれる場面では、母親たちが一様に感激している姿がとても心に残っています。産まれたばかりの赤ちゃんを抱いて、あったかい、というその言葉が本当に真に迫っていて、出産のリアルを感じさせます。 人が産まれる、という人間の根源的な題材も良かったけれど、河瀬監督の絵作りに改めて感銘を受けました。 公式サイトはこちら。 11/7 渋谷ユーロスペース

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